ある火曜日の稽古の話です。
研究稽古の日になりますが、最近は「受け」を活用した関節技や「手解き(てほどき)」の技などを行なっています。
今日は手首を掴まれた時、「上段揚げ受け(じょうだんあげうけ)」を「投げ」に転ずる技を稽古した様子をお話ししていきますが、基本はこれまでお話ししてきた技と重なりますが、似たところはあっても具体的に用いる技には違いがありますので、各技の異同に留意し、当該技のクオリティを上げることを意識してもらいました。
この日撮った写真がありますので、それを基にお話を進めたいと思います。
設定は上の2枚の写真からお分かりになると思いますが、左手首を相手の左手で掴まれた、というところからの技になります。
これが左手首を右手でという場合は、今回お話しするような展開では無理ですが、同じ側でという場合は、左右が入れ替わっても同じ展開になります。
もっとも、各自の利き手ということがあり、また、稽古のパターンが片方だけであれば、展開に勘違いが起こることもありますので、今後の稽古の中では左右を入れ替えた設定でも必要になります。
こういう稽古の場合、掴む側の意識が質にも影響するため、ある程度本気で行なう必要があります。でも、技の理が分からない内からそうすると、力技になってしまう可能性がありますので、この点は様子を見ながらアドバイスしていきました。
手首を掴んだところを拡大した写真です。
武術として考える場合、手首の掴み方にも理があると心得、適切な部位をきちんとした意識で捕る必要があります。この点については各人の癖を前提に、個別指導になりました。
掴まれた後の動きですが、最近のパターンであれば同じ側の足を1歩下げ、同時に上肢も引くようにしていますが、この点、これまでと同じでした。
ここからの動きは異なるものの、ここまでは同じパターンでしたので、そういう意味ではあまり説明することなく行ってもらいました。
ただ、その際に問題と感じたところについては個別指導になりましたが、さすがに複数のパターンの技の中でありながら、同じ動きが繰り返されていることから比較的スムーズに行われていました。やはり、回数をこなした結果だと思われます。
しかし、引いた後の動きはこれまでやっていなかったパターンになりました。
そのため、稽古している時、最初はぎこちないものになりました。
写真のその様子がお分かりいただけるのではと思いますが、掴まれた側が引いた直後に前進しているのです。
掴んでいる側からすれば、最初に引っ張られているわけですから、反射的にその動きに対抗しようとします。
そう思った瞬間に相手が出てくるわけですから、掴んだ側としては自分の動きに相手の動きが加わるわけですから、そのコントロールが難しくなります。
その隙を衝いて掴まれている上肢をコントロールし、相手を術中に嵌めていきます。
具体的には、掴んでいる相手の上肢の肘関節が曲がるようにコントロールするのです。
そうするためには、自身の肘を曲げ、そのことで相手の上肢も同じようにすることが大切で、どうしたいという自身のイメージングをした上で行なうことになります。
前進すると同時に行なうわけですが、こういう時、えてして直線的な動作になりがちで、そうすると肘を屈曲できないことがあります。実際、稽古ではそういうシーンを見ることがありましたが、前述のようなイメージングと共に実際のコントロールの仕方について個別指導となりました。
その屈曲した肘関節のところに「上段揚げ受け」の要領で前腕部を当てます。
それが2枚連続している写真の1枚目で、2枚目の写真はそこから少し技を掛ける方向に動かした様子です。
触れる時からそのような動作で行なった人もいましたが、何度か行なう内にそれでは良くないことに気付き、接触時にしっかり「上段揚げ受け」の要領で肘関節に食い込ませる意識の大切さを理解してもらいました。
上の写真は、肘関節をさらに外側方向、下方を意識して姿勢を崩すようにしますが、そのベクトルがどうなっているかが武技としての成否を分けるポイントになります。
この点、相手の抵抗を皮膚感覚で感じ取り、それに適応する動きを行なうことが必要で、こういうところは組稽古で感じ取ってもらうところになります。
上の写真は相手が床に倒された時の様子です。
上肢のコントロールにより倒れ方が異なりますが、稽古では武術として効果的な角度といったことには言及しませんでした。
倒される側の身体操作のクオリティが関係するからですが、もう少し受け身の質が上がれば、この点について細かなアドバイスをすることになります。今回はとりあえずは投げる、という点までにしました。
この日は2つの技を行ないましたので、明日、もう一つの技についてお話をします。
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