【2607】不二製油グループ本社/米ブラマーの構造改革が進展、カカオ高騰の転嫁で通期一段増へ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2607】不二製油グループ本社(東証プライム)  OP

 

現在値 3,057円/100株  P/E 26.8  P/B 1.10 3月配当 9月配当優待

 

油脂大手。油脂加工品や大豆タンパク関連も展開。19年に米国大手ブラマーを買収。

配当金(実績)は3月末・9月末の年2回計52円で、配当利回りは約1.70%となります。

 

不二製油グループ本社は株主優待を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して1,500円相当の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.19%となります。

 

業績を確認します。

■2022年3月期 売上高 4,338億円、営業利益 150億円 EPS 133.8円 

■2023年3月期 売上高 5,574億円、営業利益 109億円 EPS 71.3円 

■2024年3月期 売上高 5,640億円、営業利益 182億円 EPS 75.9円 

■2025年3月期 売上高 6,000億円、営業利益 200億円 EPS 116.3円 ce

□2024年6月1Q 売上高 1,523億円、営業利益 74.4億円 EPS 54.3円(8/9)

□2024年9月2Q 売上高 3,150億円、営業利益 90億円 EPS 46.5円 ce修正(8/9)

 

2024年3月期の売上高はYoY+1.2%の5,640億円、営業利益はYoY+66.5%の182億円となり、対前・対計画で増収増益となりました。売上高は主力の植物性油脂の原料であるパーム油の仕入価格の高騰一巡で販価が低下した一方、業務用チョコのカカオ価格の転嫁や円安寄与で増収となりました。利益面については、米国の業務用チョコが需要低迷・原価高騰で苦戦したものの、植物性油脂の原材料価格安定化が効き、大幅増益を確保しました。

 

進行期である2025年3月期の予算は、売上高がYoY+6.4%の6,000億円、営業利益はYoY+9.8%の200億円を見込んでいます。業務用チョコは米・ブラマー社のシカゴ工場閉鎖による数量減があるものの、カカオ価格高騰の転嫁が進むほか、同様に植物性油脂事業のチョコレート油脂も堅調な展開が見込まれます。利益面もこの転嫁進捗による採算性改善のほか、不採算のシカゴ工場閉鎖による良化分が寄与します。8月9日に公表済の1Qは売上高1,523億円&営業益74.4億円と好進捗しており、通期上振れが濃厚な情勢です。

 

当社は2031年3月期を終期とする長期計画で、最終的にROE10%&ROIC8%を目指すとともに、計画期間の9年間を“Ⅰ期_体制構築”→“Ⅱ期_成長軌道化”→“Ⅲ期_高収益化”に期分けしています。序盤の3ヵ年にあたるⅠ期目(~2025年3月期)で営業利益を150億円から235億円に引き上げる計画ですが、進行期予算に照らせば未達(▲35億円)となるものの、上述のとおり強含みのため、達成も視野に入る状況です。中計の注力事項としては、①事業基盤強化、②グローバル管理強化、③サステナ強化の3点を挙げられています。

 

①は2019年に637億円を投じて米ブラマーを買収し、スイス・カレボーや米カーギルに次いで業務用チョコ大手業界の世界3位となったものの、原材料価格の急騰や米国での人材不足・習熟度低下により収益性が急低下しています。目下もカカオ価格急騰で先物評価損が発生しているものの、シカゴ工場の完全閉鎖や評価損のタイムラグ解消等による効果が本格発現するのは今下期以降のため、底入れ確認待ちという状況です。

 

②の管理強化はROICによる指標管理(想定WACC5%)とし、不採算事業の整理に取り組みます。中国のマーガリン事業、東南アジアの乳化発酵事業に低採算品が含まれることから、これらの縮小・撤退等の再構築を進め、伸びシロの大きい米州チョコレート事業に経営資源を集中させるほか、需要増の期待されるブラジルで新工場を稼働開始させています。

 

他方、株主還元に関しては据置の年52円配(配当性向44.7%)を予想しています。今次中計期間の還元方針は配当性向30~40%を目途としているものの、自己資本比率は50%弱&D/Eレシオ改善の改善も顕著なため、増配も視野に入るものとみています。

 

*参考記事① 2022-08-09 2,200円 OP

【2607】不二製油グループ本社/パーム油など原価高騰の価格転嫁の進捗を確認したい。

 

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