重い突きを出す為に | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 火曜日の稽古に久しぶりに参加した道場生がいました。


 8月に行なわれた宗家杯(千唐流の世界大会)に出場した高校生ですが、学校の部活や風邪などのためになかなか出席できず、この日はその間隙を縫っての参加でした。


 近々、試験があるとのことであと10日くらい休むということですが、部活は今週で辞めるということで、今後は空手に専念できるそうです。少年部の手伝いもできるようなので、道場にとっては大変ありがたいことになります。


 しばらくぶりに顔を出しての第一声は、「突きが弱くなった」ということでした。稽古不足から、自分の感覚として実力低下を感じていたのでしょう。


 直真塾ではそういう情報を大切にし、その日の出席者にとって最大公約数的に効果的な稽古をする、ということをやっています。


 そのため、この話を念頭に道場生の集まり具合を見ていたら、偶数になりました。


 ならば、最初からペアを組んで行なえるということで、この日は「重い突き」をテーマにしてスタートしました。もっとも、こういう稽古は単なる数字合わせだけでは上手くいきません。たまたまあまりレベル差なしでペアを組める状態だったから、という条件が付きます。


 なぜ、前述の声を前提とする稽古でペアを組む必要があるかということですが、単独で行なう場合、質の変化を実感するのが難しい場合があります。


 しかし、ペアを組んで稽古すると、相手からの感想という情報が得られるので、その変化を客観的に知ることができます。これは当人の意識にも大きく作用することから、今回の出席状況という条件を加味したら、そのほうが良いと判断したわけです。


 ペアを組むということは、一方が攻撃ならば他方は「受け」ということで稽古するほうが望ましくなります。それにより技の質の変化をダイレクトに感じることができますし、稽古の基本スタイルはこれで行なうことにしました。


 そこで行なった具体的な内容ですが、この日に意識したテーマの一つは「突き」の重さです。


 先日、「逆突き(ぎゃくづき)」をテーマにその質をアップするためのコツについて書きましたが、そこではその場での「突き」を前提とした内容でした。その時はこの日の稽古のテーマのきっかけになった話をした道場生は欠席でしたが、当日出席していた他の道場生がいます。全く同じ内容になったら面白くないので、ちょっと条件を変えて行ないました。


追い突き























 具体的には、実際の戦いを念頭に、間合いを切って飛び込んで突く、というものです。


 その際、「追い突き(おいづき)」でも「逆突き」でも構いませんが、イラストでは前者の様子をアップしました。


 その際、いずれの「突き」にも共通するポイントがあります。


 その一つがイラストで赤丸で表示してある膝の操作です。


 これは移動や体重のコントロールに必要な身体操作であり、上手く抜けるかどうかが間合いを切る、あるいは技に重さをプラスする条件一つになります。「突き」だけでなく、武技全般に通じる大切なことですが、全身的な身体操作として意識してもらいました。


 ただ、注意しないと、体重を乗せるどころか、その逆の結果になることもあります膝の抜きという意識は、同時に下肢の締めという正反対の状態の存在を前提に、その使い分けを効果的に行なうことが必要です。今回、この点はしっかり意識してもらいましたが、改めて意識するとなると、ぎこちなくなる人もおり、その修正に時間を要する組もありました。


 もう一つ、この日の稽古で意識してもらったことがあります。


 テーマが「重い突き」ということですから、「突き」そのものが中途半端な意識で務まりません。ペアを組んで稽古する時、よく見かける悪い状態が、その「突き」ならば、そもそも受けなくても良いでしょう、といったレベルで行なうケースです。


 もちろん、稽古生自身のレベルの問題があり、攻防いずれも初学者で、しかも安全管理を意識する場合は、前述のような状態も許容範囲、という場合があります。


 しかし、この日のテーマは「突き」の質に関わることであり、出席者の様子も考慮して決めたテーマです。


 そのため、ここは中途半端な状態にならないよう、もし当たるようであれば受ける側が悪い、ということにし、「突き」自体も「裏三寸(うらさんずん)」を意識したものにしました。


 こうなると、受ける側も本気にならなくてはなりませんし、単に上肢による「受け」だけでなく、体捌きも必要になります。こちらとしても、そういった要素を含んだ真剣な稽古をやってほしかったので、雰囲気的にはテーマに沿った内容になっていきました。


 今日は仕掛ける側、つまり突くほうの話がメインなので、「受け」のことは割愛しますが、こういう状況だからこそ、思い切って「突き」を放てます。


 それぞれに攻防の質がありますので、「受け」が勝ったり「突き」が勝ったりしています。


 前者の場合、この日のテーマである「重い突き」となっていないわけですが、後者の場合は「受け」に問題があって防御しきれていない、というケースもあります。


 今日のテーマは「突き」ですから、前者の場合でお話ししますが、見ていると拳のみが走っているような感じになっており、上手く上肢全体を活用しているようには見えない、という状況です。


突きの直進性


































 上のイラストは「逆突き」の際の上肢の動きを表わしたものですが、長くなってもまずいので、ここから一つだけポイントをピックアップしてお話しします。


 前述のように、この日の稽古では拳を走らせる、といったイメージの技になっていたため、「突き」という技を支えるための意識が抜けていました


 特にその要素が見えたのがであり、その意識の欠落のために、極まった時の上肢がきちんと中心軸を持った存在に見えなかったのです。


 肘の意識ができていないということは、「突き」に必要な前腕の回旋ということもきちんとできていないということになり、そういうことが質の低下の原因の一つになっています。


 具体的にアドバイスした内容の一つは、イラストにも図示してありますが、どういうタイミングで前腕を回旋し、その時に肘をどう意識するか、ということでした。


 この点を説明すると長くなりますので割愛しますが、アドバイス後、その要領で実践してもらうと、「突き」の質が変化し、「受け」が効かなくなっていました


 これは攻防いずれも実感したことであり、こういうことが冒頭お話ししたペアを組んで行なう稽古の効果です。


 当然、攻防を入れ替えて実感してもらうことになりますが、幸いなことにこの日は全員、「突き」の質の変化を感じてもらいました。


 ただ、その意識と状態が次回の稽古まで残っているかどうかは保証しない、ということも付け加えました。


 それはその後の稽古が関わるからですが、一度のアドバイスできちんと技が定着するようであれば、教える側としては苦労しません。時間の経過と共にポイントの認識が薄れ、身体操作も曖昧になる、というのが現実です。だからこそ、同じことを何度も繰り返し身体に定着させていくわけですが、そのことを再度伝えました。


 アドバイスは多岐に渡りましたが、長くなりますので今日はここまでにしたいと思います。





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