【5711】三菱マテリアル/石炭高騰で持分法落ちのセメント依然厳しい、銅鉱山配当も低調。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5711】三菱マテリアル(東証プライム) OP

現在値  2,120円/100株  P/E 46.1  P/B 0.48  3月配当優待 9月配当優待

非鉄総合首位。銅加工、電子材料、超硬工具、鉱山出資など多面展開。
配当は3月末・9月末の年2回合計50円のため、配当利回りは約2.36%となります。

三菱マテリアルは株主優待を導入しており、3月末・9月末の単元株主に対して、金地金購入・売却時に1g当たり5円優待や、グループ会社が運営する観光坑道の入場無料券を進呈しています。

 

業績を確認していきます。 

■2020年3月期 売上高 15,161億円、経常利益 496億円 EPS▲556.3円  

■2021年3月期 売上高 14,851億円、経常利益 445億円 EPS 186.7円 

■2022年3月期 売上高 18,117億円、経常利益 760億円 EPS 344.6円 

■2023年3月期 売上高 16,800億円、経常利益 150億円 EPS 45.9円ce修正

□2022年9月2Q 売上高 8,319億円、経常利益 230億円 EPS 180.8円

□2022年12月3Q 売上高 12,435億円、経常利益 249億円 EPS 8.5円(2/10)

 

2022年3月期の売上高はYoY▲3.3%の8,319億円、経常利益はYoY▲39.8%の230億円となり、予算比はないものの減収減益となりました。加工事業は中国低迷も北米が好調だったほか、銅加工事業も自動車生産の回復で伸銅品が堅調に推移しました。他方、金属事業は銅・パラジウム市況の上昇や為替効果があったものの、生産コスト上昇やLos Pelambres鉱山の受取配当減少で減益となりました。他方、持分移行したセメント事業は、価格転嫁が進まない一方で、石炭価格高騰によるエネルギーコストの上昇により大赤字となり、▲134億円もの持分損失を計上しました。

 

2023年3月期の見通しは3Q時点で再修正しており、売上高がYoY▲7.3%の16,800億円(期予:15,900億円)、経常利益はYoY▲18.4%の150億円(期予:360億円)と減収減益幅の拡大を見込みます。金属事業が銅鉱山の減配、加工事業・銅加工事業では自動車生産の回復、電子材料は半導体好況を背景にまずまずの状況が続くものの、金属事業で足許の円高影響を受けるほか、渇水影響の長期化によりLos Pelambres鉱山の受取配当が減少します。持分のセメント事業は、転嫁遅延と一般炭の高止まりによるスプレッドの悪化が継続しており、計画外の構造改革費用計上により、持分損失が一段と悪化します。


進行期は3年中計の最終年度ですが、新型肺炎禍で減額ロールした経緯があり、修正計画では売上高を15,161億円→14,100億円(当初計画:15,300億円)、経常利益を496億円→380億円(当初目標は750億円)へマイナス成長計画へと置き換えています。好調な伸銅品や超硬工具、半導体関連の電子材料、リサイクル関連にシフトする一方、不採算事業のリストラを推進しています。なお、2月には2030年までの中期戦略も公表しており、2026年3月期に経常利益870億円、2031年3月期に同1,800億円を目指すこととされています。

 

注力予定の伸銅品は買収したLuvata社や吸収合併した三菱伸銅を中心に、xEV向け比率を向上させるほか、超硬工具はEV化で自動車向け後退も、航空機や医療機器向けを伸ばす計画です。また、金属事業については所謂“都市鉱山”であるE-scrapの推進による白金族の回収により、ESGと採算性の工場を図ります。当社の海外鉱山配当金収入の中核を占めるチリ・Los Pelambres鉱山は渇水による生産影響が継続しており、6割の主権益を握るAntofagasta社による淡水化プラント建設も遅延していることから、収益巡行化は早くても翌々期以降になる見通しです。なお、2021年2月には、北部のMantoverde鉱山にも30%出資しており、銅鉱山の配当維持・確保に動いています。

 

他方、セメント事業については、昨年4月に宇部興産との折半出資のUBE三菱セメントに移管し、持分適用化しています。本件統合により売上高は6,000億円規模となり、首位の太平洋セメントに次ぐ業界2位となったものの、石炭価格の高止まりによるエネルギーコストの上昇と、業界の過当競争で収益悪化が継続しています。期初の+2,200円の値上げが一巡したものの、追加値上げ分の+3,300円の交渉が遅延しているほか、9月には青森工場、伊佐工場の操業停止等による構造改革も公表しており、同社は新たに▲200億円の損失を見込みます。

 

株主還元については、今次中計では当初年80円配当を下限としていたものの、年50円下限に修正しています。従って、予想配当も40円減配の年50円が予想されており、当初経営側は“年80円水準の維持を念頭に置いている”旨のアナウンスをしていたものの、セメントを中心とした足許環境の悪化から、配当の復元は厳しくなった印象です。

 

*参考記事① 2022-08-08 1,984円 OP

【5711】三菱マテリアル/懸案のセメント事業を宇部興産との持分適用化に、予算保守的で復元配も。

 

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