今回は私のお気に入りの長編小説をご紹介します。

 

その名も『星屑』です。作者は大好きな村山由佳さん。

 

昭和の芸能界を舞台にしたスター誕生までの物語。星屑=スターダスト。なんだか某事務所の名が頭を過るのは私だけでしょうか。

 

あらすじは以下のとおり。

 

大手芸能事務所「鳳プロ」のマネージャー樋口桐絵は、女性であるという理由だけで雑用ばかりを押し付けられ、何年経っても出世できずにいます。せっかく育てたタレントの手柄は男性社員に横取りされ、苛立ちばかりが募る日々。なんとかして自分もスターを生み出してみたい!!

 

そんな時、桐絵の目の前に現れたのが、天才シンガー・篠塚ミチルでした。ミチルと出会ったのは、博多のライブハウス。仕事で福岡に行った際、たまたま上司の峰岸から誘われて行ったそこで、桐絵はミチルの歌を聴き衝撃を受けたのです。この子はスターになる!そう確信した桐絵は独断でミチルをスカウトし、勝手に東京まで連れて来てしまいます。

 

一方、鳳プロでは専務の娘・大鳥真由を大型新人としてデビューさせることが決まっており、新たな新人を育てる予定はありません。ミチルの才能を埋もれさせたくない桐絵は「そこをなんとか・・」とあちこちで必死に頭を下げまくります。それでも会社の方針は変わらず、窮地に陥った桐絵は、「のど自慢大会」にミチルを出場させ、大勢の人にその素晴らしい歌声を聴いてもらうことにします。

 

結果、ミチルの歌を聴いた鳳プロの関係者たちは、心動かされ、真由とミチルふたりの育成へと力を入れることに方向転換します。

 

 

というのが大まかな内容になりますが、どうでしょう?めちゃくちゃ面白そうだと思いませんか?

 

真由とミチルはまったくタイプの違うシンガーで性格も真逆。真由の歌声が正統派アイドルの伸びやかなソプラノだとしたら、ミチルはブルースロックで鍛えられたハスキーでやや荒っぽいアルトといった感じ。丁寧に歌うことが得意でも、表現力がない真由に対し、歌声にソウルはあっても、テクニックがいまひとつなミチル。彼女たちはふたりでひとつになると化学反応が起こり、絶対に合わなそうな組み合わせが最高の組み合わせになってしまいます。

 

ただ、歌に化学反応は起きても、性格の方はうまくいきません。同じ先生からレッスンを受けながらも、常にバチバチなふたり。大人しそうな見た目と違って超ワガママ娘である真由は、歌やダンスレッスンもやる気がなく、周囲の大人の言うことに耳を傾けません。そんな真由に対し、なんとか歩み寄ろうとするミチルですが、話しかけるたびに「田舎者」と方言を馬鹿にされ、服装のダサさを指摘され、次第に仲良くする気がなくなり―

 

こうしてあっという間に犬猿の仲になってしまった真由とミチル。それにも関わらず、なんと彼女たちはデュオとしてのデビューが決定します。これにはもともとソロデビューするはずだった真由が激怒し、ふたりの仲はますます悪くなってしまいます。

 

そんな真由とミチルをあの手この手でなんとかかたちにしていく桐絵ですが、デビューまでに立ちはだかる壁は厚く、高く、さらにデビュー後も困難は続き、苦労に苦労を重ねます。

 

デビューまでの妨害、挫折、スキャンダル。この後もまるで昼ドラに出てきそうな単語が並びますが、昭和のスターたちの裏側とも言えるそのやり取りがとてもリアルで、面白く、たった一日で読んでしまいました。

 

 

♪♪♪

 

 

真由が専務の娘であることは一部の社員しか知らず、その出生は極秘ということでデビューします。一応、鳳プロ主催の新人発掘オーディションから”きちんと”選ばれてのデビューですが、世間の目を考えると「出来レース」と言われてもおかしくないため、素性を公表せず現在にいたります。

 

ミチルのほうも家庭に複雑な事情を抱えており、桐絵が親がわりになっている状態で・・・まぁいろいろやらかしてくれます。

 

最初は真由にしっかりしてくれ~!と思うのですが、終盤になるとあら不思議。なんだか真由が頼もしく見えてこの子は将来ビッグになるわ(松田聖子になるわ)と思わせてくれるところもムネアツ。ミチルは健気でつい応援したくなる子ですが、少しポヤポヤしたところがあり、たまにとんでもないことをやらかすハラハラ系なので要注意。

 

本書のみどころは、そんなお騒がせデュオを支える同じ事務所のタレントさんたち。ピンク・レディーを彷彿とさせるピンキーガールズ、西城秀樹ではなく南城広樹、野口五郎→野田二郎、郷ひろみ→神まさみ、山口百恵→谷口桃代など、微妙に名前を変えた「あの人」がたくさん登場します。

 

その中でも私イチオシのキャラは万里子様こと演歌歌手の城田万里子です。万里子様は真由とミチルの事務所の大先輩であり、プライドの高い真由と音楽の趣味に癖があるミチルでさえも尊敬してひれ伏してしまう超大物。そんな誰もが認める日本の歌姫・万里子様、時には芸能界の先輩として、時には人生の先輩として色んなことを真由とミチルに教えてくれます。もうマネージャー陣や先生たちが彼女たちにお手上げ!という状況になっても、万里子様のお言葉だけは特別で、響くのです。困った時には万里子様。きっと皆さんもファンになると思います。

 

 

以上が『星屑』のレビューになります。芸能界は競争も激しいし、今日輝いている人が明日スキャンダルでいなくなっているなんて珍しくないし、表側しか見てもらえず色んな誤解を生むし、それなのにスターになれるのは一握り。どんなに努力しても、才能があっても、運がなければ、時代にハマらなければ、「星屑(スターダスト)」の「スター」ではなく「ダスト」側に回ってしまう残酷な世界です。

 

真由とミチルのその後は想像にお任せになっていますが、どちらも伝説の昭和スターになったことは間違いなし。真由の声はなんとなく想像できますが、ミチルの声がどんな感じなのかはとても気になるところ。五輪真弓さんをめちゃロックにした感じかしら?とにかく一度聴いてみたいと小説でありながらも思ってしまいました。

 

皆さんも、最近の昭和歌謡ブームにあわせてぜひ読んでみませんか?

 

読んでいると聴きたくなる。聴いていると読みたくなる。そんな小説です。

 

長編ですが読みやすいので気軽に手に取ってみてください。

 

 

 

 

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それでは、また!