鬼門の村|あらすじ・感想・解説
櫛木理宇さんの『鬼門の村』のレビューになります。こちらは真夏にピッタリなホラー小説…しかも「村」ホラーになります!現時点で著者初の(単行本で)5刷重版とのことで、かなり勢いのある一冊と言って間違いなし。興味のある方はぜひ読んでみてください!さっそくですが、期待の【あらすじ】からどうぞ↓◆あらすじ◆大学生の友部は、社会民俗学の嘉形教授の依頼で、夏休みのあいだ山奥の村に滞在し、ラジオ番組に投稿された実話怪談の整理を行うことになった。注意点は二つ、昭和三十年代に一家惨殺事件が起きた家に滞在すること。その土地の水やそこでとれた食物を口にしないこと。何度返しても戻ってくる石、社(やしろ)を護る白い着物姿の子供、鳴り止まぬ羽音……整理を続けるうち、友部はこの村に隠されたおぞましい真実に迫っていく。日本ホラー小説大賞出身作家、 初の本格ホラー長編。出たしから最高だと思いませんか?以下に本書の注目ポイントを紹介していきます!これぞ闇バイト友部(以下清玄)が引き受けたバイトはヤバすぎて、ある意味ホンモノの闇バイトより【闇】でした。【バイトの条件】日給 28,000円内容 ラジオ番組に寄せられた実話怪談の整理期間 夏休み中場所 一家惨殺事件が起きた家条件 上記の家に住むこと。ただし、滞在先の村の水や、その土地でとれた食物を口にしてはならない。※業務内容については、他言無用のこと※部屋中に監視カメラあり※水や食べ物は宅配で届くバイトはゼナー・カード(ESPカード)の的中率が高かった者から選ばれるとのこと。ゼナー・カードとは、アイマスクをした状態でカードの絵柄を当てるアレです。母方の曾祖母がイタコの血筋だったという清玄は、男性にしてはもの凄い的中率を記録し、見事(?)採用されてしまいます。こうして清玄は、一家惨殺事件が起きた家がある丑土村を訪れるのですが…【丑土村まとめ】滞在中はお隣に住む村長一家(矢濃家)がお世話してくれる。特に村長の孫で高校生の佳月がお使いとして来てくれることになっていた。家の外からは「ひい、ひい、ひい」という謎の声が聞こえてくる。佳月が言うには蛙の合唱らしい。また、やけに羽虫が飛んでいる。一家惨殺事件の被害者は奥塚正吉の家だった。かつてはこの村のほとんどが矢濃姓か奥塚姓だった。佳月の祖父が村長になる前は、正吉の家が代々村長をしていた。丑土村には「村から出てはならない」というルールがある。矢濃家と奥塚家は、長期にわたり血族結婚を繰り返していたため、時々その弊害を避けようと余所者の血を入れていた。実際に佳月の従兄・蓮太は十二歳で病死している。現在、村には高齢者が多く、若い人がいない。佳月の次に若いのは、五十歳近い男しかいない状況で、佳月は次期村長候補だった蓮太が亡くなったため、その男と結婚させられる運命にいる。はい、やばい村ですね。何より「時々余所者の血をブレンドして弊害を防ぐ」というところが気持ち悪いです。しかもその余所者はできるだけイケメンがいいと条件付きなのもゾワっとします。まずこんな村に住むたい人はいないでしょう。さらに、清玄が例のラジオ番組に寄せられた実話怪談の整理に取りかかると出て来たのはコレです↓【怪談の内容】作中(ラジオ)ではたくさんの怪談が紹介されており、それらを大雑把にまとめると、すべて丑土村由来のこの世ならざるものの仕業だった。その中から特に重要なワードを抜き出すと以下の通り。①"神の村"尾久塚神社②特異能力者の奥塚与蔵③蝦蟇のような声④名前と住所を教えてはならない⑤神域からは何も持ち帰ってはならない⑥白いオバケ⑦その土地の物を口にしてはならない⑧視覚能力に制限が付くと、幽霊が視えるリスナーからの投稿には、以上のワードが登場する怪談が多いことに気づく。清玄は滞在先の家の近くに尾久塚神社の跡地らしき場所を見つけます。一体ここには何が祀ってあったのでしょうか。ここから先は、より踏み込んだ内容になるのでご注意ください。霊感について清玄がバイトに採用された本当の理由は、彼にイタコの血筋があるからでした。実際に清玄はゼナー・カードで結果を出していますし、予知夢も見るし、少しながら降霊(自動書記)も出来るので、丑土村に眠るヤバイ神様の正体に辿り着けるかもしれない存在だったのです。一方で、ラジオ番組に心霊体験を投稿してくれたリスナーたちは、特別な能力はなくとも、ある条件から不思議な現象に巻き込まれていました。幽霊が視える条件リスナーの投稿によると、普段コンタクトレンズorメガネをしているときは何も視えないのに、裸眼になったとたんヤバイものが視えてしまう人がいました(逆に目が良い人は眼帯を付けるなどして視界に制限が出た場合に視える)。また、清玄の曾祖母の姉は生まれつき視力が弱く、その代わりにこの世ならざるものが視えたそうです。このように本書では、目が悪くなったことで霊感が芽生える人が多く登場します。人間の脳は、情報の八割を視覚から得るという。聴覚からが一割程度で、触覚、味覚、嗅覚はそれ以外だそうだ。ならば視覚に問題がある人間は、ほかの感覚を研ぎすますしかない。触覚や嗅覚、もしくは第六、第七の感覚を磨かざるを得ない。(P197〜198)自分のことは教えない他にもリスナーの体験談には、この世の者ではない何かに個人情報を教えたらあの世に連れていかれると「感覚」 で思い、スルーしたというものがありました。偽名を使った者や、住所を曖昧に濁すなどして回避した者もいれば、うっかりラジオに投稿するための文書を作成したことで「あれ」に個人情報がバレて見つかってしまうなんて人も。怖いですね。おれは登山をすこしやるから知っている。聞いたことがある。山のものに、名を知られるな。呼ばれても答えるな。なぜって、二度と下りられなくなるからだーと。(P75)これは心霊体験あるあるとしてもメモしておいたほうがいい内容でした。まとめここからはネタバレを含む内容整理になります。予知夢について予知夢を見たら夢の通りに行動しないと悪い事が起こる、つまりデジャヴってやつですね。それが物語の中で重要な役割を果たすことになります。まぁ、とりあえずお告げに従っておいたほうが良いと学びました。ちなみに奥塚与蔵は一通りの超能力?というか、霊能力?らしきものを携えており、予知夢を頼りに例の神社を管理していました。土地の物を食べるな丑土村で育てた農作物を口にしてはダメ、水もダメ、 なんなら村のものを持ち帰ってもダメ。よく神域の石を持ち帰るなという話は聞きますが、水や食べ物までNGとは。そこには丑土村でかつて行われた「村が栄えるための外法」が関係していました。それは巫女のような呪う力の強い人間を恨ませることで、その恨みの力を神様に昇華させようという儀式のことでした。そうなんです。かつてこの村の人たちは巫女を人柱にして村の平和を維持していたのです…。ーおまえら、巫女の呪いが染みに染みた土を、毎日炊いて食え。女房子どもにも食わせろ。ー呪いの土で育てた作物を代々食え。湧き出る水を飲め。子々孫々にいたるまで、力を総身に行きわたらせろ。ーおまえの子孫がこの地にいるかぎり、巫女は逆らえん。おまえら自身が、地獄の釜の蓋になるのよ。(P228)気の毒なことに、この時に選ばれた巫女は村中の男から乱暴され、子を孕まされては出産後に目の前で赤ん坊を殺されていました。さらに生まれきた子から女の子だけを生かして、二代目、三代目、四代目と代替わりさせていくうちに、いつしか蝦蟇のような子どもしか生まれなくなったそうで…。それもそう、村人は巫女を掘立て小屋に閉じ込め、陽にもろくに当たらせず、ろくなものも食べさせていなかったため、五、六代目の頃には、栄養不足により正常な妊娠出産が出来なくなっていたのです。めちゃくちゃ酷い話。そりゃ余所者がこんな村の食べ物を口にしたら呪いにかかってしまうわけだ。ちなみに食べても吐いてしまえばセーフ、土地の水で洗った食器を使う分にはセーフ!と、意外にも少し向こう側が妥協してくれるルールになっていて笑えました。評価と感想鬼門の村Amazon(アマゾン)評価★★★超心理学と村ホラーがかけ合わさった物語でとても楽しめました。ラジオ投稿の怪談話もすべて怖くて意味不明で、でも最後に伏線回収してきてスッキリ。もし丑土村に霊感のない人が訪れたら、「白」に名前と住所を言っちゃうし、水もガブ飲みしちゃいそう。逆に霊感ありで念が強い人には何かしら共感できるものがある一冊なのかな?と思いました。ここからは感想↓物語の核心となる部分は、なんと「六部殺し」がベースになっていました。あの六十六箇所の霊場をめぐりながら険しい山で修行する有名な修験者の話です。日本の昔話(民話)のひとつ。 ある百姓が自宅に泊まった旅の六部を殺して金品を奪い、それを元手にして財を成したが、生まれた子供が六部の生まれ変わりでかつての犯行を断罪する物語。最後の子供のセリフから、「こんな晩」というタイトルのバージョンもある。(ピクシブ百科事典)普通は六部を殺して金品を奪うはずが、丑土村長一家のご先祖さまは、貧しいながらも六部を家に泊めてやり、ご飯まで分け与え、金品も盗まず、殺しもしなかったそうです。そのお礼として穢された巫女を渡され、巫女(呪い)を飼うことで、村は一生安泰というわけだったんですね。しかし、その効果を維持するには、村人が村から出ることは許されません。なぜなら呪いを自分たちという存在が蓋となり、封じているからです。もし一族が村を離れたら土地に染みた災いがいっせいに飛び出してしまう。そんなことになったら…という話なんですね。全体的に背筋さん的な雰囲気があり、『穢れた聖地巡礼について』の逆バージョンみたいな感じがしました。『穢れた聖地巡礼について|背筋|ネタバレ』背筋さんの『穢れた聖地巡礼について』のレビューと考察になります。考察といっても、ほとんど自信がないので「~かも?」くらいに思ってください。穢れた聖地巡礼に…ameblo.jpちなみに、この村で霊力のある稲子さんは、村人に死相が出ていると言っており、あぁこれは近くに清玄によって封印されていた呪いが解き放たれるのだろうなぁと思っていたら、ズバリ的中。清玄もまた、かつて犠牲になった女たちと同じように、強い恨みと孤独と絶望を背負った男なので、どちらかと言えば呪う側の人間なんですよね。だからここに呼ばれたのかと。恨みと恨みは結束してしまう。残念ながらその強い力で清玄と神様になった女たちは好きに暴れます。六部よ、なぜこんな不幸を村に運んだ!誰も幸せになどなれない結末…。展開的に丑土村は終わったのでしょう。おそらく全員が亡くなります。佳月も村から逃げたし、もう戻らないでしょう。まぁ仕方ないですね。考察すればもっと細かく楽しめるのだろうけれど、ここでは「この手のジャンルが好きだよ」という方に向けて、注目ポイントを紹介してみました。詳しいことはとにかく直接読んでみてください。特にたくさんある怪談をチェックしてみてほしいです!(三津田信三さんの『みみそぎ』が好きな方にもオススメ)やや意味深な終わり方ですが、これで失礼します。以上、レビューでした!あわせてどうぞ『死蝋の匣|あらすじ・感想|櫛木理宇』【死(屍)蝋】死体が長時間、水中や地中などに置かれた場合に、脂肪が分解して脂肪酸となり、水中のカルシウムやマグネシウムと結合してチーズおよび石鹸様になったも…ameblo.jp『レビュー『骨と肉』犯罪性と依存症は遺伝する?』櫛木理宇さんの『骨と肉』のあらすじと感想になります。骨と肉Amazon(アマゾン)評価3.9/5櫛木作品の中でもグロ度高め。登場人物すべてが病んでいて不…ameblo.jp『鵜頭川村事件|犯人は?ドラマとは違う原作の感想』櫛木理宇さんの『鵜頭川村事件』のレビューになります。こちらはドラマ化もされているのですが、ドラマと小説ではストーリーが違うためご注意ください。ここではいつも…ameblo.jp