【2607】不二製油グループ本社/パーム油など原価高騰の価格転嫁の進捗を確認したい。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

image

【2607】不二製油グループ本社(東証プライム)  OP

 

現在値 2,200円/100株  P/E 18.0  P/B 0.92 3月配当 9月配当優待

 

油脂大手。油脂加工品や大豆タンパク関連も展開。15年にブラジルのチョコ社買収。

配当金(実績)は3月末・9月末の年2回計52円で、配当利回りは約2.36%となります。

 

不二製油グループ本社は株主優待を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して1,500円相当の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.04%となります。

 

業績を確認します。企業会計基準第29号(新収益)の適用があります。

■2020年3月期 売上高 4,147億円、営業利益 235億円 EPS 190.5円  

■2021年3月期 売上高 3,647億円、営業利益 179億円 EPS 128.1円

■2022年3月期 売上高 4,338億円、営業利益 150億円 EPS 133.8円 新収益 

■2023年3月期 売上高 4,800億円、営業利益 165億円 EPS 122.1円 ce新収益

□2022年6月1Q 売上高 1,279億円、営業利益 23億円 EPS 21.6円(8/4)

□2022年9月2Q 売上高 2,300億円、営業利益 70億円 EPS 51.1円 ce

 

2022年3月期の売上高はYoY+18.9%の4,338億円、営業利益はYoY▲16.2%の150億円となり、期初予算を大きく下回って着地しました。売上高は原材料価格高騰による価格転嫁や新型肺炎禍の一巡による数量増で2桁増収を確保しました。一方の利益面については、米国油脂事業における新工場の天災被害のほか、パーム油の価格が前年の倍になど、乳化・発酵事業や大豆加工事業の原材料価格高騰が響き、逆に2桁の減益となりました。

 

進行期である2023年2月期の予算は、売上高がYoY+10.6%の4,800億円、営業利益はYoY+9.9%の165億円を見込んでいます。植物性油脂事業における米州ニューオリンズ新工場の通期稼働効果による数量増を見込むほか、業務用チョコレート事業、乳化・発行事業も終わった期で実施した値上げの通期寄与と、更なる期中値上げを織り込んで2桁の伸びを見込みます。利益面については、原材料価格・エネルギーコストの上昇をトップライン伸長で相殺するとともに、不調の傘下ブラマー社の回復を見込み、売上と同程度の伸びを確保する計画です。

 

今般当社は2031年3月期を最終年度とする長期ビジョンを公表しており、最終的な定量目標としてROE10%とROIC8%を掲げるとともに、向こう9年間を3段階に期分けし、“Ⅰ期_体制構築”→“Ⅱ期_成長軌道化”→“Ⅲ期_高収益化”と段階進捗させる計画です。そして序盤の3年にあたるⅠ期目については、2025年3月期までに営業利益を150億円→235億円、ROEを6.6%→8.0%、ROICを3.1%→5.0%に其々引き上げる計画であり、注力事項として、①事業基盤強化、②グローバル管理強化、③サステナ強化の3点を挙げています。

 

①については、2019年に637億円もの巨費を投じて米ブラマーを買収し、スイス・カレボーや米カーギルに次いで業務用チョコレート大手業界の世界3位につけたものの、原材料価格の急騰や米国での人材不足・習熟度低下により同社収益性が急悪化しています。そのため工場毎の利益責任制に切り替えるとともに、本中計期間では値上げと採用強化、設備更新に取り組むとともに、進行期で初の黒字化(10億円、のれん償却費年▲33億円控除後)を見込みます。

 

②の管理強化については、ROICによる指標管理(本中計の想定WACCは5%)とし、不採算事業の整理に取り組みます。中国のマーガリン事業、東南アジアの乳化発酵事業に低採算品が含まれることから、これらの縮小・撤退等の再構築を進め、伸びシロの大きい米州チョコレート事業に経営資源を集中させます。尤も、米州はインフレによるコスト増に価格転嫁が全く追い付いていない状況のため、経営にかなりのスピード感が感じられるようにならない限り、中計の達成可視性は低いものと考えています。

 

他方、株主還元に関しては据置の年52円配(配当性向42.6%)を予想しています。今次中計期間の還元方針は配当性向30~40%のため概ねレンジ内ですが、自己資本比率43.2%水準ながらD/Eレシオ改善も志向しているため、配当は当面据置~微増配の公算が高いものとみています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村