【3550】スタジオアタオ/EC化率高く健闘も、関連当事者取引となる販促費がネック。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3550】スタジオアタオ(東証マザーズ) OP

現在値 486円/100株  P/E --.-  P/B 2.32 2月優待配当 

店舗、ネットで自社ブランドの婦人用バッグ、財布を販売。ネット比率、リピーター比率高い。
配当は2月末の年5円配当のため、配当利回りは1.03%となっています。

 

スタジオアタオは単元株を保有する2月末の単元株主に対して、2,000円割引券(自社ECにおいて10,000円以上購入の場合に利用可)を1枚進呈していますので、参考配当優待利回りは約5.14%となります。


業績を確認していきます。

■2018年2月期 売上高 34.4億円、営業利益 5.5億円 EPS 28.7円 

■2019年2月期 売上高 42.1億円、営業利益 7.4億円 EPS 42.5円  

■2020年2月期 売上高 41.4億円、営業利益 7.8億円 EPS 42.5円 

■2021年2月期 売上高 40.0億円、営業利益 0.9億円 EPS 2.6円  

■2022年2月期 売上高 45.0億円、営業利益 0.0億円 EPS 0.0円(4/13)  

□2020年8月中 売上高 27.6億円、営業利益 0.7億円 EPS 11.9円 四e

 

2021年2月期の売上高は前期比3.3%減の40.0億円、営業利益は同88.0%減の0.9億円となり、開示後の当初予算には届かなかったものの、減額後の修正予算に対しては上振れ、最終黒字を確保しました。緊急事態宣言下の昨年4月上旬から5月下旬まで全7店を休業したほか、その後も入居施設の休業や時短営業、消費者の外出自粛等の影響を大きく受け、店舗販売は前期の66%程度に留まりました。然しながら、元よりEC化率が高い当社は、EC売上が同30%増と大増勢となったことからトップラインの減収を最小限で食い止めました。一方、利益面については積極的なTVCM投下やEC売上増加に伴う構造的な販促費増により減益幅が大きくなりました。


進行期である2022年2月期の予算については、期初から開示しており、売上高は12.3%増の45.0億円、営業利益は損益トントンを見込んでいます。実績期で増床したジョイナス横浜店や大丸梅田店の上乗せが見込まれるほか、旗艦の神戸アタオランド店や有楽町マルイ店の持ち直しが期待されますが、予算上は新型肺炎禍による休業は織り込んでいません。他方、引き続き主力の「ATAO」「ILEMER」を中心とした積極的な販促策を実行する方針であり、トップラインは2桁の増収を見込む一方、この原価増により利益は均衡圏まで低下する見通しとなっていますが、さすがにバッファ含みとみられ上振れ圏と解されます。

 

当社は中長期的な経営計画を公表していないものの、2018年時点の社長コメントによれば売上高100億円を目処にしているとみられます。当社の特徴として、ファブレスでバッグの生産を約20の工場に外注しているほか、在庫を極力減らす“少量多品種”方式を採っており、まず少量のEC販売でサウンディングしてから、量産化に舵を切るという低リスク手法を採っています。新型肺炎禍の影響もあり、それまで半々で拮抗していたEC/実店舗売上比率は、EC売上が63%超にまで更に上昇しており、図らずもECに軸足を置いていたことが奏功し、数々のアパレル会社が苦境に立たされる中、売上高40億円台をキープすることに成功しています。

 

他方、当社の構造的リスク要因として留意する必要がある点が、百貨店のみならずEC売上も消化卸方式という点であり、一部の直営店以外は大丸やEC販売窓口のデジサーチアンドアドバタイジング(D&A)に対して売上が立つ形となっている点です。D&Aは当社の17.58%の株を握る大株主であり、“セイムボート”性が期待されるものの、同社が当社EC及び販促の全てを統括していることから、EC売上構成比が増えれば増えるほど、同社依存度が高くなる構造となります。同社へ支払ったネット販促費はこの1年間で、519→579百万円と売上比で無視できない規模に膨らんでいる一方、当社直営の実店舗が新型肺炎禍でも空家賃を払って維持しているブランド価値分に対し、EC側(D&A)はほぼフリーライドしていることを考慮すると、利益相反の疑念は払しょくしきれません。

 

財務状況については、期末時点でネット現金14億円を抱えており、自己資本比率7割強と極めて良好な水準を維持していますが、昨年3月末にメイン行のSMBC等から10億円を調達しています。ただこれは念のために借入を起こした印象が強く(実際一部弁済済とみられる)、かような健全な財務状況を考慮すれば、今期も期初から年5円の有配予想をしていますが、業績未達でも予定通り払われる公算が高そうです。

 

*参考記事① 2020-07-01 473円 OP

【3550】スタジオアタオ/EC化率は既に高く、今期も最終黒字圏か。

 

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