【9142】九州旅客鉄道/柱の不動産業を中心に順調に回復も、中計達成はややハードルが高い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9142】九州旅客鉄道 (東証プライム) OP

 

現在値 3,207円/100株 P/E 12.3  P/B 1.22  3月配当優待 9月優待

 

JR九州。新幹線運営、在来線は観光列車に強み。多角化推進し、不動産や流通も。

配当は3月一括の年93円予想のため、配当利回りは約2.90%となります。

 

JR九州は鉄道は株主優待制度を導入しており、3月末の単元株主に電車全線乗車証(1日乗り放題)を1枚進呈しているほか、グループ各社で使える2,500円相当の各種割引券を進呈しております。そのため、全線乗車証を1枚3,000円で換算した場合の配当優待利回りは約3.83%となります。

 

業績を確認していきます。

■2021年3月期 売上高 2,939億円、営業利益▲228億円、EPS▲120.8円 

■2022年3月期 売上高 3,295億円、営業利益 39.4億円、EPS 84.3円 

■2023年3月期 売上高 3,832億円、営業利益 343億円、EPS 198.4円 

■2024年3月期 売上高 4,170億円、営業利益 457億円、EPS 259.0円 ce

□2023年6月1Q 売上高 979億円、営業利益 134億円、EPS 113.1円(8/8)

□2023年9月2Q 売上高 2,100億円、営業利益 230億円、EPS 152.7円 四e 

 

2023年3月期の売上高はYoY+16.3%の3,432億円、営業利益はYoY*8.7倍の343億円となり、対計画・対予算ともに増収増益となりました。主力の運輸事業は定期YoY103%&定期外同131%となり、平時比では9割以下ながら定期外が顕著に回復したほか、不動産事業についてもオフィス・商業施設・ホテルの稼働率回復に加え、タワー物件や賃貸一棟売りも含むマンション分譲も堅調に推移しました。利益面については、電力代高騰による鉄道事業の動力費増があったものの、全社のトップライン伸長で飲み込んでいます。

 

進行期である2024年3月期の予算は、売上高はYoY+8.8%の4,170億円、営業利益はYoY+33.1%の457億円を予想しています。運輸事業は平時比で定期90%&期外95%まで戻りを見込み、不動産事業についても賃貸売上は同100%水準、売買ではマンション分譲の増加のほか、私募REITや外部売却による上乗せを見込みます。また、ホテル事業も足許のRevPAR回復を織り込むとともに、年明けに長崎マリオットの開業を予定しています。なお8月8日開示済の1Qは、売上高979億円&営業益134億円と計画超過ペースの進捗とみられます。

 

当社は1年前に長計と中計を公表しており、長計最終年度(2031年3月期)に売上高6,000億円&営業利益700億円の達成を長期目標とする一方、手前の2025年3月期までの3ヵ年中計で売上高を3,328億円→4,400億円に、営業利益を27億円→570億円に其々引き上げる目標を掲げています。向こう3年の取組方針としては、①事業構造改革、➁まちづくり創造、③新領域開拓の3点を掲げており、計画期間の投資枠として3,400億円を設定しています。

 

①は運輸事業でのマルチタスク化やダイヤ見直しによる効率化といったBPRを実施する計画です。年▲140億円の固定費削減目標は終わった期で完遂したものの、想定外の動力費増や減損計上反動による償却費増もあり、固定費自体は漸増している状況です。➁は昨年9月の西九州新幹線(長崎~武雄温泉)開業による単純増収効果にくわえ、佐賀駅高架下改装や新長崎駅ビル(オフィス棟含む)と年明けのマリオットホテル開業など西九州域の開発を推進します。

 

また博多・天神で再開発の進む福岡域では、七隈線延伸による博多駅の機能強化を睨み、物流施設を相次いで取得したほか、簀子小学校跡地再開発事業(JV)や福岡東総合庁舎敷地有活事業(JV代表)で投資を進めます。③の新領域は中間持株会社としてJR九州建設HDを昨年9月に設立し、傘下の設計・建築・土木・設備事業会社でのPFI等の共同受注や購買の共通化、DX推進など営業・コスト削減の両面で効率化を図る方針です。これら3点の取組みは概ね計画通り推進されているとみられますが、定期外収入の戻りの鈍さや各種コスト増が重しとなり、計数目標達成の蓋然性は高いとは言えない状況です。

 

財務状況については、自己資本比率は40.7%と一定水準を維持しています。然しながら当社は、不動産事業の割合が高いだけでなく、鉄道事業の設備投資にも資金需要が存在し、今次中計では3,400億円もの投資を予定していることから、私募REIT等の活用により財務改善を図る方針としています。そのため配当については、年93円配予想を横引いているものの、既に“出し過ぎ”の状態にあると解され、増配は期待薄と考えられます。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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