【5711】三菱マテリアル/懸案のセメント事業を宇部興産との持分適用化に、予算保守的で復元配も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5711】三菱マテリアル(東証プライム) OP

現在値  1,984円/100株 P/E 12.9  P/B 0.44 3月配当優待 9月配当優待

非鉄総合首位。銅加工、電子材料、超硬工具、鉱山出資など多面展開。
配当は3月末・9月末の年2回合計50円のため、配当利回りは約2.52%となります。

三菱マテリアルは株主優待を導入しており、3月末・9月末の単元株主に対して、金地金購入・売却時に1g当たり5円優待や、グループ会社が運営する観光坑道の入場無料券を進呈しています。

 

業績を確認していきます。 

■2019年3月期 売上高 16,629億円、経常利益 506億円 EPS 9.9円  

■2020年3月期 売上高 15,161億円、経常利益 496億円 EPS▲556.3円  

■2021年3月期 売上高 14,851億円、経常利益 445億円 EPS 186.7円 

■2022年3月期 売上高 18,117億円、経常利益 760億円 EPS 344.6円 

■2023年3月期 売上高 15,900億円、経常利益 360億円 EPS 153.08円 ce

□2022年9月2Q 売上高 7,500億円、経常利益 170億円 EPS 72.7円 四e


2022年3月期の売上高はYoY+22.0%の18,117億円、経常利益はYoY+70.9%の760億円で着地し、中間での増額見通しを上回って着地しました。金属事業が銅鉱山配当及び持分取込利益が増加したほか、加工事業・銅加工事業では自動車生産台数の回復により増益、電子材料事業も半導体市況好調で好採算品が伸長しました。他方、セメント事業については、災害復旧工事の減少やエネルギーコストの上昇により大幅減益となったほか、アルミ事業もアルミ缶原料の地金高騰による影響で減益となりました。

 

2023年3月期の予算については、売上高がYoY▲12.2%の15,900億円、経常利益はYoY▲52.7%の360億円と減収減益を見込んでいます。金属事業が銅鉱山の減配、加工事業・銅加工事業では自動車生産台数の横ばい想定も先行投資とエネルギーコスト増で減益を見込み、電子材料事業も多結晶シリコンの値上げを織り込むものの、こちらもコスト増が圧迫します。他方、セメント事業については、宇部興産との合弁会社移管(※後述)により持分法適用に落とすほか、アルミ事業も外部売却し撤退しています。ただ、1Qの金属市況を鑑みれば会社予算はかなり保守的であり、上振れ圏にあるとみています。


進行期は3年中計の最終年度ですが、1年前に新型肺炎禍を受け途中減額しており、修正後計画では売上高を15,161億円→14,100億円(当初目標は15,300億円)、経常利益を496億円→380億円(当初目標は750億円)へマイナス成長計画に置き直しています。好調な伸銅品や超硬工具、半導体関連の電子材料、リサイクル関連に経営資源を集中する一方、不採算事業の一層のリストラを推進し、事業再構築を進めているような状況です。

 

注力予定の伸銅品は買収したLuvata社や吸収合併した三菱伸銅を中心に、xEV向け比率を向上させるほか、超硬工具はEV化で自動車向け後退も、航空機や医療機器向けを伸ばす計画です。また、金属事業については所謂“都市鉱山”であるE-scrapの推進による白金族の回収により、ESGと採算性の向上を図ります。一級銅鉱山で当社の海外鉱山配当金収入の核となるチリ・Los Pelambres鉱山が渇水影響で大幅な減産を強いられているものの、海水をパイプラインで送る工事を実施しているほか、新たにチリ北部のMantoverde鉱山への出資も決定しており、銅鉱山の配当維持・確保に動いています。

 

他方、国内需要の減少に歯止めがかからないセメント事業については、本年4月に宇部興産との折半出資の合弁会社に移管し、持分法適用に落としています。両社は既にセメントの販売・物流機能を1998年に宇部三菱セメントとして統合していましたが、生産機能統合は折り合わず、今回のタイミングで完全統合となりました。本件取組により、売上高6,000億円規模となり、首位の太平洋セメントに次ぐ業界2位となるものの、石炭等のエネルギーコスト上昇による採算性悪化が急速に進んでいるため、早期の価格転嫁が待たれます。

 

株主還元については、今次中計では当初年80円の配当をフロアで見込んでいたものの、実態の悪化もあり、年50円をフロアに修正しています。目下の予想配当は株式売却による特別配当のあった前の期から40円減配の年50円を予想していますが、経営側は年80円水準の維持を念頭に置いている旨のアナウンスをしていることから、一過性利益の顕在化による穴埋めが期待されます。

 

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