怒涛の二週間
先々週と先週はなかなか大変でした。
さて、ちょっとしたお祝い事があったので、ワイン好きの友人と ワイン会を開きました。今回すごいですよ。
左:ヴォーヌ・ロマネ レ・ボーモン デュジャック 2007
右:カレラ・ジェンセン 2007
夢のような組み合わせです。実はボーモンはその場のノリで急に開けたのですが。
カレラ・ジェンセン。
開けた直後は「重い!硬い!」という感じでしたが、わずか5分でものすごいワインに変化。おいしい!
「これが『ワインが開く』という現象か!」と友人ともども、ものすごく納得。とにかく、これほど飲んでいる最中に変化するワインは始めてでした。
ものすごい果物の香りと、とにかく明るい味。飲んでてニヤニヤするほど楽しいよ!
今まで飲んできたワインの中で一番おいしいと確信を持って言えるワインでした。パーカーポイント97点は伊達じゃない!
http://www.calerawine.com/trade/pos/RP083110_Jensen07.pdf
「これはゆっくり飲んだほうがいい、何かもう一本あけよう」ということになり、開けたのがボーモン・デュジャック。
開けた瞬間から、妖気がただようというか・・・。嗅いだことの無い香りでした。何に例えたらいいのかさっぱり分からない。でもとにかくいい香り。
グラスに注ぐと、ぶどうジュースかと思うような薄い色。カレラと並べると全然違う。
飲んだ瞬間、「うわー・・・」。
味も何に例えればいいのかさっぱり分からない!ものすごく美味しいのは間違いないんだけど。何と言うか、静かなワイン、哲学的なワインでした(←えらそうな表現)。
そして、飲んできたワインの中で一番おいしいワインをあっさり更新。友人は「カレラのほうがい」とのことでしたが、私はボーモンのほうが好きでした。
まあどちらもものすごく美味しかったのです。
カレラが陽ならボーモンは正に陰。この2本を並べて飲んだのは大正解でした。これほど個性が違うものなのかー、と感動。
夢のような時間でした。気合入れて作った牛の赤ワイン煮も美味しかったし。大満足です。
翌日は、先月ご出産したばかりの友人宅に遊びに。赤ちゃんと会ってきました。かわいかったー。
充実した週末でした。
グレツキさん死去
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201011130183.html
好きな作曲家でした。ご冥福をお祈りします・・・。
交響曲第3番「クライネス・レクイエム悲歌のシンフォニー」第32楽章
http://www.youtube.com/watch?v=miLV0o4AhE4
Totus Tuus
http://www.youtube.com/watch?v=GT-fogvEMTs&feature=related
Szeroka Woda - Maestoso Espressivo
太陽活動と気候変動①
朝日新聞にけっこう大きく掲載されたのでご存知の方も多いでしょう。
・太陽活動停滞で0.7度寒く 13年以降にミニ氷河期?(朝日新聞)
http://www.asahi.com/science/update/1109/TKY201011080433.html
なかなか刺激的なタイトルです。温暖化は間違いだったの?と思う人もいそう。他の記事を見てみましょう。
・太陽活動低下期、日本は湿潤(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010110900081
・スギから気候変動を分析 宇宙線増加、急激に湿潤化(共同通信)
http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110801000812.html
どれも微妙に表現が異なりますね。
さて、これらのニュースについて考える前に、背景をおさらいしておきます。
太陽活動の変動が気候に影響を与えるのか、という問題はずっと検討されてきました。今のところ、「現在起きつつある温室効果ガス増加を原因とする気候変動においては、その影響は限定的」という意見が主流になっています。
図1:太陽活動(Solar irradiance)の気候に与える影響を示す図。温室効果ガスに比べるとその寄与は圧倒的に小さい。IPCC AR4 WG1 cp.2より。
ただし、一つ注意しておくことがあります。図の一番上に、"Radiative forcing of climate between 1750 and 2005" とあります。あくまでこの図は1750年から2005年にかけてのことであり、それ以前のことはここでは考慮していません。
実はこの直前の17世紀後半~18世紀前半にかけ、太陽活動が極端に弱まったとされる時期がありました。この時期を「マウンダー極小期 」と呼んでいます。
そしてこの時期は、「中世の小氷期 」と呼ばれる寒冷な時期の中でも最も寒冷だった時期と一致します。このことから、やはり太陽活動は気候に大きな影響を与えるのではないか?とする主張もあります。
中世小氷期は、データの多いヨーロッパでは寒冷だったものの他の地域ではそれほどでもないとか、この時期は火山活動が活発で気温を低下させる方向に働いていたとか、いろいろなことが分かってきました。やはりこの時期においても太陽活動の影響は限定的なのではないか、との意見が多いようです。
これと対立する意見もあります。最も有名なのがいわゆる「スベンスマルク効果 」です。
スベンスマルク効果を簡単に説明すると、「太陽活動が弱まると太陽の磁場も弱まる。すると、地球に到達する宇宙線の量が増加する。宇宙線が地球大気に到達すると雲の核を生成する。つまり、太陽活動が弱まると雲が出来やすくなり、これが寒冷化をもたらす」というものです。
面白い説ですが、証拠はありませんでした。これまでの研究も、スベンスマルク効果を否定する報告が多かったようです。少なくとも現在おきつつある温暖化とスベンスマルク効果を結びつける結果は全くありませんでした。
※なお、スベンスマルク効果については、「温暖化の気持ち 」さんおよび増田先生のHP をを、ぜひご覧ください。
図2:宇宙線と気温の関係。長期温暖化トレンドを考えると宇宙線と気温の一致はさほどよくない(上段)。長期トレンドなどを除くと一致が良いようにも見える(下段)。宇宙線が気候に影響を与えることはあるかもしれないが、少なくとも長期温暖化トレンドは宇宙線では説明できない。Skeptical Science
より。
前置きが長くなりましたが、いよいよ今回の東大・名大の研究内容を見てみましょう。詳細はPNASに近いうちに掲載される論文を見ないといけませんが、とりあえず東大のプレスリリースが最も詳しいかと思います。
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/news-topics/j/news20101109.html
私なりに要点を纏めてみましょう。
・杉の年輪に含まれる14Cを分析した結果、マウンダー極小期には太陽の磁場活動が極端に低下したことが分かった。
・また、北半球の広い地域で、磁場活動が低下する時期と気温が低下する時期が一致することが分かった。
・一方、日射や紫外線の量との一致は低く、これは太陽活動の中で太陽磁場が気候に大きな影響を与えることを示唆する。
・10年~20年先に、長期太陽無黒点期に突入する可能性も依然として残っているが、その際には今回得られたマウンダー極小期における知見が、気候変動の予測に役立つ
・それぞれの時間スケールで太陽活動が気候に与える影響を定量的に評価するには、さらなる研究が必要
となるでしょうか。「スベンスマルク効果を少なくとも部分的には肯定する報告」と言えるでしょう。これが正しいなら、かなり画期的な発見と言えるのではないでしょうか。今後のさらなる研究が待たれるところです。
さて、それではIPCC報告は間違っていたのでしょうか?朝日新聞報道にあるように、近い将来ミニ氷河期が訪れるのでしょうか?
・・・もちろんそうではありません。この研究成果は、温暖化を否定するものではなく、ましてや近い将来ミニ氷河期が訪れることを示すものでもありません。簡単に言うと、「将来予測に関しては、不確実さがわずかに増加した」なるでしょうか。
明日から出張でちょっと間が空くかもしれませんが、次回 に続きます。
今日最後に、この報告の著者の一人、宮原先生が公開されている各種ページを紹介しておきます。どれも面白いです。
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/~hmiya/Miyahara090414.pdf
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/ICRR_news/ICRRnews72.pdf
http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/~hmiya/Miyahara_EPSL_2008.pdf