【9672】東京都競馬(東証プライム) OP
現在値 4,415円/100株 P/E 14.9 P/B 1.43 6月優待 12月配当優待
大井競馬場の大家。ネット投票「SPAT4」の歩合収入が主力。倉庫やサマーランドも。
配当金は年2回・合計90円配当のため、配当利回りは2.04%となります。
東京都競馬は株主優待制度を実施しており、12月末時点の単元株主に対し、大井競馬場の入場パス、サマーランド招待券等を進呈していますので、26,000円で換算した場合の配当優待利回りは約7.92%となります。
業績を確認していきます。
■2020年12月期 売上高 287億円、営業利益 111億円 EPS 181円
■2021年12月期 売上高 318億円、営業利益 128億円 EPS 320円
■2022年12月期 売上高 354億円、営業利益 141億円 EPS 342円
■2023年12月期 売上高 372億円、営業利益 128億円 EPS 295円 ce
□2023年6月2Q 売上高 174億円、営業利益 63.6億円 EPS 129円
□2023年9月3Q 売上高 279億円、営業利益 104.8億円 EPS 232円(10/31)
2023年6月中間期の売上高はYoY+4.2%の174億円、営業利益はYoY▲9.1%の63.4億円となり、概ね期初予想水準となりました。公営競技事業の大井競馬については、入場者数上限15千人を3月に撤廃したほか、Lデッキの稼働開始やSPAT4の会員増もあり、6月の帝王賞は44億円の売上レコードを叩き出しました。また倉庫事業についても勝島第2地区をはじめ稼働が順調に推移したものの、遊園地事業はプール等の耐震工事長期化による休園期間の延長により減収減益となりました。
なお2023年12月期の通期見通しは期初のものを据え置いており、売上高はYoY+5.0%の372億円、営業利益はYoY▲9.2%の128億円を見込んでいます。公営競技事業の大井競馬は有観客競馬の巡行化による歩合賃料の堅調な推移のほか、SPATも会員増と他主催者からの関連業務受託増が収益を押し上げます。他方で利益面については、前期実施のSPAT4システム更新による償却負担増や委託費用増(▲13億円)が重しとなります。10月31日開示済の3Q決算は、売上高279.6億円&営業益104.8億円とインライン進捗が確認されます。
進行期は2025年12月期を最終年度とする中計の3年度目であり、売上高を287億円→400億円に、営業利益を111億円→150億円に引き上げる計画であり、向こう5年間で設備投資に500億円(公営競技:300億円、倉庫事業:140億円、遊園地:40億円ほか)を投じます。空前の競馬ブームが持続する前提のほか、進行期予算は一過性費用増で数字が押し下げられていることを考慮すれば、今のところ計画線の進捗と解されます。
主力の公営競技は“ウマ娘”のヒット等による若年層開拓で、地方競馬売上(全場)の年間売上は2022年についに1兆円を突破したものの、“巣ごもり”によるネット投票特需の一巡もあり、今年は高位横ばい状態となっています。売上構成比9割以上を占めるネット投票の中でも最大の投票システムSPAT4の第5次更新を終えたものの、売上増に直結するような性質の投資ではなく、現状では減価償却の負担増が重しとなっている状況です。
倉庫事業については、傘下の東京倉庫が2021年に習志野市で物流素地6.7千坪を60億円で取得し、2024年3月の竣工・賃貸開始(TS茜浜Ⅱ)を予定しており、既に大手物流企業への一棟貸しが内定しています。また、来年4~6月には大井競馬近隣の第3立体駐車場跡地1,700坪にミュージカル劇場(シアターH)、商業(DCM、赤ちゃん本舗、ローソン)、オフィスを新規開業する予定です。
財務については自己資本比率は約75%弱と高水準であり、有利子負債を手許現金及び有価証券でほぼネットしています。株主還元については、今次中計では「配当性向20~30%」としていたものの、アクティビストであるオアシスマネジメントの大量保有による圧力もあり、「配当性向30%、フロア90円」とする新たな還元ポリシーを公表しています。そのため、配当金は15円増配の年90円配に修正していますが、含み益等を考慮した実質PBRを鑑みれば依然還元不足であり、追加還元も期待されます。
*参考記事① 2023-05-29 4,055円 OP
【9672】東京都競馬/地方競馬の売上好調が持続、オアシスマネジメントが大量保有。
*参考記事② 2022-11-12 3,965円 OP
【9672】東京都競馬/競馬人気の持続力は想定超で上振れ圏、論点は株主還元のみ。
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