形の動作の継ぎ目に注意する | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日のブログでは「意念」の大切さについて書きましたが、今日はタイトルにあるように「形(かた)」の各動作の継ぎ目の意識について綴っていきます。


 これは「形」の捉え方にも通じることですが、一般的な理解としてはそこで行なわれる各動作の連係を意識し、一つの生き物といったイメージで稽古する、ということがあります。生き物の動きである以上、各動作に変な淀みがあってはならず、また呼吸が途切れても駄目です。


 前者については、技の淀みの存在は、実際の戦いでは相手から付け入られる隙につながると考えます。したがって、「形」の終了までは戦いは継続していると考えることが必要で、淀みの存在はその時点で負ける可能性が高くなると理解しなければなりません。


 後者については、「形」を水泳に例えると良く理解でき、息継ぎを行なわずに泳いでいるようなもので、すぐに泳げなくなってしまいます。


 そのような目で「形」を見、また意識する場合、実際に稽古として身体を動かす際にも動作の継ぎ目をどうするか、という意識が不可欠になります。


 こういう話をするのは、稽古の際、「形」の各動作につながりが見えず、途切れ途切れになっている人がいたり、ロボットみたいな無機質の動作に見えたり、次の技の起動の際に中心軸が乱れ、それが次の動作の呼び水になっていたりするようなケースを散見するからです。


 もちろん、きちんと「形」ができている人の場合、流れに淀みがなく、一つのまとまりを感じることができ、確かに「形」は生き物、という感じがあります。短い動作の中にも、動きの起動時と極めの際の流れに無理・無駄を感じず、意図的な緩急も感じません


 試合などでは誇張した動作で緩急を表わす選手もいますが、本来の緩急とは自然体の中で行なうことが必要であり、誇張動作は武術的には返って問題を生じます。


二十四歩 扇受け




















 話の流れとは多少前後しますが、有名な「三戦(さんちん)」で見られる「扇受け(おおぎうけ)」のところで呼吸に絡めた説明をしましょう。


 「三戦」は那覇手の流派では基本形であり極意形でもありますが、代表的な動作が呼吸を伴い、「扇受け」をする箇所です。


 千唐流の場合、この動作が出てくる「形」として他に「二十四歩(にーせーし)」がありますが、「形」こそ違え、注意すべきポイントは同じです。


 前述の話と重ねるならば、呼吸時に変な誇張はしない、ということです。


 昔、ブルース・リーの映画がきっかけになり、日本でもたくさんの空手映画が作られましたが、映画的に映えるためか、この動作の時にやたら呼吸音を誇張するシーンがありました。


 しかし、きちんと「三戦」を稽古しているところでは、意図的に過度な呼吸音を出すようなことはせず、自然な呼吸の中で出てくる呼吸音でした。呼吸音を出すことに意識が傾けば、喉を圧迫したような状態になり、呼吸器系に余計な負担をかけることになります。それを鍛錬と誤解してはならず、呼吸器全体の強化といった身体意識の上で呼吸音が出なければなりません。


 ここで意識すべき呼吸とは、腹式呼吸ですが、腹から息をする意識で行なう時の音と、喉を締め付ける時に出てくる呼吸音とは異なります。後者の場合、腹式呼吸による「ハラ」の意識というより、胸部を締め付けるような状態になってしまうため、鍛練としての視点からも疑問があります。


 技の継ぎ目で言えば、呼吸の終わりの時点で「カッ」というような感じで最後の一絞りといった感じの呼吸で終了し、次の動作に入る様子を見かけることがありますが、前述したように技の継ぎ目を明確にする身体操作・身体意識は武術的にはマイナスに作用する場合があります。


 呼吸の継ぎ目に際しても、自然にチェンジするようにすることが大切であり、武術の思想的な基盤となる陰陽論から見ても、「陰」と「陽」という正反対の性質のものがデジタル的に移り変わるということではなく、いつの間にかアナログ的に変化する、という流れになっているところに注目すべきです。


 呼吸自体、息を吸う・吐くという、動作としては全く逆の作用を連続して行なっているわけであり、自然な呼吸ではその継ぎ目は感じません。それが自然の法則であり、武術も自然の理に従って行動することが肝要であり、変な誇張はないようにしなければならないのです。


基本動作Ⅳ














 上のイラストは「形」ではなく、「基本動作Ⅳ(きほんどうさよん)」からのものですが、転身して攻防を行なっている場面として理解してください。


 「形」の中にも同様の意図で動いている箇所がありますが、イラストのように180度方向が変わるとなると、どうしても技の継ぎ目がぎこちなくなりがちです。


 方向的につながりがあるようには見えないという動きですが、だからと言って動作に淀みがあっても良い、というわけではありません。


 こういう時、よく見かけるパターンとして、足がドタバタした感じの踏み変えを行なうケースを見かけます。その動作自体に、隠された武技が潜んでいるというのならば分解・解説で稽古すべきですが、転身した時の土台の関係から変な足の踏み変えになっているようでは問題です。


 上のイラストに示した「基本動作Ⅳ」の場合、転身時には足裏を上手く活用し、スムーズな転身を心掛けるようにします。


 その結果、中心軸を意識した動作になり、転身自体もスムーズで安定感もあり、素早い動きになります。


 しかし、変な足の踏み変えになると、その瞬間に中心軸が乱れるケースが多くなり、姿勢の崩れが生まれることもあります。


 もちろん、多少の足の踏み変えがあっても、自身の中心軸を乱さずに行なえる人の場合は違うでしょうが、そのような身体意識を得るまでの稽古の過程で、動作の継ぎ目をどう意識し、実践するかといったところを押さえていなければ、数をこなしても固い感じの動作になってしまうでしょう。


 各動作にはきちんと極める要素が必要ですが、それはそこで居つくことではなく、次の動作への準備が内在されていなければならないのです。





 ▼活殺自在塾公式HP
 (活殺自在塾のHPは上記をクリック)

   ※武術の修行と生活の両立を図るプログラムで塾生募集中


 ※活殺自在DVD第1巻「点の武術」、大好評発売中!

   アマゾンでも販売を開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/e5CUX-zn9Zk


 ※活殺自在DVD第2巻「極意の立ち方」、発売開始!

   アマゾンでも発売開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/FGwnVXcgCBw



活殺自在DVDシリーズ第2巻「極意の立ち方」/中山隆嗣,道田誠一

¥5,940

Amazon.co.jp


活殺自在DVDシリーズ第1巻 「点の武術」/中山隆嗣,道田誠一
¥4,860
Amazon.co.jp

 

 秘めたパワーを出す、伝統の身体技法 だから、空手は強い!/中山隆嗣
  
¥1,512
Amazon.co.jp

 

 東洋医学と武術でカラダを変える 空手トレ! 強くなる鍛え方 [DVD]/中山隆嗣
  
¥5,400
Amazon.co.jp