【9602】東宝/有力アニメ版権の獲得進むが、今期は“すずめの戸締り”でどこまで。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9602】東宝(東証プライム) OP

現在値 4,810円/100株  P/E 26.5  P/B 2.07  2月配当株主優待 8月配当株主優待

阪急系。発祥は映画興行。邦画配給、興行収入で断トツ。映画跡地利用の不動産事業も。
配当は年2回・合計40円配当のため、配当利回りは約0.83%となります。


東宝は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末の単元株主に対して、年2回1,900円相当の映画観賞券を進呈していますので、配当優待利回りは約1.62%となります。

 

■2020年2月期 売上高 2,627億円、営業利益 528億円 EPS 203.8円

■2021年2月期 売上高 1,919億円、営業利益 241億円 EPS 82.5円

■2022年2月期 売上高 2,283億円、営業利益 427億円 EPS 167.2円  

■2023年2月期 売上高 2,400億円、営業利益 420億円 EPS 181.9円ce修正 

□2022年8月2Q 売上高 1,203億円、営業利益 259億円 EPS 122.2円

□2022年11月3Q 売上高 1,797億円、営業利益 358億円 EPS 154.2円(1/12)

 

2022年8月中間期の売上高はYoY+2.0%の1,203億円、営業利益はYoY+21.1%の259億円となり、予算比は無いものの市場予想を下回りました。営業事業は“トップガン(続編)”、“キングダムⅡ”、“ジュラシック・ワールド”のヒットで大幅増益となったほか、興行事業も他社配給の“ONE PIECE FILM RED(東映)”の牽引で大幅増益となったものの、配給邦画の伸びが想定以下となりました。不動産事業については、物件稼働率の上昇と傘下スバル興業の道路工事好調により増益を確保しています。


なお2023年2月期の通期見通しは中間時点で増額しており、売上高はYoY+5.1%の2,400億円(期予:2,320億円)、営業利益はYoY+5.2%の420億円(期予:380億円)に修正しています。11月11日公開の新海誠監督の最新作“すずめの戸締り”は、“天気の子”や“君の名は”を上回る好調な初動を見せたほか(年末時点で108.5億円)、“ガリレオ 沈黙のパレード”といったネームの強いタイトルを3Qから並べたものの、開示済の3Q決算は売上高1,797億円&営業利益358億円に留まっており、トップラインが弱いだけでなく、光熱費・人件費の増加で利益が圧迫されており、一転して未達リスクが燻っています。


当社は2022年4月に長計を公表しており、創立100周年となる2032年2月期までの都合10年間で、営業利益を750~1,000億円水準まで引き上げるほか、ROE8~10%の達成を目指すこととしています。重点戦略として①成長投資、②人材確保・育成、③アニメを第4の収益源とすること、の3点が挙げられています。また、2025年2月期を最終年度とするマイルストン中計として、営業利益528億円(最高益)の更新、及びROE8%の達成を掲げており、中計期間には宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」やゴジラ新作といったメガタイトルがネームアップされているような状況です。

 

①の投資については、向こう3年で延べ1,100億円(コンテンツ:500億円、不動産:500億円、新規シネコン&海外展開:100億円)を投じる計画です。コンテンツの中でも③でも掲げるアニメ育成が最大注力事項となっており、最近では“呪術廻戦”、“僕らのヒーローアカデミア”、“SPY×FAMILY”に代表されるジャンプ系アニメIPの取得(制作委員会出資)を推進しています。他にも“ハイキュー!!”や“Dr.STONE”のIPも保有しており、翌2024年2月期には待望の“呪術廻戦”の2期の寄与が見込まれます。

 

なお、コンテンツ同様に500億円を投じる不動産事業については、旧東宝不動産物件を中心に約120物件もの潤沢なポートフォリオを有しているものの、築年数の古い物件が多いことから順次建替・再開発を推進しています。今春にツインタワービル建替の“日比谷プロムナードビル”を開業するほか、渋谷東宝ビル建替の“渋谷二丁目17地区”も2024年に竣工予定となっており、建替による最有効使用化と稼働率の回復傾向により、全社収益を厚く下支えすることが期待されます。

 

財務面については、有利子負債がほぼゼロのため、自己資本比率は77.6%と盤石な状態です。また、政策保有株を500億円程有しているだけでなく、潜在化している賃貸不動産の含み益はおよそ4,000億円に上るため、見えがかり以上に好財務体質となります。然しながら、株主還元は物足りない状況であり、配当は5年減配となる年40円配当が予想されています。一応、今次中計では「配当性向30%+機動的な自社株買い」という新たな還元ポリシーが示されているため、期末までに追加還元をしたいと思います。

 

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