株式会社Multiface代表の五反田です。
今回は「入居者からの要望対応」を
経営視点で考える、というテーマについてお話しします。
「エアコンの効きが悪い」
「網戸を替えてほしい」
「インターネットを速くしてほしい」
賃貸経営をしていると、
こうした要望は必ず届きます。
全部に応えていたらキリがない。
でも断りすぎると、退去されそうで怖い。
私自身も、物件を持ち始めた頃は
この判断に何度も迷いました。
今回は、この迷いを感情ではなく、
「基準」と「数字」で整理していきます。
ポイント1:
「すぐ対応・交渉・断る」は3つの基準で決める
結論から言うと、判断基準は次の3つです。
「義務かどうか」
「他の入居者にも効くか」
「費用を回収できるか」
まず、壊れた設備の修繕は、
そもそも「選ぶ」ものではありません。
民法上、貸主には修繕義務があります。
設備が使えない状態が続けば、
賃料減額の対象になる可能性もあります。
給湯器やエアコンの故障は、
「即対応」が原則です。
次に、設備のグレードアップを求める要望です。
たとえば「インターネットを無料にしてほしい」。
これは全国賃貸住宅新聞の人気設備ランキングで、
長年上位に入っている設備です。
その部屋だけでなく、
他の部屋の募集にも効く要望なら、
前向きに検討する価値があります。
一方で、その入居者の好みにしか合わない内装変更などは、
「費用の一部を負担してもらう」
「退去時の原状回復条件を決めておく」
といった形で交渉するのが基本です。
それも難しければ、
理由を添えて丁寧にお断りしましょう。
ポイント2:
比べるべきは「対応費用」ではなく「退去コスト」
要望の費用だけを見ると、
どうしても「余計な出費」に感じてしまいます。
しかし、本当に比べるべき相手は、
退去が起きたときに失うお金です。
日本賃貸住宅管理協会の調査「日管協短観」によると、
賃貸住宅の平均居住期間は
単身世帯で約3年3ヵ月、
ファミリー世帯で約5年です。
つまり単身向けなら、
3年に1回ほどは退去が起きる計算になります。
ここで、家賃8万円の単身物件で
退去が出たケースを考えてみます。
(金額はわかりやすくするための試算です)
経年劣化分の原状回復費:約10万円
客付けの広告料(家賃1ヵ月分):8万円
空室期間2ヵ月分の家賃:16万円
合計で約34万円。
家賃4ヵ月分以上が消える計算です。
原状回復費の中でも、
普通に暮らして生じる傷みや日焼けは、
国土交通省のガイドライン上、原則オーナー負担です。
これと比べれば、
数万円の網戸交換や照明の交換は、
「退去を防ぐための保険料」とも言えます。
実務では、
「この対応費用は、退去コストの何割にあたるか」
を目安にすると、判断がブレにくくなります。
ポイント3:
信頼関係は「長期入居」と「紹介」を生む資産
要望対応の本当の価値は、
設備そのものではありません。
「このオーナーは、ちゃんと動いてくれる」
という信頼にあります。
信頼関係があると、
入居者は小さな不具合も早めに教えてくれます。
水漏れや雨漏りは、
早く見つけられるかどうかで
修繕費が大きく変わります。
「言っても無駄だ」と思われていると、
気づいたときには被害が広がっている。
これは実際によくある話です。
また、更新時の条件相談もスムーズになり、
「友人に紹介したい」
「また住みたい」
という声につながることもあります。
大切なのは、断るときも誠実であることです。
理由をきちんと説明し、
できる範囲の代替案を示す。
それだけで、入居者の受け止め方は大きく変わります。
まとめです。
入居者の要望は、
単なるコストではなく、経営判断の材料です。
故障の修繕は、義務として即対応。
物件の価値が上がる要望は、前向きに検討。
個人的な好みの要望は、交渉するか丁寧にお断り。
そして判断に迷ったときは、
「退去されたら、いくら失うか」
と比べてみてください。
目先の数万円を惜しむより、
長く住み続けてもらえる関係をつくる。
それが、空室に強い賃貸経営への一番の近道です。
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