舞台:芥川版桃太郎 | 成羊記文

成羊記文

斉藤ネヲンサインMC
マトン太郎
の、活動記録やライブ情報の発信用……のハズが、実態は
・ゲームの吟味
・遊び歩きの記録
・単なる日記
等々、話題のとっ散らかった公開電子雑記帳。

さて、タイトルどおり昨日は演劇鑑賞。


今年は二月に続いて

2回目の観劇。


趣味の欄に観劇と記す様な諸君からすればほとんど行ってないのと同じ程度であろうが、一年に一度も無いなんてことのザラな我が身としては、今年はかなり観ている方である。




さて、今回の舞台のは

WITH YOUさん

桃太郎 ~芥川龍之介 Ver.~

劇団の代表である奥野さんのお誘いを受けて、久々の観劇となった。

(ロビーにあった奥野さんポスター)



恥ずかしながら、そも、かの大作家が桃太郎を記していたこと自体が初耳。

青空文庫で読める

とのことで事前に読んでみたが……十分足らずで読み切ってしまえそうなこの作品で、大抵の場合二時間程度はある舞台をどうやってもたせるのであろうか?

これについては後程明らかになる。




会場は

六行会ホール

京急線『新馬場』から歩いてすぐなので、京急沿線住みの京急ユーザーとしては有難い。



余談ではあるが、この会場は飲食に大変厳しい設定となっている。


ホールでの飲食はもちろんだが、ロビーも絨毯のあるスペースはダメ。

タイルの所のみ許可されているが、その面積は広くはなく、混み様によっては利用は難しいのではないかという印象。


スタッフの方がかなりしっかりアナウンスしていたうえに、ペットボトルか何か飲もうとした者を注意と申すか、ロビーへの移動をお願いしていた辺りを見るに、会場側よりかなり強く要請があったものと思われる。


……しかし、2時間以上水分が摂取できず、どうしてもということになると中座せねばならぬという設定は中々辛いな。

きっと、前に愚か者が常識外の利用でもして、会場側が頑なになったのであろう。

……つくづく愚者が世の中を不便にする。


まあ、そんなワケで、事前に水分摂取とトイレはキッチリ済ませた方が良い。




で、肝心の内容であるが……これは過去に観た舞台(ライブやミュージカル等を除く)の中で一番面白かったと申すか、引き込まれた。



公演の前に出演者でマジシャンでもある

アレスさん

が、前説をやってくれるのだが、そこでの説明にあった通り、短編を2時間20分の舞台脚本にする為に様々な芥川作品から色々な人物や場面を集合させたらしい……手塚先生のスターシステムみたいなものだな。

なので、芥川作品を知っていれば知っている程

「ニヤッ」

と出来るワケだ。



今回はストーリーも良かったのだが、とにかく殺陣がスゴい!


桃太郎がベースなので、当然戦闘シーンはあるのだとは思っていたが、それは時代劇等に出てくる旅芸人一座のシーンの様な、普通の動きとスローモーションの間のような、言ってしまえば緩慢な動きを想像していた。


が、全く違った……これが早い早い!

テレビで見るチャンバラ並のスピードでブンブン振り回している。

時にスローモーションの演出もあって、テレビや映画的な雰囲気もあった。


しかも、割とクルクル回る。

そして時に、結構な大人数で展開される。

最大で舞台上に10〜12人くらいが本人たちも全体像もクルクルと、まるで自転と公転みたいな円運動を展開しつつの殺陣をキメる。

よくまあ、ぶつかってひっくり返ったりしないもんだなぁと。


クルクルと言えば、場面転換の演出もテンポが良くてビジュアル的な動感があって良かった。

ステージ上を一周する勢いで走り抜けて舞台袖へとはけていくのだが、効果音も相まって結構印象に残る。



そしてストーリーなのだが、どこまで書いて良いのかわからん……ネタバレになってしまっては興醒めであるしなぁ。

よく練り込まれているし、気を衒ったようで基本は外さないのはプロの仕事という印象。


更に、一部アドリブでふられたっぽい箇所があり、そこで役者さんが素で困っていたのは面白かったな……一発ギャグ自体は滑り気味だったが、それがまた面白い。



あと、日替わりゲストとのことなので触れても問題無いと思うが、倉知成満さん

が出演されておられた。

倉知さんは

バトルフィーバーJのバトルフランス

を演じておられた方。


倉知さんのシーンは、対立陣営の心が一つにと申すか、役者さん達が気遣いの余り、これまた素に戻っておられたな……グダグダ感もこうなると妙に面白く感じる。

倉知さんが随所で発する

「緊張してる!」

「歳だから忘れた!」

なんてのも、芸歴が許す味わいよな。



昨日は諸事情でパンフなどが購入出来なかったので、どの人がどの役かとか歴史上の有名人以外の細かな役名なんか忘れてしまったのだが、それでも印象に残る人は何人かいた。


姫の護衛の男装の麗人風の剣士は、そのまま沖田総司の役が出来そう。

この女優さんはハッキリ『イケメン』

美人なんだけど、『イケメン』寄り。


それから、卜部季武役の人。

コメディチック、狂気、情念……ぜんぶ揃っていて気持ち良いくらい気持ち悪い(褒め言葉)

最初が地味な腰巾着の印象だっただけに、後半の“活躍”がシビれる。


奥野さん、奈良平さん、長澤さんは存じ上げている方々だからやっぱり印象に残る。

このお三方に関しては軽くネタバレになるが、


奥野さんは善良なリーマンより確かな小賢しさを持つ強かな悪党の方が似合うね。


奈良平さんも悪役良いね。

ちょっと踏んで欲しくなった。

今後の“悪平”として活躍に期待。


永澤さんは最初わからなかった。

マジ仙人。

でも声でわかる。

仙人からブー太郎の声がするんだぞ……軽く脳がバグる。


そして、イルマンだったかって商人役の人。

これまた小賢しいのだが、どことなく憎めない妙な魅力があった。

うーん……伝わるかわからんが、

ブンビーさん

の魅力に近いかも知れない。


あと、桃太郎のお供の犬役。

あの役は実に味わい深い。

犬というと忠誠心が売りだが、今回の犬は一見忠義者に見えて、実は自己本位の、言ってしまえば『ご主人様依存症』なだけの印象。

ある種のヤンデレ。



それから随所でダンサーさんたちが心情描写を踊りでやっておるのかな?

それもなんか結構ハードな動きもしていて、全体として運動量の多い舞台という印象。


監督が、二月のミュージカルの時と同じく笹浦さんなので、もしかすると運動量の多い演目がお好きなのかも知れない。




といった感じで、かなり見応えがあった。

まだ残り公演もあるので、気になる諸君は足を運んでみてはいかがであろうか?