9月からひょんな流れで、武蔵野学院大学の就職部長を兼担させていただいています。

 色々な意味で、当世の学生気質(かたぎ)が理解出来る最前線であり、教員として本当に勉強になっています。


 担当者の若手とよく話すのですが、わずか1~2歳の差である彼が驚く程、学生のみんなは失礼乍ら「世間知らず」なようです。平気でアポイントをぶっちぎったり、何らかの理由をつけて行動しなかったりがとても多いようで、良い悪い以前に失敗をイメージして心配ばかりしてしまっています。

 私も「すぐにマイナスなことばかり考えてしまう」と相談のようなことを言われることがあるのですが、人間の脳には「扁桃体(核)」という部位があり、何も考えないと生存の為に不安なことを考えてしまうように出来ています。ですから、考えないで直感で頭を働かせると心配や恐れが先行するのだと、脳科学は教えているのです。

 就活というものは、学生のみんなにとっては最も心配で最も不安で、そして最も恐怖なものです。従って、就職部の活動を通して学生のみんなを見ると、どうしてもそういう形が見えてしまうのでしょう。

 特に、ウチの大学の学生には、素直な人間が多い分だけそういう傾向が強いのかもしれません。


 そこで学生のみんなに伝えているのが、かねての持論で、最近知人の著書でも触れられていた「おかげで理論」です。


 ウチの大学でもいきなり一流企業を受けて落ちる学生がいるのですが、そうすると「ウチの大学が2流大学だからだ」とか苦情を言われます。しかし、エントリーシートの書き方や面接のコツを就職部に相談しているような準備段階であらば、どんな一流大学の学生でも採用してもらえないことでしょう。

 つまりは、2流大学だから落ちたのではないのですが、思わず何か理由を探して「2流大学の「せいで」落ちた」と理屈を付けてしまうのです。


 ここで少し冷静になってみましょう。

 これは「せいで」を「おかげで」に変えたら、奇跡のように状況が変わってしまいます。

 「キミ2流大学だね。」ともし面接で言われたら、「そうですね。ですが、そのおかげで大学祭の運営をしたり、先生方と仲良くなったり得難い体験が出来ました。」と答えてみたら、相手の方にも興味を持ってもらえます。

 もしも「キミ女性にもてないだろ。」と面接で言われたら、「もてませんね(笑)。そのおかげで友達はとても多くて、相談を沢山受けるようになりました。」と答えてみたらどうでしょうか。

 勿論、これらは一例です。


 よく学生は「企業は圧迫面接をする」などと口にしますが、企業の採用担当者からしてみたら、学生の暗記してきた「持ちネタ」を聞いても仕方ないので、何らかの形で詰まらせて「素」に戻らせてみようと考えることが間々あります。

 学生からしたら、詰まらされて素になってボロを出してしまうので文句を言うのかもしれませんが、それでは自分で自分のコンプレックスを相手に宣伝しているような形になっていることに気がつくべきです。自分の良さや魅力などはとても伝わりません。

 それよりも、敢えてそれを「おかげで」という文脈に変えてください。話の展開がスムースになってみたり、面接者がその流れにのって質問してくれたりするようになるのではないでしょうか。


 学生のみんなにとって、アルバイトのようなマニュアル的なものとは違う「就活」は、社会の縮図のようで逃げ出したくなるものなのかもしれません。

 しかし、ちょっとした工夫があれば、もしかするとそんなあなたでも見事に乗り切れる課題なのかもしれないのです。

 微力ではありますが、そんなちょっとした工夫も学生のみんなに伝えながら、気持ちを少しでも軽く就活に臨めるように、お手伝いをしていきたいと考えています。