目の前にある一万に及ぶ入試問題も、何らかの形で整理しないと役に立ちません。二十年前だったらカードに書いて分類整理しました。そう、図書館の端に大きなカードボックスがあって、その中のカードをめくると、いろんな情報が書かれていたのを覚えています。あれです。今ではそのカードをデータベースソフトで行うことが出来ます。


 その場合、どういう項目を立てる必要があるかを前もって決めておかなくてはなりません。入試問題の場合、およそ、次の三項目がまず必要です。以下それを説明します。


 一  問題の出自 ① 出題大学名    ② 年次   ③ 収録問題集名

 ①については学部名をどうするか、②は西暦にするか元号にするか、そして③では「詳解」か、「正解」か、また他本か など、いくつか統一する必要がありますが、基準さえ決まれば、これらの項目はほとんど問題なく入力することができます。そして、これさえあれば、東京大学の1966年の問題はどの本にあるということがわかり、その本を開くと問題が見つかるということになります。



 二  本文の出自 ① 出典名    ② 作者名   ③ テーマ

 一例をあげます。一九八〇年五月、丸谷才一さんは『週刊朝日』で「小林秀雄の文章を出題するな」という大学入試批判の文章を発表されました。また、同じ文章が単行本『桜もさよならも日本語』に収録刊行されたのは一九八六年一月のことです。そこで、この前後、小林秀雄の文章がどれくらい出題されているかを調べてみようと思うと次のような操作を行います。

 まず、② 「作者名」の項目で「小林秀雄」を「検索」をします。そうすると、数百問を

「選択」することができます。次に「年次」の項目で「整列」させます。そして、その年次毎の数を数え上げればいいわけです。因みに私の調べた「小林秀雄」の出題数をその近くの年次毎に並べると次のようになります。(「詳解」と「正解」に収録されたものだけです)

1979ー16   1980ー14   1981ー10   1982ー11   1983ー14

1984ー21   1985ー12   1986ー 7   1987ー15   1988ー13

 この数をどう見るかは難しいでしょうが、他の作家に比べてはるかに多く、さすがの丸谷さんの主張もあまり効果がなかったかと思われます。


 ただ、この二の項目は、これまではいろいろ難しい問題をもっていました。大学が出典名を公表しない限り、その原文の出典が何かわからないことが多かったのです。当然作者名も明らかになりません。

 明治書院『現代国語問題総覧』というやはり大きな問題集があります。一九七一年からの問題を載録していますが、「作者・作品別」としたため、出典の分からないものは載せることができず、刊行当初は、「詳解」や「正解」より不完全な問題集になってしまったという例があります。これも二〇〇〇年以後は、ネットその他の情報網が揃い、現在は出典不明の問題は皆無に近い状況になっています。この出典不明の問題についてはまた触れます。


    

  三 設問内容

 設問をどう分類するかを前もって決めておかなくてはなりません。Ⅰマーク、Ⅱ記述 からはじまって、原文完成問題としての、書き取り、空襲補入問題、整序問題など、また、説明問題という項目も必要でしょう。

 前に取り上げた、『大学入試の「国語」』は「説明好きな現代文」として、先の明治書院『総覧』の後継としてのデータベース版をもとにして、「説明文の問題数」という年次別の数と比率を表にして掲載しています(同書322頁)。これなど、データベースに「説明」という設問項目を用意しておかなくては調べることが出来ません。


 その他に、私は古文で「メモ」などという項目を作って覚え書きを書き込んだりもしていますが、どうしても必要な項目は「問題の出自」・「本文の出自」・「設問内容」の三つだと思います。