【9602】東宝/アニメは想定超の事業進捗がみられるが、翌期の配給パイプラインが弱い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9602】東宝(東証プライム) OP

現在値  4,823円/100株  P/E 23.3  P/B 1.92  2月配当株主優待 8月配当株主優待

阪急系。発祥は映画興行。邦画配給、興行収入で断トツ。映画跡地利用の不動産事業も。
配当は年2回・合計60円配当のため、配当利回りは約1.24%となります。


東宝は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末の単元株主に対して、年2回2,000円相当の映画観賞券を進呈していますので、配当優待利回りは約2.07%となります。

 

■2021年2月期 売上高 1,919億円、営業利益 241億円 EPS 82.5円

■2022年2月期 売上高 2,283億円、営業利益 427億円 EPS 167.2円  

■2023年2月期 売上高 2,442億円、営業利益 448億円 EPS 190.3円

■2024年2月期 売上高 2,700億円、営業利益 500億円 EPS 206.2円 ce修正(10/11) 

□2023年8月2Q 売上高 1,396億円、営業利益 307億円 EPS 124.5円

□2023年11月3Q 売上高 2,031億円、営業利益 416億円 EPS 162.6円(1/15)

 

2023年8月中間期の売上高はYoY+16.0%の1,396億円、営業利益はYoY+18.4%の307億円となり、予算比はないものの増収増益となりました。営業事業は宮﨑駿の“君たちはどう生きるか”の大ヒットにくわえ、“キングダム”“しんちゃん”が寄与したほか、興行事業も上記の自社配給にくわえ、4月のららぽーと門真開業による上乗せがありました。他方、不動産事業については、保有物件の稼働率が99.5%と高水準で推移したものの、傘下スバル興業は好採算道路工事の剥落で減益となりました。


2024年2月期の通期見通しは2Qで再増額しており、売上高がYoY+10.5%の2,700億円(期予:2,530億円)、営業利益はYoY+11.4%の500億円(期予:400億円)に修正しています。営業事業は上述の作品のほか“SPY×FAMILY CW”、“ゴジラ-1.0”が控えているほか、東宝東和配給の“スーパーマリオ”“ミッション・インポッシブル”のヒットも寄与します。興行事業もTOHOシネマズの値上げ効果(2,000円)がほぼ通期影響するほか、不動産事業は昨年2月竣工の日比谷プロムナードビルがフル貢献します。


当社は2022年4月に長計を公表しており、創立100周年となる2032年2月期までの都合10年間で、営業利益750~1,000億円水準への引き上げるとROE8~10%を目指すこととし、重点事項として①成長投資、②人材確保・育成、③アニメを第4の収益源とすること、の3点を挙げています。なお短期軸の中期目標として、翌2025年2月期に最高益更新(営業益528億円)&ROE8%を目標としており、達成確度は興行事業におけるTOHOシネマズの値上げによるプラスと、翌期リリース予定作品のネームの弱さとの“綱引き”となります。

 

①の投資は、向こう3年で延べ1,100億円(コンテンツ:500億円、不動産:500億円、新規シネコン&海外展開:100億円)を投じる計画です。コンテンツの中でも③でも掲げるアニメ育成が最大の注力事項となっており、“呪術廻戦”、“SPY×FAMILY”、“僕らのヒーローアカデミア”、といったアニメIPの取得(制作委員会出資)を推進しています。また足許クールでもTV放映中の“葬送のフリーレン”や“薬屋のひとりごと”にくわえ、MAPPA協業の“ぶっちぎり”の製作を手掛けており、アニメは想定超の進捗がみられます。

 

500億円を投じる不動産事業は、旧東宝不動産物件を中心に約120もの潤沢な物件を抱えているものの、築年数の古い物件が多いことから順次建替・再開発を推進しています。ツインタワービル建替の“日比谷プロムナードビル”が開業したほか、渋谷東宝ビル建替の“渋谷二丁目17地区”が今年竣工予定となっており、建替による最有効使用化と稼働率回復により、全社収益を厚く下支えすることが期待されます。

 

財務については自己資本比率は76.6%と盤石な状態であるほか、政策保有株約500億円にくわえ、賃貸不動産の含み益は4,000億円(推定)を考慮すれば、見かけ以上の好財務体質といえます。一方、株主還元は大変渋い状態が続いていましたが、今次中計では「配当性向30%+機動的な自社株買い」という還元ポリシーが示されただけでなく、1Q時点から20円増配の年60円(金額は横引き、配当性向30%程度)をガイドしており、期末の出来上がりで再増配が見込める状況といえます。

 

*参考記事① 2023-07-21 5,730円 OP

【9602】東宝/宮崎駿・マリオ・コナンなど自社配給作品が絶好調、1Qで通期増額もなお保守的。

 

*参考記事② 2023-01-19  4,810円 OP

【9602】東宝/有力アニメ版権の獲得進むが、今期は“すずめの戸締り”でどこまで。

 

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