東シナ海流92 海底火山で火傷する2 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

潜水撮影ポイントが決まり重装備に重いカメラを持ってカメラマン二人が海に入った。

危険なのはサメだけでなく、いつ潮流が激流に変わるかわからない。

それに海だから進入は簡単だが陸では当然立ち入り禁止、休火山ではなく入ろうとしても熱くて入れない活火山の噴火口なのだ。

噴火すればまったく逃げ場がない。

 

こんなところに長居は無用、早く終わらせてもらいたい。

 

船から常に彼らの空気の泡を確認していたが、様子を見に潜ることにした。

エアーカーテンは33mから40mにかけて噴火口に向かう緩い斜面。 撮影場所は35m、そこで2人は撮影していた。

 

海底から噴き出る無数の小さな泡は、エアーカーテンと呼ぶのに相応しく、あらためて見れば幻想的な光景だな。

泡風呂のような「いきなり底からボコボコクラッカー」と違い、霧のような小さな泡が徐々に膨らみカーテンを形成、潮の流れに海草のように揺らめいている。

 

5m以上離れて後ろから見ていたが、温泉の快適さにタンクを海底に置いて横になった。

片肘を付いたら、簡単にずぶりと沼状の底にめり込んだ。

 

その瞬間・・

 

っちい~~~ビックリマークメラメラ と、肘を引き抜いた。

 

水で冷やそうと水を探したら周囲は水だらけ。

 

いや・・・ お湯だらけドクロ汗

 

少し浮上して冷たい水でしばらく肘を冷やしたが、ヒリヒリして痛い。 表面と違い内部は熱泥・・溶岩じゃなくて良かった。

 

海の底で火傷するとは思わなかったが、冷たい水がないとも思わなかった。 サメは想定内だが、これは想定外だな。

 

海底の泥の土中は相当高温だが、表面は海水によって冷やされ昼寝したくなるほどの丁度良い湯加減。

まったく潮の流れがなければ熱湯で、底に近づけないだろう。

海底を歩いていないので、あれほど柔らかくめり込むとは思わなかった。

よく考えれば十分想定出来ることだが、浅はかだったな。

 

撮影は無事に終わりカメラマンが笑いながら言った。

 

「ウェットスーツさえ着ていれば火傷することなかったのに」

 

結果からすればそうだが、人にはそれぞれの信念と道がある。

 

「スーツさえ着ていなければ身軽でサメから逃げられたのに」

 

と・・逆の場合だってある。

原因はウェットスーツの有無ではなく判断の誤りだ。

 

今回の撮影では最高傑作映像が撮れたと言う。

撮影隊は5人ほどのチームで、すべて順調に完了した。

これほど静かな海はトカラ海域にしては珍しく、毎回この調子なら船長は楽なのだが。

 

帰港途中、水平線見渡す限りのイルカの大群に遭遇、「朝凪」は群れの中心に突っ込んだがどれほどイルか見当もつかない。

その数1万頭としか言いようがないが、船は全速にもかかわらずなかなかイルカの群れを抜けることが出来なかった。

同じ方向に走っているのだ。

 

好奇心の強いイルカ達は船の横で上を向いてこちらを見上げたまま並走。リカちゃんの目じゃなくルカちゃんの目だな。

船の舳先にも群がって泳ぎ、船尾からもどっさり追って来る。

波もないベタ凪で、透明度抜群の海中は船上から丸見え。

見た事もない壮大な光景に圧倒されたカメラマンは、愛嬌振りまくイルカの映像を撮り続けた。

 

屋久島へ帰港中の黒潮本流は油をうったように滑らか。

島影も見えない見渡す限りの水平線にゆっくりと沈む雄大な夕陽は鏡のような海面に映えて素晴らしかった。

この撮影も絵になったようだ。

 

途中から夜航海になったが、無事に屋久島一湊港に入港した。

 

火傷した海底温泉の泡は見たいとは思わないが、船と無邪気に遊んだイルカの大群と雄大な夕日はもう一度見たいと思う。

 

 

 

 

諏訪之瀬島 当時

 

平島

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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