転身を活用した打ち技 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の話の続きです。「打ち」を極め技として約束組手を行なったわけですが、こちらから提示したのは極めの時の技の種別だけで、具体的なところについてはリクエストに基づきました。その点については昨日書きましたので、今日もその前提で話を進めます。


 最初に稽古した技は昨日お話しした「裏拳打ち(うらけんうち)」で、もう一つの技が「拳槌打ち(けんついうち)」でした。技の具体的な内訳としては3つの技の内、2つが前者、もう一つが後者でした。


 同じ括りの技が2日続くのはどうかと思いましたので、今日は「拳槌打ち」の話をメインにし、「裏拳打ち」の技については余裕があれば、ということにさせていただきます。ただ、昨日のように詳しく書くと一つだけで終わってしまう可能性がありますので、多少調整しながら様子を見て一つにするか2つにするかを決めたいと思います。


 さて、極め技は「拳槌打ち」ですが、具体的な「受け」から攻撃(反撃)までをどうするかを設定しなければなりません。その方法は昨日お話しした通りで、まずは各自でやってもらい、しっくりきそうな動きを選択してもらいます。


 その時に参考になるのは、普段稽古している基本・基本動作・基本型・「形(かた)」・分解や解説、約束組手形などですが、「拳槌打ち」が明確に技として出てくるものに「四方割(しほうわり)」があります。


四方割










 その部分を示したのが上のイラストですが、ご覧のように転身して「拳槌打ち」を放っています


 「拳槌打ち」を極め技にするとリクエストした人の場合、この動作を示しましたので、それを活かした技ということになりました。


 ただ、転身ながらの「打ち技」とした場合、他には「手刀打ち(しゅとううち)」や「裏拳打ち」もあります。どれを選択するかがこれまで稽古してきた身体の使い方と関係しますが、客観的に見て何がもっとも自然だったかの視点で言うと、数をこなしている「四方割」に登場する上のイラストの用法でした。


拳槌  そして、この技を極めとして用いようとするならば、「拳槌」そのもののポイントを確認しておかなくてはなりません。


 その中には「拳槌」そのものだけでなく、間合いによって当たる部位が異なることも想定されますので、その際のアレンジについても意識しておかなければなりません。実戦で活かすということはいろいろな場面を想定しておくことが必要であり、今回のように転身を伴った技の場合はより一層そういう意識が必要になります。


 その際、基本となるのは「拳槌打ち」ですから、その形状と使用部位、そしてその際に身体操法の意識が大切になります。「拳槌」の形状は「正拳(せいけん)」と同様で、ただ使用部位と用法が異なることになります。その点は上のイラストに示してありますのでお分かりいただけると思いますが、実際に使用する時には手首の動きにも留意しなければなりません。使用部位の関係で、主として「尺屈(しゃっくつ)」を意識することになりますが、そのタイミングも武技の質に関係します。その意識の有無で技の重さが変化しますので、そこまでイメージした動きで稽古する必要があります。


 また、間合いについては「拳槌」を使用する場合は最も遠い場合で、以下、だんだん近くなってくるにしたがって小手の部分を用いる「腕刀(わんとう)」、肘の部分を用いる「猿臂(えんぴ)」という具合になっていきます。このような話を最初にしたのは、前述したようにこの技が転身を伴ってのことだからであり、いずれの場合でも変な躊躇が無いようにという配慮です。


 さて、反撃の際の要領を理解してもらったところで、どんな攻撃を仕掛けられた時の技なのかを考えなければなりません。


 この点も昨日お話しした場合同様、いろいろなパターンで検証し、その上で決めたわけですが、「右中段突き(みぎちゅうだんづき)」ということになりました。今回、あえて左右の別を明確にし、逆に「追い突き(おいづき)」なのか「逆突き(ぎゃくづき)」なのかを明示しなかったのは、互いに構えた状態を想定した場合、左側が前になっている、という様子が前提になっています。


 ここで重要なのは、どの方向から受けるのか、ということです。前足(設定では左足)を中心に背部方向に転身するという動きになるため、「受け」の原則論に従い小指側を受けるという場合、それに合致する仕掛けは右拳による「突き」なのです。


 しかし、ここでは次に説明する「受け」の関係で、攻撃部位は中段に設定しました。上段であれは昨日お話ししたような展開に近くなりますし、なるべく工夫した組合せにしたかったのです。


鎮東 翼蔽






















 そこで今度は「受け」の話になりますが、いろいろ「受け」の検討をしている中で「掌底受け(しょうていうけ)」や「中段内受け(ちゅうだんうちうけ)」で対応しようという様子がありましたが、なかなかピンとくるものがないようでした。


 そこでこちらが提示したのが上のイラストに示した、「鎮東(ちんとう)」に出てくる「翼蔽(よくへい)」動作の応用でした。


 私の組の人の場合、いずれも「鎮東」を稽古していますので、当然ここに示した動作は知っています。


 以前、「鎮東」の分解・解説の稽古をした時、このフォームについても説明・稽古しましたが、そこでは護身術的な用法で行ないました。


 つまり、後方から抱きつかれた時の手解きと、そこからの反撃法を兼ねた技ですが、今回はその用法ではありません。


 「鎮東」を稽古している流派によっては、このフォームの時に上半身を振る動作をするところがありますが、そういうところではこの時の上肢は「受け」としての解釈があります。千唐流の場合、ここで上半身を振るという動作がないため、そのような解釈がないのではと思わるかもしれませんが、そのフォームが意味すること、という視点からは基本の分解・解説で説明される以外にも第二・第三の用法がある、とされます。その一つが他流では「形」の動作の中にその解釈の一つを明確に入れている、ということであり、今回の稽古ではそれを取り入れた技にしたのです。


 その場合、上肢はなるべく脱力しておくことが大切で、「受け」として使用する際には「背腕(はいわん)」を活用するようにします。脱力しておくというのは、実際の「受け」の際にスムーズな動きを確保するためにであり、かつ、腕の自重を最大限活用しようというところからのことです。ここでもその確認をし、固い感じの動きで行なう場合と、脱力して行なう場合を比較してもらいましたが、当然後者の場合が重さを感じる、という感想が聞かれました。


 この技の場合、「受け」自体が転身につながる要素を持っているため、続けて行なう「拳槌打ち」への連続は極めてスムーズであり、身体を外に動かす必要もなく、型の演武線のままに動くことができます。相手の制空権にスムースに入っていく様子を感じることができる技になりましたが、ちょっとした意識の有無で技の質が大きく変化する、ということを実感してもらったことにもなりました。


 やはり今日もたった一つの技しかお話しできませんでしたが、根底の部分では多様性があります。その点を理解していただければ、このような話も何かのご参考になるのでは、と思っております。





 ▼活殺自在塾公式HP
 (活殺自在塾のHPは上記をクリック)

   ※武術の修行と生活の両立を図るプログラムで塾生募集中


 ※活殺自在DVD第1巻「点の武術」、大好評発売中!

   アマゾンでも販売を開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/e5CUX-zn9Zk


 ※活殺自在DVD第2巻「極意の立ち方」、発売開始!

   アマゾンでも発売開始しました。

   神保町(東京)の「書泉グランデ」でも販売しています。

   ユーチューブにダイジェスト映像 http://youtu.be/FGwnVXcgCBw



活殺自在DVDシリーズ第2巻「極意の立ち方」/中山隆嗣,道田誠一

¥5,940

Amazon.co.jp


活殺自在DVDシリーズ第1巻 「点の武術」/中山隆嗣,道田誠一
¥4,860
Amazon.co.jp

 

 
 
 
秘めたパワーを出す、伝統の身体技法 だから、空手は強い!/中山隆嗣
¥1,512
Amazon.co.jp

 

 
 
 
東洋医学と武術でカラダを変える 空手トレ! 強くなる鍛え方 [DVD]/中山隆嗣
¥5,400
Amazon.co.jp