【文字起こし】八丈島STYLE 八丈島民インタビュー⑦(後編) | らいむの“ひょっこり八丈島”

らいむの“ひょっこり八丈島”

八丈島への「入口の入口」になれば、と始めてみました。

島のこと、島暮らしのことなど、書いていこうと思います。

#7 ヤマサ水産 長田商店 長田隆弘さん(後編)

 

 

 

●発酵食品の大切さが見直されていますが、くさやはどのくらい召し上がっていますか?

くさやはね、製造した時には必ず食べるでしょう。やっぱりくさやって、くさや菌自身も気候や天候などの影響を受けますし、湿度もそうですし、同じ状態ではないんですね。もちろん魚も成長していくんで、同じサイズの原料を同じ時期に製造するわけでもないので、製造したら、味見のために焼いて食べるんですよ。そんな中ですからもう、くさやを食べるというのは当たり前の生活になっているので、よくウチの子どもたちは保育園の時から、今日のくさやは甘いだの辛いだのって言うんですよ(笑)それぐらい、味の変わりやすいところもあるし、それぐらい家族でも食べてるというのが、くさや屋の日常なんですね。で、くさや自身は実は、抗生物質ヤード(※)とかも、大学の先生から学生さんに調べてもらって、実際に、化学的に、(伊豆)大島・新島とは違う、(天然の)抗生物質菌がある、一応八丈島にもあるんだって(というよりウチのくさや)、調べてもらっている最中で、きっとその、身体にとっても、いいものがあるんだろうと、そこをもっともっと今、具体的にこの菌が体に作用しているんだよというのを、今、大学院のかたに調べてもらっているところなんで、もう少ししたら、もっと具体的に、そのことは紹介できるようになると思います。

 

※長田商店さんによる、くさや液の解説。

 

 

●食生活を教えてください。毎日どんなものを食べていますか?

私、実は、食べ物はほとんど妻に出されたものをそのまま食べるんです(笑)自営業なんで、もう正直言って、ウチでは物々交換の世界なんで、畑(をやってる)人が大根を持ってきた。じゃあくさやを持ってきてやれ!そういう生活なんでね。旬のものがいつも食卓に並ぶというような形なんで、それに対して、昔、若い頃でしたら好き嫌いもあったんですけど、今はもう、どちらかというと、妻に感謝で(笑)出されたものは黙って食べる(笑)その中で“あ、おいしいね”というぐらいですけれども、ただやっぱり、基本的には、インスタント食品というよりは、島の旬のものをいつも口にしている、というのが。

 

●八丈島への移住希望者が増えています。長田さんにとって島暮らしはいかがですか?

私自身は、(島を出てからが)静岡、北海道だったんで、東京の暮らしではないんですね。だから都会暮らしではどう、とか言えないんですけども、北海道の暮らしを経験して、島に帰ってきた時には、まず、雪かきがないと(笑)これは正直言ってね、ある意味では快適だったんですね。雪のない生活というのはそんなに心配いらないんで。暖かいですし。夏場もそんなに暑いわけではありませんし、ただ風と台風には、うちの妻は北海道なんですけど、(八丈島は)やはり苦労したみたいで、この湿度の高さ、それから台風の強さ。ただ私にしてみれば、もともと島暮らしなんで、子どもの頃に経験した台風に比べれば、ここ数年の台風は八丈にとってはそんなに大きくないんで、そういう意味では暮らすには、そんなに嫌な思いはないですよね。ただ、Iターンのかたとか、(私もアイランダー(※)に参加していて、)私と知り合ったことがきっかけで島に移住した子たちもいるんで、その子たちに私が気をつけていることは、やっぱり、島民として関わってあげる。Iターンの方たちをそのまま島で、いい暮らしだね、で終わらせるんじゃなくて、島民として、いろんなことに関わってもらって、例えば、パブリックロードレースに一緒に参加してもらうだとか、そんな行事に参加してもらいながら、島を楽しんでもらいようには心掛けているんで、是非やっぱり、島に来られたら、島の暮らしを楽しむだけじゃなくて、島の人と関わることによって、より長く楽しめるんじゃないかな、という風な気はしています。

 

※アイランダー…日本離島センターが主催する、全国の離島を紹介するイベント。毎年池袋で開催されている。移住希望者向けのブースもある

 

 

 

●長田さんの趣味や日常の楽しみはどんなことですか?

私、実はほとんど加工場から出ないんですよ。父が私のために増築してお店を作ったもんで(笑)そこでお店回してるもんでね。ほとんど外に出なくて、先ほど言ったように、食品衛生協会などの関わりの時とかは外に出るんですけど、ほとんど家にいるので。今は妻が、東京マラソンの出場権を持っているので、それに付き添って、夜お店を6時に閉めてから1時間ほど走るのが、唯一、日常の中では気が抜ける場とか、そんな形ですね(笑)

 

●長田商店は定休日なし。お正月も営業だそうですね?

(はたから見ると)大変かと思うんですけど、実は私もともと生き物飼ってるんで。例えば北海道で100万個のアワビを飼うとなると、休みはないんですよ。で、田舎でしたから、機械が壊れても、札幌や旭川から業者が来るっていっても時間がかかるわけですよ。冬道で雪道だと余計かかるわけです。そうなってくると、できるようになってなきゃいけないわけですよ。干物の管理から、機械の管理から。そういうことを考えていくと、ある意味くさや屋ってラクなんですよ。夜中の1時2時に起きる(と言う)と、学校の子どもたちは“大変な仕事ですね”とかって言うんですけど、生き物を飼ってると、それこそ24時間どころか、ちょっとでも目を離したら魚たちはしんでいきますし。ある意味そこを比較しちゃうと大変ではないですね。ましてや自宅は加工場の隣なんで(通勤も)全然苦も無く。ただあと、この時代、パソコンがありますので、そのパソコンの中で関わって、これまでやってきたんで、自分の中でその、今日1日ブログで。そこで何を書こうかなって考えたときに、何かをやんなきゃいけないな、とか思いながら、やっていくと、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

 

 

●長田さんから何かPRしたいことがあればどうぞ

2つありまして、ひとつは、今、八丈島の水産加工自身が大変厳しい状況で、4年前から加工組合自身が何かをしなければならない、ということで、「くさやみそ」という商品を作ったんですね。たまたまウチのほうで去年(2020年)から販売しているんですけれども、その部分で、なぜくさやみそを作ったのかというと、やはり、(くさやを)焼ける環境が少なくなってきたということで、なんとかもっと、くさやを広める方法はないかということで、加工組合みんなで考えた商品なんですね。、もっと手軽に食べられる商品を作れないかということで、レッテル(ラベル)から何から、加工組合みんなで決めた商品なんですよ。もちろん中身のレシピも含めてなんですけど。アンケート取ってもものすごく評判が良かったんで。これを入口として、くさやを知ってもらう。で、その中でもし、気に入っていただければ、さらにステップアップして、自分で(くさやを)焼いて食べていただこうという形で、今、この商品のセールスに尽力しているというのが1点。

 

 

八丈島水産加工業協同組合さんの動画。

 

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くさや味噌

 

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もう1点は、実は、(インタビューの)3日ほど前に届いたものでしたかね、東京の子どもたちがくさやの授業をしてくれて、(感想を)私のところに届けてくれたんです。この時は、先生がわざわざうちに来てくれて、私は製造で忙しくて来れなかったんですですけれども、“長田さんどうしても時間取ってくれませんかね!?”というお客さんで、それだったら1時間だけと思って会ってみたら、学校の先生だったということで。そのかたが一生懸命私の思いを、授業で続けてくれたんですね。その中で、“くさやの液とかも分けてくれませんか?”ということで、学校に送ったりとかしたんですけども。子どもたち(の感想)がすごいんです。“くさやがめちゃ臭くて涙が出てきました”っていうぐらい。子どもたちが東京で、八丈島の香りを体験してくれた。こういう体験をもっともっと広めていきたいということで、考えていますので。もし東京に限らず、日本全国で、先生方がもし(このインタビューを)目にしてくれているんであれば、こんな形でくさやを取り扱ってくれたら嬉しいな、という風に感じております。

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この2点、これからもどうぞよろしくお願いします。

ありがとうございました!

 

 

この動画を紹介する、スーパーあさぬまのブログ記事。ご紹介いだたいた、くさや味噌のレシピもあります。

 

 

インタビュー動画。リンク先などはこちらの動画説明欄から。 

 

 

(あとがき)

実はこの、八丈島STYLEの島民インタビューの文字起こしはずっとやってみたいと思っていて、「やる!」と決めたのが、この長田さんのインタビューでした。この話はどんな形であれ、たくさんの人に見てほしい!という勝手な使命感と、私が初めて食べたくさやが長田商店さんのものだったりしたので、その勝手な恩返しですね。

彼に限らず、島にはバイタリティーのある方がとても多いと感じるのですが、彼は別格ですね。島を語る上で名前が挙がる人のひとり、と言っても過言ではないと思います。富士中(三根地区の中学校)に限らず、ほかの中学校でも活動をしてほしいと、個人的には思っています。

 

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