みぞおちがつまる。
けっこう頻繁に起こる異常感の一つです。
詰まった感じで苦しい。むかむかする。痛い。胸焼けがする。
もしかしたら「胃が悪いのか?」といった感じのものから、
不安感がある。絞られるような感じがする。どきどきする。
といった「心臓が悪いのか?」と思うようなものまで。
病院で検査。どちらも異常なし。でも症状はよくならない。
最近多い症状です。
なぜ、こういった症状が起こるのでしょうか。
その原因を探っていきましょう。
そうです。原因がわかれば解決法がわかります。
「みぞおち」といわれる部分の内側を見てみましょう。
そこには「横隔膜」という膜があります。
横隔膜は胸部と腹部を分ける横の膜です。薄い筋肉の層が、布を織るように横に広がっています。
横隔膜で仕訳された上は肺や心臓、下には胃や腸が収まっています。
布の束と束の間を胃へとつながる食道や、心臓へとつながる大動脈、大静脈が通っています。
さて、この横隔膜は筋肉でできていますから、他の筋肉と同じように緊張してたり、弛緩したりします。
横隔膜の緊張と弛緩とはどんな感じなのか。
横隔膜を傘の布と考えてください。
傘を開くと布はピンと張られて引っ張られます。これが「横隔膜の緊張」です
傘を閉じると布は緩んだ状態になります。これが「横隔膜のゆるみ(弛緩)」です。
健康な体を維持するためには、筋肉が緊張と弛緩を上手に繰り返すことが大切です。
手足の筋肉はもちろんのこと、心臓や腸のような内臓の筋肉、
そして、横隔膜の緊張と弛緩は呼吸運動にぜったい必要な運動です。
横隔膜が引っ張られ(傘が開いた状態)胸郭が広がると、肺の中に空気が入ってきます。
横隔膜が緩んで(傘を閉じた状態)胸郭が小さくなって肺の空気は外に吐き出されます。
さて、みぞおちがつまっているとはどんな状態か。
横隔膜が常に引っ張られて、傘が開いた状態でゆるまない状態をになっているのです。
その結果
1、呼吸は息が吐ききれず、吐ききれないから新しい空気が十分に入れないために、息苦しくなります。
2、横隔膜の緊張のため、間を通る食道が常に締まってしまいます。
胃の運動に伴って上がってきた胃酸が胃の方へ戻ることができにくいために、
逆流性胃炎を起こして、胸焼けの原因になります。
3、横隔膜の間を通る太い血管が締め付けられ、下半身への血流、下半身からの環流が阻害されます。
なぜ横隔膜は引っ張られたまま、緩まないのでしょうか。
一番の原因は姿勢です。
「いいえ、私は昔から姿勢はいいと言われています」
胸を張って、背中をピン!
一見美しい姿勢です。でも、そこに横隔膜が緩まない原因があります。
胸を張れば、横隔膜は引っ張られます。
胃が痛いとき、胸を張りますか?胃を押さえて背中を丸めますよね。
そうです、その姿勢が横隔膜を緩める姿勢なのです。
さらに、横隔膜が緩まないもっとも大きな原因は、骨盤の前傾です。
骨盤が前傾すると、上半身が前に倒れます。前につんのめらないために、
上胸部と肩を起こして後方に引き上げます。
胸を後に引いているために、首(頭部)は前に倒してバランスを取ります。
背骨はS字のカーブを描き美しい立ち姿に見えますが、
これが横隔膜を常に引っ張る形なのです。
胸の詰まり感を解決する方法
1、骨盤を立てること。
骨盤を前傾させないことです。重量挙げ選手の立ち姿を見てください。骨盤も背骨も首もまっすぐに立っています。「無理なく立つ」姿の理想型です。自分自身の体重を無理なく支えることができなければ、重い重量を持ち上げることはできません。
骨盤を立てることで、横隔膜の運動が楽にできるようになります。
2、横隔膜が緩む形を取ること。
みぞおちを押さえて思い切り息を吐いてください。これ以上吐けないところまで吐ききりましょう。それが横隔膜の一番緩んだ状態です。
思い切り吐ききることができれば、新鮮な空気を大きく吸い込むことができます。息苦しいのは、息が吸えないのではなく、吐けないために新しい空気が入れないのが原因です。
3、ここからは、ちょっとコマーシャル。
正しい姿勢がなぜ出来ないのかをチェックすることも大切です。正しい姿勢に対する間違った先入観もあります。子供の頃、体育の時間に「きをつけ!」の号令で胸を張った覚えのある方は多いはず。
背中を反らし、胸を張る。この姿勢がもたらす弊害は非常に多いのです。
どう間違っているのかを自己確認するのは難しいものです。
そこで無為の会が始めたのが、「立ち方勉強会」です。
写真に撮って確認しながら、自分の姿勢の問題点を改善してゆこうという試みです。
「胸の詰まり感」の解決法の三番目は、無為の会の操法と立ち方勉強会ということになりますね。