【9142】九州旅客鉄道 /足許では定期収入も復調、減価償却費の総括原価方式算入にも期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9142】九州旅客鉄道 (東証プライム) OP

 

現在値 3,537円/100株 P/E 13.6  P/B 1.27  3月配当優待 9月優待

 

JR九州。新幹線運営、在来線は観光列車に強み。多角化推進し、不動産や流通も。

配当は3月一括の年93円予想のため、配当利回りは約2.63%となります。

 

JR九州は鉄道は株主優待制度を導入しており、3月末の単元株主に電車全線乗車証(1日乗り放題)を1枚進呈しているほか、グループ各社で使える2,500円相当の各種割引券を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚3,000円で換算した場合の配当優待利回りは約4.18%となります。

 

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 2,939億円、営業利益▲228億円、EPS▲120.8円 

■2022年3月期 売上高 3,295億円、営業利益 39.4億円、EPS 84.3円 

■2023年3月期 売上高 3,832億円、営業利益 343億円、EPS 198.4円 

■2024年3月期 売上高 4,170億円、営業利益 457億円、EPS 259.0円 ce

□2023年9月2Q 売上高 1,907億円、営業利益 268億円、EPS 178.1円 

□2023年12月3Q 売上高 2,929億円、営業利益 431億円、EPS 259.1円(2/6)

 

2023年9月中間期の売上高はYoY+12.1%の1,907億円、営業利益はYoY*2.4倍の268億円となり、予算比はないものの2桁の増収増益となりました。主力の運輸事業は定期YoY103.7%&定期外同118.5%となり、なお平時比以下ながらも訪日客増加で定期外が顕著に回復しました。不動産事業も主要既存駅ビルのテナント売上回復で商業施設賃収が回復したほか、ホテルも単価・稼働両面上値追いとなりました。利益面については、電気代想定以下で鉄道事業の動力費抑制が寄与しました。

 

なお2024年3月期の通期見通しは期初のものを据え置いており、売上高はYoY+8.8%の4,170億円、営業利益はYoY+33.1%の457億円を予想しています。運輸事業は訪日客向けパスの値上げ等も寄与し、平時比で定期90%&定期外95%の前提を上回って推移しているほか、不動産事業についても賃貸売上は同100%水準、売買ではマンション分譲の増加のほか、私募REITと外部への売却が進みます。なお2月6日開示済の3Qは、売上高2,929億円&営業益431億円と既に超過圏で推移しており、鉄道事業の修繕費増あれど上振れ公算が高い状況です。

 

当社は2022年3月に長計と中計を公表しており、長計最終年度(2031年3月期)に売上高6,000億円&営業利益700億円の達成を長期目標とする一方、翌2025年3月期までの3ヵ年中計で売上高を3,328億円→4,400億円に、営業利益を27億円→570億円に引き上げる目標を掲げています。向こう3年の取組方針としては、①事業構造改革、➁まちづくり創造、③新領域開拓の3点を掲げており、計画期間の投資枠として3,400億円を設定しています。

 

①は運輸事業でのマルチタスク化やダイヤ見直しによる効率化といった所謂BPR施策で、目標としていた年▲140億円の固定費削減を完遂しているほか、動力費も想定以下で推移しており、順調な進捗が確認されます。➁は2022年9月の西九州新幹線(長崎~武雄温泉)開業による増収効果が見込まれるほか、佐賀駅高架下改装や新長崎駅ビル・マリオットホテルを相次いで開業させており、引き続き西九州域での開発を推進します。

 

また博多・天神で再開発の進む福岡域では、七隈線の延伸効果を鑑み、物流施設を相次いで取得したほか、簀子小学校跡地再開発事業(JV)や福岡東総合庁舎敷地有活事業(JV代表)で投資を進めます。③の新領域はJR九州建設HDを設立し、傘下の設計・建築・土木・設備事業会社でのPFI等の共同受注や購買の共通化、DX推進など営業・コスト削減の両面で効率化を図ります。これら3点の取組みは概ね計画通り進捗しており、戻りが鈍かった鉄道定期収入にも回復が見られるだけでなく、運賃制度見直し(減価償却費の総括原価算入)による上乗せも見込まれることから、中計達成の蓋然性は相応に高まっているものと解されます。

 

財務状況については、自己資本比率は41.1%と健全な水準を維持しています。ただ当社はJR他社との比較で不動産事業の割合が高いほか、鉄道事業の設備投資にも相応の資金需要が存在していることから、私募REIT等の活用により引き続き財務改善を図る方針としています。そのため配当については、年93円配(配当性向35.9%)予想を横引いており、増配には時間が要する見通しです。

 

*参考記事① 2023-09-15  3,207円 OP

【9142】九州旅客鉄道/柱の不動産業を中心に順調に回復も、中計達成はややハードルが高い。

 

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