後方から攻撃された時の捌きと反撃 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 昨日の稽古の話です。


 稽古前、今、それぞれが意識しているところを個別に確認していました。そういう様子を見てその日の内容を決めることがありますが、それは各自が無意識に要求していることに対してきちんと応えることがもっとも吸収が良いだろうという配慮からです。


 この日は来月、昇段審査を控えた道場生が課題となる「形(かた)」の稽古をしていました。ならば稽古の軸の一つとして、昇段審査を意識した内容にしようと考えました。そこには審査を受けない人もいましたが、将来のため、ということも含め、一緒に行なうことにしました。


 でも、そういう稽古ではなく、もっと武術的な内容を望む人もいます。いろいろな思いが交錯する中、結局は最初から2組に分け、それぞれが意識する内容で稽古することにしました。そして途中でまた組み合わせを変えた稽古になりましたが、今日は最初の組み分けの一つ、昇段審査組の話になります。


 昇段審査の課題の中に、「形」の分解・解説を問うところがあります。この場合、変に捻ったものではなく、オーソドックスなものではありますが、何を出すかは当日のことになります。


 もちろん、何も教えていなくていきなり出すというのはアンフェアですから、これまでの稽古を振り返り、稽古したことがあるはずの内容で行なってもらいます。「形」の動作の意味を考えることの大切さとそれぞれの動きに魂を入れてもらうために行なうわけですが、少なくとも黒帯を目指す以上、単なるエクササイズとしての「形」ではいけません。そこには武術としての意識が必要であり、武技の伝承という意味のある「形」が持つ意義を汲み取らなくてはならないのです。


 そこでこの組に参加した人たちに対して、互いにこれまで稽古した「形」の中からこの動作の意味は、ということを出してもらい、出された側がそれに対して答える、というカタチで行ないました。その内の一つが今日のタイトルになっていることですが、具体的な動作を以下のイラストで示します。


二十四歩 弓張突き  
 この動作は「二十四歩(にーせーし)」の中に出てくるもので、後方に対して「四股立ち(しこだち)」で移動しつつ上段に「裏拳打ち(うらけんうち)」を放ちます。続いて正面を向いて「中段順突き(ちゅうだんじゅんづき)」を行ないますが、この時、下がりながら行なうのが特徴です。


 正面から見た場合、2回続けて後方に下がるというところに注目しなければなりませんが、これがこの部分を解釈する際の大切なポイントになります。


 質問として出した側、あるいはそれを聞いた側にどれだけの認識があったかは分かりませんが、この部分については何度も稽古しています。ただ、その回に参加していたかどうか、参加していても覚えているかどうか、ということが問題になりますが、もし聞いていなかったとしてもどう解釈するか、という確認になります。


 今回昇段審査を受ける人の場合、年齢が中学3年生であり、その最高は準初段ですからまだまだ人を指導できる立場でありません。しかし、少年部にあっては最高ランクになりますので、今後少年部でアシスタントとしてやっていくには子供たちからの質問に答えていく義務が生じます。直真塾の場合、中学1年生からは一般部での稽古になりますので、それと同等の意識で臨んでもらうことが条件になり、それが昇段審査の時の課題にもなるのです。


 今回質問として出した人も、同じ少年部出身の道場生であり、そういう意味では未来の自分の立ち場に重ねたような状態になります。そういうところもあり、昇段審査を受ける側がどのような回答を出すのか楽しみにしていました。


 ただ、審査であれば考える時間はありません。いわゆる一発勝負ということになりますが、稽古では時間はあります。以前教えたことについて覚えていなかったようなので、この場でいろいろと考えていました。その中には正解に近いものもありましたが、どうも自身で納得していないようで、それは客観的に見てもそうでした。


 そういう場合、そもそもの設定に問題がある場合があります。「形」の分解・解説の場合、複雑になればその応用ということでいろいろな展開がありますが、今回はオーソドックスな内容を要求しているものであり、基本的には「形」の動作そのものをベースに考えてもらえれば問題ありません。


 しかし、この動作がどのような状況で行なわれているのか、という部分の理解がなければ動いていてピンとこないものになります。


 もっとも、武の理に適う内容であっても、自身の身体意識や身体操作がそのレベルに至っていない場合にはしっくりこないこともあります。それは今後の稽古の課題にもなりますが、武の理の理解までも意識した解釈になっていることを期待しました。


 同じ「形」であっても、もっと想像しやすい動作からの課題であれば良かったのでしょうが、質問した側もそのような配慮ができる実力はありません。でも、出た以上、それに対して回答しなければならないので、たった一つの技ではありますが、そこで考え、その上で得たものは結構なものになっていると思われます。


 それは試行錯誤しながら各種の動きを自身で検証しているからですが、それだけで時間を取ってしまえば他の人の稽古ができません。そこで私から回答を出し、自分で考えたこととの比較をしてもらいました。その上で回数をこなす、という流れで行ないました。


四方拝 解説




















 そこで具体的に説明したこの動作の分解・解説ですが、まず「裏拳打ち」のところが上のイラストで示してあります。


 と言っても、上のイラストは「四方拝(しほうはい)」という「形」に出てくる動作の分解・解説を説明したもので、よく見ると立ち方に相違があります。


 しかし、この動作の武技としての解釈は同じものですので、イメージとしてアップしました。


 こういう場合、前述したように攻防の設定が大切になりますが、ここでは背後から突いてきた、ということになります。その際、相手は正中線に対して攻撃してきたことになり、だからこそ軸足側に中心軸を移動して転身し、ギリギリのところでかわすことが可能になります。


 今、さらっと書いたことですが、実はそういう身体操作や見切りというのは、大変高度な「見えない技」であり、相手の力量の問題にも関係しますので、そう簡単にできるものではありません。だからこのような稽古をしても直ちに使えるようなことにはなりませんが、それは稽古をしない理由にはなりません。武の理想形としての動きを習得するためにも、このような意識で続けることが大切なのです。


 そして、「見えない技」の要素としてここで要求されるもう一つのことが、相手の攻撃を察知する「感性です。背後からの攻撃、という設定ですから、視覚的に見る、ということではなく感じることが大切であり、それこそが武術として要求されるレベルです。そこに至る以前にしっかり目で見ることが要求されますが、こういう分解・解説のところではそこまでのレベルを前提とした分解・解説が存在する、というわけです。


二十四歩 弓張突き  続いて下がりながら突くところの解釈ですが、「突き」は「突き」としての意味がありつつも、ここでは異なった用法になります。


 それが「下がりながら」という部分に現われていますが、実はここでは「後猿臂(うしろえんぴ)」としての用いるという解釈する場合があり、そういう説明をしました。


 よく基本稽古の際、「突き」の質を高めるために「引き」を意識させ、その時の定番のセリフとして、後方の敵に対して「後猿臂」を放つイメージで、ということがあります。ここではまさに、その部分を活用するようになっているわけで、メインを「突き」ではないところに持っていくことで相手からすれば予測が難しい連続技になるのです。


 そうなると相手の捌きは極めて難しくなりますが、だからこそ武技としての価値が出てくるのです。


 ただ、肘を用いる「猿臂」という技の場合、極めて接近した状態でなければ使えない技であり、適正間合いをいかに確保するかが武技としてのポイントの一つになります。


 ここでは下がりながらの「突き」という動作にその部分を見るわけですが、こういう意識一つで「形」として行なう場合でも魂の入り方が違ってきます。


 今回は「形」として通して行なったわけではありませんが、以前この解釈を説明した後に「形」の稽古したら雰囲気が締まり、とても良い感じになったことがあります。


 もちろん、それはレベルによりますので全ての道場生がそうなった、ということは言いませんが、平均点はグッとアップしました。今回も同様だったのではと思いますが、今回は稽古の目的が異なりましたのでそこまでは行ないませんでした。


 昨日の稽古にはいろいろな要素がありましたので、他の話は後日にさせていただきます。






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