平島の海底洞窟から無事脱出、礒の釣り客に弁当を届けて元の場所に戻りアンカーリンして一夜を明かした。
当然船からの夜釣りもやるが、エサを放り込めば色んな魚が釣れるから食べるには不自由しない。
野人を翻弄したクエは期待したのだが釣れなかった。
夜が明けて磯へ届ける朝食の準備だが、右舷のフェンダーが見当たらない。 港に接岸する時のクッションで長さ60cmほどのサンドバッグのようなもの。
周囲を見渡すとリーフの上に打ちあがっていた。
珊瑚礁と言うより珊瑚岩で、水深の浅い広大な洗濯板が急激に十数m落ち込んだ絶壁になっている。
船からは30mほど離れたリーフの上のフェンダーをまむし頭が泳いで取りに行った。
なかなか帰らないので見れば・・フェンダーを抱きしめて、膝までの水深のリーフの上に立っていた。
「早よ 帰って来んか」
「サメが・・ サメが~~」
「サメなど何処にもオランだ 泳いで来い」
「イ・・イヤっす そこそこそこ~~
」
見ればちっこいフカヒレがリーフと船の間をス~~ スイッチョと横切っていた。
「こんなもんサメの部類に入らん バカタレ」
「絶対にオレを狙ってますよ~~」
サメはUターンして船とリーフの中間を再びスイッチョと・・
そしてまたUターンして、スタコラスイスイ・・・
たしかに・・興味津々 いや狙っているかもな。
サメからはまむし頭の足だけ見えているし 足くらいなら食べれそうだと思ってるかも・・
飛び込んで体全体を見せればあきらめるはず。
よく見れば2mくらいのシュモクザメだ。
トンカチのような頭をした別名ハンマーヘッドシャークで、イタチザメやホオジロに比べれば性格は穏やかサワデー。
血を見れば狂乱して獰猛になるのはどのサメも同じだが。
「こんなちっこいのに人は食えんさん 早よ来い」
「イヤっす 」
「こりゃあ メスじゃ お前に気があるみたいだな」
「何でメスってわかるんすか~」
「達人は見りゃわかる ひれつき腰つきが違うだろうが」
「気があるって 食い気・・じゃないすか~」
「愛があるからお前は食えん 早よ戻れ」
「う~~ いやっす 愛いらん・・」
「性格大人しいし 口はちっこいし 目はリカちゃん・・
それに人を襲うにはまだ 50cm足りんわい」
「絶対 イヤっす」
首を横に振ってテコでも海に飛び込みそうにない。
50cm足りんじゃなく2mにすればよかったな。
仕方なく野人はアンカーを上げてリーフに船を付けてまむし頭を回収したが、野人が飛び込んでサメ追っ払った方が労力は楽だったな。 主機室に入っての点検・始動も手間だが、再び元の位置でアンカーを打って調理、ウィンチで巻き上げる重いアンカーの上げ下げも面倒。
2mのサメ・・岸から見ればドキッとして、水中で目の前で見れば誰でも鼻水も飛び散るほど怖いだろうな。
ジョーズにあしらえば気にせずともいいが、捕まえたり危害を加えたりすれば小さくとも必死で噛みつく。
まむし頭は釣りの最中に海面近くまで上がって来た魚を何度か1m前後のシュモクザメに横取りされているから、嫌いだったのだろう。
あのハンマーのような独特の頭も、ニュアンスがまむし頭が嫌うシイラのようだし。
でかいサメばかり海中で遭遇している野人にとっては、ペットのかまぼこが泳いで散歩しているようなものだ。
図鑑と野人の判断とは微妙に違うが 細かいことはいい
シュモクザメ
シュモクの由来は、T字型の頭部が仏具の鐘などを鳴らす時に使う、「撞木(しゅもく)」に似ていることから命名
体長 最大で4m30cmくらい
人への危険性
シュモクザメは人食いサメとして分類されることもありますが、小型(1.5メートル程度以下)であれば、人を襲うことはほとんどありません。2メートルを超える大型では、人を襲うことが稀にあります
トカラ列島 中之島から諏訪之瀬島が・・
ハンマーヘッドシャーク
あ・・・あんまりっす サメも蛇もマヒマヒも嫌い
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