不動産投資編 第16回 どうしたら高く売れる!? | 「不動産リテラシーの向上で老後の安心生活を」シリーズ投稿始めます

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中小企業診断士 桑岡伸治のブログです。このたび、「老後の安心生活」実現を目的に、不動産に関する様々な情報を提供するシリーズ投稿をはじめます。
はじめにプロローグをお読み下さい。
ひとりでも多くの方が、Happyになりますように!

 不動産投資を始めるとき、「売却のこと」考えていますか?

 

 「不動産投資編第3回「リターン」を分解してみれば…」の中でも説明しましたが、「リターンは、インカムゲイン、キャピタルゲイン」の合計です。

 

 「株」に投資した人は、その日から「上がったか下がったか」、つまり「今、売ったらいくらで売れるか」ずっと気にしています。なんなら、仕事中もスマホをチェックして上司の注意を受けたりしています。(笑)

 それはなぜか、株式投資では「リターンの多くがキャピタルゲイン」だからでしょう。「値上がり益」に比べれば、配当はわずかなことが多いので、「いくらで売れるか」に意識が集中するのです。

 

 不動産投資の場合は、「毎月入ってくる家賃がうれしくて」(笑)、ということでもないと思いますが、ついつい「売却」に対する対策がおろそかになっているということはないでしょうか?

 投資は「売却」をもって完了、「利益確定」となります。不動産投資においては、この売却のことを「出口」という言い方をします。だから、売却を想定した取り組みを「出口戦略」といいます。

 

 この出口戦略は、投資の検討段階から、投資期間中を通してずっと持ちつづけなければなりません。なぜなら、思いのほか「不動産価格の変動」は大きく、価格下落によって大きな損失につながることが珍しくないからです。

 身近に70、80代の方がいらっしゃるようでしたら、バブル期に、「その方のご自宅がいくらで売れたか」(もしくは、誰かが買いに来たか)尋ねてみられるとよいと思います。現在の相場の10だったということも珍しくないはずです。

 私がかかわった、ある地方都市の土地は、80億円の取引がまとまる直前でリーマンショックが起きて商談は白紙になり、数年後に売却したときの金額は24億円でした。

 

 「将来いくらで売れるのか」を予想することは、かなり難易度が高いことだと思われます。 そもそも売却時期は、5年後か10年後か…。当然、長期の投資ほどリスクが高い、つまり「何か」が起こる可能性が高くなります。地震かもしれないし、恐慌かもしれないし、戦争かもしれないし、未曽有の好景気かもしれません。

 いずれにしても、売却しようと思う「その時の経済状況」は、自らの努力では如何ともしがたい「外部環境要因」によって形成されます。

 

 そこで結論です。

 結局のところ、不動産オーナーが「売却時の価格をなるべく高くするためにできること」は、「二つ」しかありません

 一つ目は、「市場環境の良い時、すなわち売り手市場のマーケットの中で売却すること」、二つ目は「インカム(NOI)を落とさない、できれば増やす」ということです。

 

 前者については、売却時期を売主が選択できること、つまり「売らなければならない状況に追い込まれないこと」が大切です。

 これを実現する方法は、「余裕を持った返済計画」に尽きます。「返済期間をできるだけ長くとって月々の返済額を抑える」「万一、家賃が入らない期間があっても穴埋めできる余裕資金をもっておく」「過度なレバレッジをかけない」等が具体的な対策です。

 

 誤解しないでいただきたいのは、30年とか35年のローンであっても、常に「今、売却したらどうか」を想定しておくことです。

 不動産投資ファンドの投資期間は、通常は数年です。「売却」ついては、ある意味「常にアイドリング状態」で、運用期間の「出口」のタイミングをにらみつつ、よい売却先を探します。インカムゲインとキャピタルゲインをうまく組み合わせて、つまり、「利益確定」を何度か繰り返して、効率的な運用を目指します。

※注 売却を上手に活用する投資法のイメージは「不動産投資編 第7回 「安心老後」への道~ロードマップ」をご参照下さい

 

 結果的に20年、30年保有することになったとしても、それは、少なくとも数年ピッチでの「出口戦略」の見直しの結果であるべきだと考えます。

 

 そして、後者に関しては、物件が「賃借人からみて魅力的な状態を維持する」ことに尽きるでしょう。具体的には、「誠実で力のある管理会社を選ぶ」「原状回復のみならずバリューアップのための投資を行う」そして「良質なテナントを選ぶ」等です。

 「賃料水準」と「稼働率」を維持、向上させる努力、そして、無駄な「支出」を削減することについて、注意を払っておくことが大切です。

 

 売却価格は、年間のNOIの15倍から25倍にもなります。

 「NOI利回り5%」で売却できる物件であれば、増額したNOIの20倍が、売却金額の上乗せ分になります。たとえば、1年間のNOIが50万円増えれば1,000万円高く売れるということになります。そう思えば頑張りがいがありますね。