【9375】近鉄エクスプレス(東証一部) OP
現在値 2,663円/100株 P/E 9.97 P/B 1.38 3月配当 9月配当 株主優待なし
国際航空貨物混載大手の一角。国際網充実。15年にシンガポールのAPLLを子会社化。
配当は3月末・9月末の年2回計50円配当のため配当利回りは約1.88%となります。
近鉄エクスプレスは株主優待制度を導入しておりましたが、2021年3月をもって廃止しています。
業績を確認をしていきます。
■2018年3月期 売上高 5,531億円 営業利益 173億円 EPS 97.3円
■2019年3月期 売上高 5,920億円 営業利益 207億円 EPS 136.9円
■2020年3月期 売上高 5,445億円 営業利益 197億円 EPS 65.7円
■2021年3月期 売上高 6,091億円 営業利益 341億円 EPS 301.6円
■2022年3月期 売上高 6,300億円 営業利益 317億円 EPS 267.0円 ce
□2021年9月2Q 売上高 2,730億円 営業利益 110億円 EPS 94.6円 四e
2021年3月期の売上高は前期比11.9%増の6,091億円、営業利益は同73.4%増の341億円となり、期中2度の増額修正を更に上回って大増益での着地となりました。日本の航空及び海上輸出入は新型肺炎禍で自動車関連が低調だったほか、半導体製造装置関連も取扱量が減少しました。また海外についても同様に、米州・欧州・中近東等でおしなべて自動車・エレキ製品を中心に取扱数量が減少したほか、SG拠点のAPLL社もロックダウンの影響で大幅後退となりました。他方、東南アジア・東アジア・豪州はエレキ製品の取扱増により堅調に推移しました。全社ベースでは数量こそ減少したものの、旅客機減便に伴う仕入れ原価の上昇を荷主へ転嫁出来たため、この運賃スプレッド高騰により利益率が飛躍的に改善しました。
進行期である2022年3月期の通期見通しについては、売上高が3.4%増の6,300億円、営業利益は7.2%減の317億円と増収減益を予想しています。米州・欧州を中心に半導体や自動車関連の取扱数量が回復基調にあるほか、ロックダウン影響の大きかったAPLLも小売り関連の取扱いが増加する見通しです。新型肺炎禍一巡により、全エリアで取扱数量の増加が見込まれ、事実1Q(4‐6月)の3ヵ月間分が開示されている日本発の航空貨物輸出重量も1年前比で約7割増と非常に強い状況が継続しています。利益面では、航空機の貨物スペースのひっ迫感継続により高い運賃スプレッドを享受出来る公算が高く、利益水準は一段増の展開が予想されます。
当社はこの2022年3月期を最終年度とする3年中計において、KPIとして取扱数量(航空80万t・海上90万TEU)を掲げて事業規模の拡大を最優先に志向し、スケールメリットによる原価低減を目指す方針となっています。そのため、業績目標についても売上高を5,920億円→7,200億円に膨らませる一方で、営業総利益率は従来水準の16.4%を横引きする計画でしたが、今回公表の着地見通しによれば、売上高は大幅未達となるものの、営業総利益率については大きく良化する公算が高く、新型肺炎禍によるプラス・マイナス相互影響で“入り繰り”の仕上りが見込まれます。
2015年に1400億円もの巨費を投じて買収したAPLLについては、システム統合や取引先との不利条件の是正や人員削減によるリストラ策により“筋肉質”な組織になっていますが、向こう15年程は年間▲60億円ものれん償却負担が重く、新型肺炎禍の現状では寄与が限られています。但し市況面については依然追い風要素の方が大きい情勢であり、旅客需要が戻らないとみた大手キャリアが大型旅客機の退役を進めているため、IATA予想によれば早くても2024年までは今の市況環境が続く情勢です。勿論、当社としてのスペース確保の問題があるものの、現状では香港拠点を活用したグローバル調達で手当てしているほか、今後はチャーターやBSA(一括スペース契約)の機動的な活用で対応する方針です。
他方、株主還元については、長らくの間年26円配で固定されていましたが、2019年3月期に4円増配したほか、終わった2021年3月期には一気に20円積み増して年50円配としています。長期ビジョンで掲げている“ネット有利子負債ゼロ”との兼ね合いはあるものの、予想ベースで16.6%の配当性向はなお還元不足の印象は強く、少なくとも「年60円~70円」までの増配ないしは自社株買いを期待したいと考えています。
*参考記事① 2020-09-04 2,179円 OP
【9375】近鉄エクスプレス/航空貨物運賃の上昇を追い風に、通期で底堅く上振れも。
*参考記事② 2020-02-22 1,928円 OP
【9375】近鉄エクスプレス/中国変調のわりに底堅いが、財務優先で低還元を志向。
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