昨日の続きです。
ある火曜日の稽古ですから、研究稽古になります。
最近は「受け」を防御の技ではない用法を稽古していますが、この日も例外ではありませんでした。
この日のベースになったのは「基本動作Ⅱ(きほんどうさに)」に登場する技ですが、昨日は「上段揚げ受け(じょうだんあげうけ)」の応用形でした。
今日はタイトルにあるように、「下段払い(げだんばらい)」ですが、このパターンはこれまで未経験の人がいます。そういう身では新鮮だったと思いますが、基本的な原則はこれまで稽古した技と重なるところがありますので、昨日お話しした「上段揚げ受け」の場合同様、出席者にどんな展開が考えられるかを質問してみました。
中には稽古しようと思っているパターンに近い感じの人かいましたが、細かなところになると不備があり、それでは武技として成立させるには難しい、という状況でした。
でも、発想そのものは悪くなかったので、それをブラッシュアップする様な感じで稽古しました。
他のパターンもありますが、この日は時間が無かったので、「下段払い」の応用については1種類だけになりました。
ということで、同じく当日撮った写真を基にお話ししていきます。今日は、あえて少年部から移籍してきた道場生をモデルにします。フォームなど、まだまだのところがありますが、モデルといった経験をすることで、稽古に魂を入れてもらうきっかけになればということでやってもらいました。
同じ学年ですが、体格差があります。よく2人で組手を行なっている友達同士ですが、実戦では体格差が存在するケースがありますので、日頃からそういう中でお互いの特性を活用した戦い方を経験することは良いことです。今回は掴んでいる側の肘関節にアプローチする技になりますが、最初に稽古した場合と性質が異なる技になりましたので、そういうところを意識してもらいました。
でも、最初の設定は同じです。左手首を相手の左手で掴まれた、というところからの展開になります。
設定が同じですから、実際には昨日お話しした技で対応しても何の問題もありません。
そういう気持ちが稽古生にあったのか、あるいはさっき稽古したから咄嗟に同じような動きになったのかは分かりませんが、間違った人がいました。
そうなる理由の一つとして考えられることとしては、この技も最初の動きはこれまでの技と同じで、掴まれている側の下肢と上肢を同時に引き、相手の姿勢を崩し、前傾させるからです。
しかし、今回用いるのは「下段払い」ですので、そのことを念同に置いた場合、同じように相手を引き込むようにするとしても、アプローチする上肢の様子を考えなければなりません。
使用する技が「下段払い」ということから、接触部位は比較的低くなることを理解してもらうと、引き込む際の様子が最初に稽古した技とは微妙に異なることが理解できるわけです。
ただ、このペアの場合、そもそも体格差がありますので、そういう認識がなくてもご覧の様に武技としてイメージしている様子になっています。
今後、ペアを変えて稽古する際、同様の意識でできるかどうかは不明ですが、今回、前述のような細かな注意はしていませんので、新たな注意点として出てくるのではないかと思っています。しかし、少なくとも今回はこの状態で良いので、このまま進めました。
引き込んで相手の上肢が伸び切った瞬間に「下段払い」を行なうことになりますが、もちろんそこでは「受け」としての用法ではありません。
前腕を使用部位とした「腕刀打ち(わんとううち)」としての意識で用いることになります。
「下段払い」を「剛」の意識で用いることで実質的な攻撃技として行なうわけですが、ターゲットは裏肘です。本来曲がる方向ではない角度に対して強烈に撃ち当てるわけですから、最悪の場合は折れます。
武技として行なう場合の意識になりますが、稽古ではもちろんそこまでは要求しません。
しかし、具体的にどこを狙うかについては個別に解説し、実際に急所として活用する場合の角度について説明しました。
その場合、接触場所やそこからのベクトルが重要になり、自身の前腕の皮膚感覚で最も良い角度に対して瞬間的な圧をかける意識でコントロールします。
こういうところは頭の中だけで理解してもらうようにします。稽古で怪我をすることでは良くないので、こういう点は安全管理の意識として留意しています。
しかし、武技としてのクオリティも同時に意識していますので、そのバランスが難しいということがしばしばです。
今回の最終形は上の写真の状態としましたが、関節の逆を取る状態になってます。
もっともこれは、相手が掴んだ手を離さないでいることが条件になりますが、技の掛け方次第で肘関節に圧をかけた瞬間に外れることがあります。
相手が無意識に手を離さないような反応をしてくれたら良いのですが、そのような場合は、えてして技を掛ける際の拍子が関係します。間延びした動きになれば、相手は自分の身体を守るための選択を無意識に行ない、武技の失敗という結果になります。
こういうところの稽古は「見えない技」の要素が必要なので、モデルになった道場生には難度が高すぎます。今回は技の流れをメインに考え、掴んだ手が離れないという前提で、押さえた肘関節を極めるための体重の掛け方として、姿勢を低くすることを意識してもらいました。
つまり、写真の様に、極めの際に「四股立ち(しこだち)」になってもらうわけですが、丹田の活用によって技に重さを加味してもらったわけです。
上肢の動きと丹田の落としという身体操作がシンクロすることが必要ですが、技のお披露目としてはここまでで良しとして稽古を終了しました。
この日は稽古した技の数こそ少なかったのですが、内容的には密度の濃いものになったと考えています。
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