原作|はだかんぼうたち|あらすじ・ネタバレ・感想
江國香織さんの小説『はだかんぼうたち』のレビューになります。こちらは偶然ドラマの予告を見て知った小説。題名がインパクト大で「どんな話なの?!」と気になったので読んでみました。しかも原作が江國香織さんだと知って驚き!さっそくですが、簡単に内容を紹介していきます。《あらすじ》終わりも答えもない恋愛の真実桃は35歳の歯科医。入籍間近と思われていた恋人と別れ9歳下の鯖崎と付き合い始めた。だが鯖崎は桃の親友の主婦・響子にも興味をしめす。一方、ネットで知り合った60歳の男と同棲していた響子の母・和枝が急死。亡き母の同棲相手への対応を巡り響子は夫と衝突する。そんな響子に鯖崎が接近し始め、桃は別れた恋人と再び会ってしまう……。年齢も境遇も異なる男女たちを通して恋愛、孤独、結婚の赤裸々な姿が浮かび上がる。はだかんぼうたち (角川文庫)Amazon(アマゾン)評価★★☆登場人物が多いが、どのキャラクターもするっと入ってくるため覚えるのに苦労しなかった。その一方で、苦手なキャラクターが多く、楽しめるというよりはドン引き度が高かった。歪な家族関係構成が「大人の恋愛群像劇」になっているため、レビューでも一人ひとりの登場人物を紹介しつつ、各キャラクターが抱える問題や現状を書いてみました。筒井家桃…筒井家の次女。実家の歯科院を継いでいる。誰もが羨む才色兼備。長年付き合っていた同い年の石羽に別れを告げ、9歳下の鯖崎と付き合っている。しかし最近になって彼が親友の響子にも手を出していると知り、ショックを受けている。姉を傷つける発言ばかりする母親が嫌い。陽…筒井家の長女。フリーライター。外国人や大学生とシェアハウスで暮らす自由人。母親とは仲が悪く、実家とは疎遠。誰とも恋愛しないと公言しているが、妻子持ちの靴職人・奈良橋と不倫している。由紀…桃と陽の母親。夫の詠介に依存している。娘たちを「女」として見ているため気味悪がられていることに気づいていない。ハイスペックな男と結婚した自分を「勝ち組の女」であると誇っており、その価値観を娘たちに押し付けている。詠介…現在は桃に医院を任せ、自身は週一回だけ担当患者を診ている。社交的で仲間が多く、家族からも愛されている。◆問題点◆この家は母親がネックになっている→学生時代から詠介のマドンナ的存在だった自分、妻になっても愛され続けている自分、容姿端麗で良妻賢母な自分、にかなり酔っているように見えた。そのため適齢期が過ぎても結婚しない娘たちを見下している。特に陽に対する母親の侮辱は酷かった。彼女が多感なお年頃の時に、女の子は痩せていなければ、顔が良くなければ、従順な性格でなければ愛されない論を押し付けては、自分と娘を比較してマウントを取っていた。この家の家訓(母親が考えていること)は「お母さんのように男の人から愛される女性になりなさい。そうしないと幸せになれません」。姉妹はわざと不幸な人生を選んでいる→昔から子供の交友関係にまで口出しする(あの子とは仲良くしないほうがいい、あの子は育ちが悪いなど)母親が嫌でたまらなかったため、恋愛と限らず彼女が理想とする生き方すべてに対し真逆を貫こうとしている。男選びには成功しても、母親としては失敗している由紀。男性から欲しいものを買ってもらうのではなく、自分で好きなものを買う自立した娘をみっともないと思っている由紀。へんなの〜。理想の男を手にしたら他には何もいらない母親と、夫はいらないけれど好きな仕事をして好きな人たちと過ごしていきたい娘たち。おそらく桃と陽は結婚できないのではなく「したくない」だけ。人生も趣味も夫だけのかわいそうな女にはなりたくないのでしょう。そんな母親への反抗心から、自分たちには友人もいるし、都合の良い男もいるし、外の世界にも繋がりがある!と見せつけたいのだろうと思いました。しかし由紀は詠介に先立たれたらどうするのでしょう?パパべったりだったのに一人で生きていけるの?念のため、今のうちに趣味でも作っていたほうがよさそうです。鯖崎靴職人(兼営業担当)。ポリアモリーのつもりなのか、桃と付き合っていながらも響子への好意とアプローチを隠さない。相手を一方的に好きになったのは小学生以来らしく、それまで女性とは遊び感覚で付き合ってきた。◆問題点◆意外と人の本質をよく見ている。しかし、そのせいで相手の良いところも、良くないところも見えすぎてしまい、結局だれのことも愛せていないように思えた。また、チャラチャラしているようで、誰か一人を真剣に愛することを恐れているようにも感じた。だからこそ、各状況(甘えたい、辛い、楽しい)にあった女性をキープしておく必要があったのではないか。相手にもポリアモリー的なことをにおわせておけば、常に複数のよりどころがあっても容認され、寂しい時にも孤独にならずに済むと考えていたのではないか。鯖崎は良い人だけれど、誰のことも好きで、誰のことにも興味がないように見えました。単に本能のまま生きているという感じ。「この人のここが好きで、あの人のここが好き」というスタンスで女性たちと仲良くなっているなぁと。これじゃ一人の人間は愛せませんよね(笑)まぁ本人としては、一人じゃ物足りなくなるし、一人からは愛情を満足に得られないってやつでしょうか。あと彼は家庭的なものや母性に飢えているように見えました。孤独が生んだ関係続いては桃の友人関係になります。ヒビキ一家響子…桃の中学時代の同級生で親友。大柄で芝犬のような目をしている。4人の子供を育てる明るいオカン。しかし自己肯定感が低く、働きマシーンとして家族の犠牲になっているストレスがある(夫と息子に対して我慢しすぎ)。母親の和枝を亡くしたばかり。長女の未来とは上手くいっていない。※桃からはヒビキ呼びされている隼人…響子の夫。引っ越し屋に勤務している。高校時代は桃を追いかけていたが相手にされず、かわりに猛アプローチを受けていた響子と付き合って現在に至る。元暴走族で常にギラギラしている。こどもたち→勇樹(11)、未来(9)、亮(5)、野花(3)◆問題点◆響子は息子を愛せても、なぜか未来には厳しく接してしまう。その背景には、親とは違い理知的で美しい容姿をした未来への恐れがあった。未来は他のきょうだいとは違い、母親を女として見ていた。また、母親と桃を比べては自身の境遇を嘆いていた(母親とは違い、清潔で整った部屋に住む桃、知的で経済的にも自立している桃、痩せていて美人な桃、憧れの大人で尊敬できる桃)。それを感じていた響子は女としての劣等感に苛まれ、未来が憎たらしくなっている。隼人は妻を愛してはいるが、まだまだヤンキー気質が抜けない大人少年。隼人みたいな男性が苦手だという女性は多いと思われる。単純で疑い深く亭主関白。響子が泣くと、すぐに性的な慰めに入る。また、使い捨ての避妊具をあちこちに投げ捨てる癖がある(野花の頭についていたことも)。未来は響子が鯖崎と頻繁に連絡を取ったり、会っていることに対し「桃ちゃんの彼氏なのにいいの?」と軽蔑している。また、母親が弟や妹の世話を当たり前のように「娘」に押し付け、その責任まで取らせることに苛立っている。おそらく両親のイチャイチャを不快に思っているため、わざと母親が女として触れられたくないコンプレックス(二重顎、大柄、生活感あり)を刺激している。きょうだいたちがうるさくて、プライベートな時間がないことにもうんざりしている。私もこの一家が苦手でした。響子が家族のために毎日尽くしているのはわかりますが、さすがにキャパオーバーなんじゃない?と。いや、凄いし偉いんですよ。ただ、いくら大変だとしても子どもへの対応がガサツよね〜と。良い人だけれど夫婦揃って遠慮や配慮がないタイプ。響子も「自分なんかを愛してくれる人は隼人しかいない」ムーブがかかっていた時は、奴隷のような主婦生活を送っていましたが、鯖崎に言い寄られてからは、女としての自信がついてさらにおかしくなっちゃったみたいです。ちなみに響子は由紀から嫌われています。理由は、学生時代、勉強を教えてほしいと桃の部屋に入り浸っては夕ご飯まで食べていくような厚かましい子だったから。しかしこの二人、家庭内での立場が悪く、夫にべったりなところは似ているかも?まぁ最終的に響子のほうは鯖崎と不倫関係に陥ってしまうので、夫しかいない症候群から一抜けはしましたが…。和枝と山口について響子には和枝という母親がいました。和枝は長い未亡人生活を経て、山口という妻子持ちの男性とネットで出会い交際をしていました。しかし一緒に暮らし始めてから7ヶ月後に彼女は急死。一人残された山口は、今後の人生プランが崩れ、途方に暮れています。和枝…還暦前に恋人を作り、即同棲してしまう。明るくて前向き。人をその気にさせるのがうまい。二人の女子大生に自宅の二階を貸している。山口…そこそこ大手の会社に勤めていたが、今は早期退職したため無収入。妻といる時は台所に立つことなどなく、一日中寝っ転がっていたが、和枝といる時は率先して家事を手伝い、アクティブになっている。安寿美…二階に住んでいる下宿人。山口と親しくなる。◆問題点◆明日が見えていない山口の暴走→山口は和枝の家(響子の実家)で暮らしていた。そこは一階が住居で、二階は学生のための貸し出し物件となっており、和枝はその家賃収入を頼りに生活していた。しかし、和枝が亡くなった今、山口がこの家に住むわけにはいかず、響子と相談した結果、今部屋を借りている学生が卒業するまでは管理人としてこのまま住めることになった。一方で山口は、隼人から早く出て行くように圧をかけられていた。すると下宿人の安寿美から「実家の農家が人手不足だから手伝ってみませんか?」と提案され、そのまま静岡に移住してしまう。山口の妻は、夫の不倫が一時的なものだと思っていたため、和枝が亡くなっていたのにもかかわらず家に戻って来ない事実を知ると衝撃を受ける。怒りの勢いで離婚届を送りつけたが、本人からはあっさりと受け入れられ、おまけに第二の人生をスタートするために静岡へ旅立ったことを聞き、呆れてしまう。山口は将来の鯖崎みたいな人なのかな?平気で妻子を捨てて家を出たくせに、いざ和枝が亡くなると娘を呼び出して「やっぱり置いていった通帳のひとつは返して」って…オイ。まぁ隼人が山口を嫌う気持ちもわかりますが、この人って多分悪い人じゃないんですよね。してることはヤバイのに憎めないというか。そんなんだから世話を焼きたい女性が寄って来る。なんだか年をとってから自分の正体に気づいたおじいさんといった感じでした。(ただ都会育ちの人が今さら農家なんて出来るかなと心配)振り回された人たちまず一番罪がないのは、和枝の家に下宿していた大学生たち。急に大家が亡くなり「私たちどうなるの?」 と思っていたら、和枝の恋人を名乗るじいさんから「お二人が卒業するまで私が管理人をします」と言われホッとしたのも束の間、またもや急に新・管理人は隼人に追い出されるかたちで農家へ転身、再び大家不在の状況に戻り、結局二人とも他へ引っ越すことになりました。って、いやいや普通に迷惑すぎでしよ!しかも最後のほうなんて一階は「遺品整理をしに来たことになっている」鯖崎と響子がラブラブするための密会現場になっていましたからね。こんなところ誰が住めるか〜!!(しかもそれ、未来にバレているんですよ。彼女からしたら自分に家のことを押し付けて親友の彼氏と不倫してんのかよって感じですよね)石羽拓とみな子桃と7年付き合って、結婚寸前のところでフラれた石羽も気の毒です。多分二股かけられていたこと、知っていたよね?しかもいまだに桃が孤独な時に呼び出されているとは。まぁ本人が絶対に結婚はしないと決めている桃から離れられないのだから仕方ないのか。問題は彼の妹のみな子です!何だかとても変な子という印象が強かった。だってふつう兄の元カノと頻繁に会おうとします?自分の結婚式に招待します?別れたと言っているのに無理に復縁を迫ったり、裏でコソコソ根回ししていたり、そこまで桃にこだわる理由ってある?と思い、少し不気味でした。でも桃自身はみな子が嫌いじゃないらしいので問題ないのか。もし石羽と結婚したら、ココとは面倒な関係になりそうたから(依存されそう)遊びの関係に留めておくのが正解だと思いました。美紗子と美都子こちらは山口の妻と娘。屈辱だっただろうな。妻と山口が不仲だったのはわかっていますが、娘とはどんな感じだったんだろう?父親に捨てられた母親に同情していたのか、「あの母親なら仕方ないねー」のほうなのか。娘は成人しているし、捨てられた感覚はそんなにないとは思いますが(大人の揉め事として見ている)、普通に山口のしていることには引いているし、恥ずかしくて腹が立っているだろうなと。ネットで出会った女性に恋をして出て行くってだけでも勘弁して〜なのに、そこから浮気相手の夫が建てた家に住み続け、かと思ったら急にお金の相談をされ(母親に通帳を返すように言ってと頼まれた)、ついにはみかん農家になると言われたら…もう家族なんて本当にどうでもいいのだろうなと悲しくなりますよね。それくらい山口は自由すぎる、実はこの人が一番自由になってしまったのかも。まとめ一部の人以外、みんな自由だった!!まるで自由に体を乗っ取られているみたいで凄かったです!!みんな欲求に正直で、それを隠しもしない。そんな無防備な姿が「はだかんぼうたち」というのかな?結構みなさん社会的地位が高めだと思うのですが、もうそんなことは関係ないくらい開き直っていて、まさに「はだかんぼう」な生き方をしているという感じでしたね。また、親という立場にいる人も愛を目の前にされたら、子どもがいたってどうでもいい!友達の恋人だとしてもどうでもいい!になっちゃって、もうそんな姿は「はだかんぼう」どころか「あかんぼう」だなと思いましたよ。もしかすると、由紀が詠介に、鯖崎が響子に、山口が和枝に抱く気持ちも「あかんぼう」なのかも。みんな自由に甘えたいし、孤独が怖い。そんな中、響子が母親の喪失によって溢れ出た孤独から墜落していくうちに、未来がどんどん冷めた大人になりつつあるのは切なかったな。彼女も将来的には響子と同じ道をたどりそうでしんどい。というか、鯖崎と関わった人は全員この自由人ワールドに勧誘されていないか?大丈夫なの?いつか現実しか見えなくなった時に、世間とのギャップに生きづらさを感じて困りそうですね。山口と鯖崎は接点がないものの「はだかんぼう」で「あかんぼう」なところは似ているのが地味に面白かったです。とにかく恋愛の歪みと親子関係の歪みは一致しているなぁと思う一冊でした。一番最初に愛し方、愛され方を教えるのは親ですからね。由紀は詠介に与える愛ばかりで、それを娘に注ぐ力は弱かったのかな、なんて。よくわかりませんが、そんなことを思いました。年齢がバラバラな登場人物たちの恋愛ですが、どの人にも共通するのは、すべての歪みは孤独からスタートしているということでした。孤独を治療するには愛情が必要。できればいろんな薬を試したい。その日によって何が足りないのか、どれが効果的かわからないから。そんな感覚で男女の関係になっちゃうのかな?わからないところはドラマで補うとして(笑)以上、レビューでした。