物語の舞台は湖畔近くにある別荘。そこでは中学受験を控えた親子四組が参加する勉強合宿が行われていました。

 

事件は突然起こります。

 

保護者のひとり並木美菜子が夫・俊介の愛人を別荘で殺してしまいます。

 

普通なら、他の家族がすぐさま警察に通報するところですが・・・・この物語は違います。なんと彼らは事件と死体を隠蔽するため全員で協力し、愛人の亡骸を湖に沈めてしまうのです。

 

えっ?ってなりますよね。これは並木夫婦の問題なのに、なぜ他の家族まで犯罪に加担してしまうのか、と。自分たちも同じ合宿に参加していたことが世間に知られたら、子供の受験に影響が出ると思ったのでしょうか?そうだとしても、あまりにも不自然な動き。どうやら彼らの結束には、何か他にも秘密があるようで・・・

 

 

 

 

 

 中学受験

 

物語の鍵となるのは「中学受験」です。親たちが事件を必死に隠蔽したのはズバリ子供のためでした。この合宿に参加していたのは並木夫婦、藤間夫婦、関谷夫婦、坂崎夫婦と、彼らの息子たち、それと塾講師の津久見。親たちは藤間家の別荘で一日過ごしますが、子供たちは近くの貸別荘で久津見と一緒に合宿しています。

 

さすがに何もかも久津見にお任せするわけにはいかないので、親たちは毎日交代で貸別荘へお手伝いにいくというシステム。彼らは子供の受験に熱心で、普段からよくこのメンバーでつるみ、情報交換をしているようなのですが・・。

 

実は並木夫婦だけは他の家族と温度差があります。正確には俊介だけが少し浮いているといった状態。なぜなら参加親子の中で唯一、俊介だけが息子と血が繋がっていないからです。そのためか俊介は他の親と違い受験熱がありません。むしろ子供に過酷な勉強を強いることに疑問を呈し、美菜子とも教育観が一致せず喧嘩ばかり。それだけでなく、並木夫婦は互いの不貞行為を疑っており、仮面夫婦状態になっています。

 

 

 

 愛人

 

そんな時、別荘に俊介の愛人・英里子が押しかけてきます。突然の出来事にうろたえる俊介ですが、英里子は美菜子の秘密をつかんだとこっそり打ち明けてきます。その詳細は夜に宿泊先のホテルで説明すると言い去って行くのですが、約束の時刻になっても彼女は現れません。何度も携帯に連絡をしてみますが繋がらず、結局俊介は別荘に戻ります。

 

別荘は騒然としていました。藤間夫婦の説明によると、帰ったはずの英里子が再び別荘を訪れ、美菜子に俊介との関係を暴露し、別れるように迫ったと言うのです。その際、言うとおりにしないと息子の受験を邪魔するようなことを仄めかされたため、美菜子はつい殺してしまったそうで・・・

 

しかし何だかこの説明に違和感を覚える俊介。事件があったとされる時刻、本当なら英里子は自分と待ち合わせをしていたはずなのに、なぜ美菜子のもとへ行ったのか理由がわかりません。おまけに警察へ通報しようとする自分を必死で説得し、事件を隠蔽しようと懇願する他家族にも疑念が湧きます。

 

 

 

 隠蔽

 

納得はできないものの、異様な雰囲気に押され、俊介は指示役の藤間夫に従って死体の隠蔽に取り掛かります。死体は湖に沈めることになり、それを俊介、藤間夫、関谷夫の共同作業で行うことにします。この日、坂崎夫婦は貸別荘の方へ行く当番だったため、事件のことは知りません(奥様は体調不良で寝ていた)。しかし、のちに事情を説明すると、なぜか彼らも当然のように協力してくれるのです。

 

どう考えてもおかしいですよね。なぜ全員が並木夫婦のためにここまでしてくれるのか。ただ、彼らには俊介だけが知らない秘密を持っているのは確か。それが何なのかわからない俊介は、それとなく周囲にさぐりを入れますが、誰も尻尾を見せてはくれません。

 

一体、親たちはどんな秘密を抱えているのでしょうか?それを知ったとき、読者はとても悲しくなります。秘密とはひとつではないのです。色々ある秘密の中で、彼らを結束したもの、それがとても悲しいのです。

 

事件の結末は、あっと驚くもの。途中で「もしかして」と気づいた頃には、既にいいところが終わっています。前半で謎が解ける方は凄いと思いますね。

 

 

 

 感想

 

他の家族と温度差がある俊介は、何度も「やっぱり通報した方がいいのでは」と持ち掛けます。その度に私は、この人も殺されるんじゃ・・ハラハラしていました。もしくは、この人たちは協力していると見せかけて、すべては俊介がやったこととして警察に通報するのではないかとも疑っていました。

 

結論からいうと、どれもハズレでしたが、本当の結末の方が酷さレベルは圧倒的に上。さすがは東野圭吾さんです。

 

全体的にも読みやすく、サラサラっと展開してくれるのでストレスなく最後まで行けます。ちょっと昔の小説ではありますが、全然古さを感じずに読める作品なので、若い子にもオススメ。普段あまり本を読まない方にも「これなら大丈夫」と推したい一冊です。

 

東野圭吾ファン以外の方も”お試し編”としてぜひ。

 

 

以上、『レイクサイド』のレビューでした!

 

 

 

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