攻撃をしっかり防御するための基礎を磨く | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の続きです。


 今日のテーマはタイトルからもお分かりのように、「受け」になります。


 「(かた)」などを見ると、たくさんの技があることが分かりますが、基本として行なう「受け」は4種類になります。まずその4つをしっかりこなし、その上でいろいろな「受け」を学ぶことになりますが、その過程で武の理や原則的なことを習得し、応用を意識することになります。


 その実践が約束組手から自由組手へと進み、実戦に対応できるように磨いていきます


 その際、基本として稽古したことも十分実戦にも用いられるわけで、それは試合でも散見できます。でも、一部には基本で稽古したことは実戦で役に立たないとか、それは「形」の動作に対しても同じような考えをお持ちのケースがあるようです。


 おそらくそれは空手道の試合を見てのことでしょうが、そこにはルールがありますし、勝敗の決定の方法が存在する以上、選手はそれに則って稽古することになります。


 必然的に試合で取られる技が偏重されるという傾向になり、本来その体系が有しているはずの技法がそこでは見られなくなります


 それは空手道だけに限らず、柔道や剣道の場合も同様です。例えば、柔道はもともと柔術からの体系ですから当身が存在しますが、試合では見ることがありません。剣道でも面・胴・小手の他、「突き」くらいしか試合では認められませんが、古流の剣術には足を狙う流派もありますし、今でも体術を含めた稽古を行なっているところもあります。


 今は各武術で試合がたくさん開催されていますので、それを通してそれぞれを判断することが多くなってしまうのでしょうが、そういうルールを介して武術を観ようとすれば、その本質を見誤ってしまうことになります。


 私はこのブログで再三、空手は総合武術である、ということをお話ししてますが、そこで意識しなければならないことの一つは、攻撃技も大切ですが、「受け」も同レベルで大切なのです。


 ただ、試合を意識するならば「受け」ではポイントは取れませんし、KOも無理です。そういうことも含めてでしょうが、稽古する人の意識は攻撃技に向きがちです。


 しかし、実戦を意識するならば、自身へのダメージを極力軽減する意識も重要であり、その意味からは前述のように攻撃同様の意識できちんと稽古しなければならないのです。


 今日はまず、試合では基本の「受け」が行なわれていないだろうとか、実際に使うのは無理なのではと思っている人たちのために、以前千唐流の東京都大会の少年部の試合で見られたワンシーンの写真をご覧いただきます。


少年部組手試合 上段揚げ受け
















 上の写真がそのシーンですが、「上段逆突き(じょうだんぎゃくづき)」に対して基本の「上段揚げ受け(じょうだんあげうけ)」で対応している様子です。


 攻撃側の間合いが少々遠いため、初学者が約束組手をやっているような感じですが、互いに自由に技を出し合うシーンで基本で教わった「受け」で凌いでいるのです。


 上段への攻撃に対して本能的に防御しようとしているのでしょうが、その時の技が教わった通りの「受け」だったわけです。


 この選手がどれくらいのキャリアで、何級かということも分かりませんが、子供であることは写真からも分かります。


 試合とはいえ戦いですから、防戦一方だけではありませんので、攻撃もしているはずです。昔の写真ですのでこの後の展開は分かりませんが、「受け」という場面に関してはタイミングよくその瞬間を収めてありますので、こういうところから基本で教わったことも戦いの場で使えるということを理解していただけると思います。


 この日、そういう思いを念頭に稽古してほしかったわけですが、道場ではブログのように写真を提示してお話しするようなことはできませんので、口頭で「受け」の意義を説明した後、具体的な稽古に移りました。


上段受け  冒頭、「上段揚げ受け」の写真をアップしましたので、まずこの「受け」からお話しします。


 その様子を示したイラストを左にアップしましたが、ご覧のように上肢を上方に押し上げるようにし、前腕の尺骨側を接触点として相手の攻撃を受ける技です。


 この稽古の時、まずはフォームについて確認しますが、その一つが「正拳(せいけん)」と肘の位置関係です。


 正しくは上のイラストのように「正拳」のほうが肘関節よりも上方に位置しますが、初学者の場合、それが逆になっているケースがあります。


 今回の出席者にはそういうケースは見られませんでしたが、同様の視点は横から見た時に意識されなければなりません。


 具体的には「正拳」と肘関節のどちらが前方に位置しているかですが、これは前者となります。


 また、接触点ですが、基本は手首の尺骨側の突起部分よりやや肘関節寄りになり、ここが正中線の延長上にあることが必要です。


 こういったことについては出席者全員大丈夫でしたが、もう一つ意識してもらったのが上肢のコースです。引き手のコースとも関係することになりますが、基本稽古の際には両上肢は身体の正面で交差することになります。


 この時、受ける側と引く側のいずれが前になっているか、ということをきちんと意識してもらいました。


 そういう際によくお話しするのが「受け」の質で、」を意識したものなのか、逆に「」なのか、ということです。


 武術の場合、基本的には「剛」から「柔」に至るようにすることが大切ですので、ここでは前者を意識してもらいました。そこでは「受け即攻撃」といったクオリティまで求めることになりますが、その場合、相手からの「突き」のベクトルに対して、自身の「受け」のベクトルを衝突させるような意識で行なうことが必要になりますので、受ける側の上肢を内側にし、正面方向に押し出すイメージで行なってもらいました


 その場合、上肢の動きは直線的なイメージになりますが、受ける側を逆にした場合、横から見れば円を描くような感じになります。このような軌跡を描く場合、「剛」というより「柔」の性質を有しますので、相手からの攻撃を逸らすイメージで行なう場合に用います


 上肢のコース一つで「剛」と「柔」の使い分けの基本になるわけですが、こういったちょっとしたところにもきちんと留意し、武技の性質を切り替える意識を基本の段階から持ってもらいます


 ただ、実際に稽古する時、数をこなす中でこういうところが曖昧になり、自身でどういう動かし方になっているかが分からなくなってしまう人がいます。これまで何度も注意していたところの一つですが、今回も一部で見られましたので、この点、個別指導ということでアドバイスしました。


下段払い  当初、冒頭で4つの「受け」とお話ししましたので、その全部をお話ししようと思っていたのですが、予定よりも長くなりそうなので、今日は左にアップした「下段払い(げだんばらい)」までのお話までにしたいと思います。


 基本的に「上段揚げ受け」、「中段外受け(ちゅうだんそとうけ)」、「中段内受け(ちゅうだんうちうけ)」の場合、仕掛け技は「突き」というのが基本設定になります。


 もちろん、ちょっと変形させれば「蹴り」の場合にも対応できますが、そういうことはペアを組み、約束組手などで稽古することになります。基本稽古では設定も基本に則り行なうことになりますが、この「下段払い」については「突き」も「蹴り」も最初から想定しています。


 特に「前蹴り(まえげり)」を意識することになりますが、ターゲットの位置がこの「受け」の守備範囲であれば他の「蹴り」の場合でも用いることがあります。


 その場合の条件もありますが、そういうこともペアを組んだ時に稽古することになりますので、ここでは前述の設定で行なうことになりました。


 この「受け」の特徴は、上肢の重さを武技の重さとして活用できる点であり、そのことで「受け即攻撃」がより実践しやすくなります。


 もっとも、その場合は脱力から極めという流れが必要であり、この緩急がしっかり為されることが条件です。


 攻撃技もそうですが、「受け」の場合も力んでしまう人が多く、まずはそういった意識を捨て去ることが大切です。


 とは言っても、口で言うほど簡単ではない分、何度もアドバイスし、そこから少しずつ身体の使い方を変化させてもらわなければなりません。その中には、緩急を意識することが武技の質をアップさせるということを理解してもらうことも必要で、今回もその差を自身の身体で実感してもらいました。


 こういうことはこのブログでよくお話ししている「見えない技」の一つであり、道場生にはぜひとも習得してもらいたいところですが、まだまだ道は遠いといった感じです。


 またそういった質的アップには、前腕の回旋のタイミングがありますが、連絡動作の段階では手の甲がどちらを向いているか、ということがチェックポイントの一つになります。


 きちんとできていない人の場合、手の甲が正面を向いており、それでは前腕の回旋はできないでしょう、という状態になっています。


 正しくは極めの状態から90度捻る状態にし、前腕を下方に動かしながら少しずつ回旋させ、極めの直前に一気に解放するかのような感じで動かし、そのパワーも技に加味するように心がけます。


 他にもいくつかアドバイスしましたが、長くなりそうなので今日はここまでにさせていただきます。








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