四方拝、特に「転」の箇所を意識して練る | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きです。


 全員で行なう稽古を終了後は、2つのグループに分けました。


 今回は出席者の関係から「壮鎮(そうちん)」のクループと、「四方拝(しほうはい)」・「正整(せいさん)」を行なうグループになりました。


 前者の場合、「(かた)」自体の細かなところを学ぶ必要がある人がいましたので、黒帯の道場生からその指導をしてもらいました。人に教えるということは、自身の復習にもなりますので、今回はその意識でやってもらいました。


 このグループの場合、完全にお任せでやっていましたので、私は一切アドバイスはしませんでした。そこで私はもう一つのグループに特化してアドバイスすることになったわけですが、今日はその中からタイトルにある「四方拝」についてのお話になります。


 千唐流ではこの「四方拝」から「形」のカテゴリーになりますが、そこにはまず共通の動作があります。アドバイスとしては、まずこの確認からスタートしました。


 こういった基本的なことは、時が経てばだんだん意識の中で意識が軽くなりがちなので、時々初心に戻って確認する必要があります。だからこそ今回、ポイントを絞ってお話ししました。


形の初動作





























 上のイラストがその様子を示していますが、その流れを簡単に説明しましょう。

 まず結び立ち(むすびだち)」で立ち、両上肢は体側に付けます


 左足を左方向に開き、「外八字立ち(そとはちじだち)」になります。ここまではゆっくり息を吸いながら行ないます


 その後、両上肢を側方から大きく円を描いて頭上に持って行き、額の斜め上で交差させ、その時、右手は「正拳(せいけん)」を握り、左手で拳を包みます


 そのまま正中線の前方を通り、帯の結び目の下付近まで下ろします。ここまでの動作は息を吐きながら行ないます。立ち方はここで「内八字立ち(うちはちじだち)」になり、ここまでが「形」の初動作となり、すべての「形」で行ないます。


 この動作には千唐流の理念が含まれており、動作そのものの意義としては「気」との関係で意識することになります。


 本来はその説明だけでもブログ1回分以上の内容になりますが、それを書いていてはタイトルに記した話に進めませんので、ブログでは動作の内容についてのお話までに留めます。稽古では簡単ではありますが確認しましたが、ブログの分量の関係で割愛することをご了承ください。


四方拝 初動作 膝の抜き















 上のイラストは「四方拝」の最初のほうの動作を示していますが、ご覧のような感じて四方に転身し、「突き」を放ちます


 転身に限らず、運足の際には下肢の身体操作が大切になりますが、そこでは膝のコントロールが重要になります。


 その点を意識していただくためにイラストに赤丸を付していますが、転身時の軸になる側の膝が特に重要です。


 初学者の人の場合、この意識が低く、固定してしまう傾向があります。


 でも、そのような意識で転身する場合、動作自体が不自然になりやすく、人によってはロボットのような動きになってしまいます。精緻な身体操作を要求される武技の場合、そのような状態では良しとされません。


 ではどうするかということですが、ここではいわゆる「膝の抜き(ひざのぬき)」を意識してもらいます。このことも「見えない技」の一つになりますが、見た目には膝を曲げることになります。でも、そこではあくまでも自然にということが大切で、この点がなかなか難しい身体操作になります。


 そのことにより自然な姿勢を崩れを誘発させ、それを正そうとする無意識の動作を以て最速の動きをしようというものです。


 この意識で90度ずつ転身し、突くというのが「四方拝」の特徴的な動作になります。


 千唐流で行なわれる「四方拝」の場合、儀礼形としての特徴も有しますので、この動作には文化的な背景が隠されています。この「形」は琉球王家の祝い事の席で演武されていた縁起の良い「形」であり、そういうことを理解しながら行なうことでまた違う感覚で稽古することができます。現在、この「形」が残っているのは、私が知る限りでは千唐流とその傍系流派のみですので、その由緒も含め、きちんと保存していかなければならないと考えています。


 しかし、同時に武術としての「形」でもありますので、各動作には武技としての意味も有しています。その点をどう理解して身体を動かすかによって「形」としての質にも違いが出てきます。


 解釈自体は複数ありますが、最初の段階で特に意識してもらっていることが、解釈例として示される下記の分解・解説の技です。


四方拝 解説1













 ご覧になってお分かりのように、相手からの「中段追い突き(ちゅうだんおいづき)」に追い突きに対して90度転身して反撃している様子です。


 この解釈の場合、受ける側としては「形」通りの状態で行なっていますが、実際の戦闘状態とは構えが違うということになります。稽古と実戦の乖離の具体例の一つになりますが、なぜこのような状態で行なわれることがあるのかについては今日のテーマではないのでここでは割愛させていただきます。


 その上でここで理解していただきたいのは、反撃の技は「突き」ではなく、「後猿臂(うしろえんぴ)」になっているという点です。


 つまり、「形」では「突き」を意識しているにもかかわらず、分解・解説の例としては引き手側を反撃技として活用しているという点です。


 でも、このような認識の違いというのは、改めて基本のところに遡れば不思議なことではありません。


 おそらくこれは流派を問わず言われていることだと思いますが、「突き」の際の引き手は後方に相手に対する攻撃をイメージして、「後猿臂」を放つつもりで行なう、ということです。


 ここではこの補助的なアドバイスをそのまま武技として用いているわけで、むしろ基本の応用という風に捉えることが大切です。そして、こういう意識をすることで基本を再認識し、結果的に実力のアップに貢献するものと考えています。


四方拝 裏拳打ち

















 上のイラストは180度転身して「上段裏拳打ち(じょうだんうらけんうち)」を放っているところですが、この様子からは背面からの攻撃に対して反撃しているような感じに思えます。


 実際、第一義的な解釈ではそのような前提で稽古されます。


 この場合、後方からの攻撃を察知するだけの感性が必要になりますので、その動作を実践しようとすれば難度が高い技となります。


 ただ、1対複数が想定される実戦の場合であれば、そういった能力も必要とされるので磨かなくてはならず、その意味ではたとえ難しくても稽古する必要があります。


 しかし、何事にも段階がありますし、同じ動作でも違った展開に応用することも可能です。


 当然、この動作にも複数の解釈が考えられることになりますが、「」の動作の質を高めつつ、それを応用した展開までも意図して「形」の稽古をしてもらえればと願っています。


 今回もそういうところつながるヒントを含めながら説明したつもりですが、稽古自体は分解・解説まで行なったわけではありませんので、別に機会を設け、やっていきたいと思っています。


 前述のように、このグループはもう一つ、「正整」まで稽古しましたが、長くなりますのでその話は後日ということにさせていただきます。







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