ボラの突きん棒漁
ボラがぼやいているわけでも嘆いているわけでもない。
むしろ喜んでいるかも知れない。
生命力の強いボラは海と気水域を行き来、どんな汚水であろうが上って行く。
頭のてっぺんもペッタンコで恰好も今一つ、河口の泥水でうごめくボラを毛嫌いする人は多い。
人間に嫌われるほどボラ漁は廃れ、ボラは安全で喜ぶことになる。
ボラと聞いただけで敬遠するのだが、価格で水産加工食品の最高峰に君臨するのは「カラスミ」であり、カラスミはボラの卵巣なのだ。
ボラの肉が臭くて不味くて食えないのなら、内臓はもっと臭くて食えないはず。
そう考えることはないのだろうか。
表面の言葉で判断、仕組みを知ろうとしなければ矛盾が生じるのだが、それすら気付かない。
ボラは古来より漁業を支え続けた最高の食材であり、野人の食の本質復興事業は海のボラから始まったが、言葉、イメージという「常識の壁」に阻まれスズキの生ハムだけが生き残った。
ボラの名誉回復の為にも再び野人がやるしかない。
出世魚のボラは、オボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トド・・と成長によって名を変え、おぼこい、すばしっこい、いなせなどの他、トドが最後・・「トドのつまり」と言う言葉も生まれた。
それほど人の暮らしに密着した魚であり、他の出世魚のブリやスズキとは別格の魚。
カラスミにするのは大挙して押し寄せる外洋のボラであり、身も当然綺麗で美味しい。
伊勢湾のボラも美味しく、日本一の清流にもなった宮川河口のボラも臭くはない。
川漁師に頼んで夜の突きん棒漁に出てもらい、朝運び込まれたボラは30本で50キロ。大きなものは60㎝2キロを超える。
冬のボラは「寒ボラ」と言って、マダイのような美しい身に脂がのって本当に旨い。
十数年前の12月、雑誌の取材で食べ比べをマリンビレッジでやった。
天然マダイ、養殖マダイ、寒ボラの刺身はよく似て見分けがつかない。
食べて、3種の魚名を当ててもらい、どれが一番旨いか決めてもらうのだが、参加者10名ともボラを「天然マダイ」と記して旨さ1番に挙げた。
味ではなく見かけや言葉で判断して偏見を持つからボラを嫌うのだ。
日常でもよくあることだな・・
お野人もずっと・・野蛮人と思われていた。
まむし頭1人で50キロを解体、これから3日かけてボラの生ハム作りに入る。
ベタ塩をまぶして完全に生臭味を抜き、塩分調整、白ワインベースのソミュールに一晩浸け込み、風乾して水分を抜き、一昼夜スモークすると、ねっとりとして美味しい生ハムが完成する。
刺身でゴリゴリ歯ごたえがあるほど鮮度が良くなければ到底作れない。
当時、スズキ、ボラ、マダイ、シイラ、タチウオ、ブリなどの生ハムを作っていた。
魚名を言わず並べて試食させると必ずボラに軍配が上がっていた。
人気はなかったが、最も安価で美味しいのがボラだった。 スモークサーモンよりはるかに旨い
マリンビレッジの物産事業は多くの読者によって支えられている。
是非一度食べてもらいたい、日本の漁業を生んだボラの名誉回復の為にも・・
県で最優秀賞をいただいたスズキの生ハムより味は濃く魚らしい。
日本の沿岸漁業を支えたボラ
http://ameblo.jp/muu8/entry-10089832493.html
とどのつまりの巨大なへそ
http://ameblo.jp/muu8/entry-12098816791.html
長野からレオが手伝いに来た
ボラのヘソ ボラのヅケ 刺身 アラ炊き
食いたければ手伝え ・・・