【3550】スタジオアタオ/EC化率は既に高く、今期も最終黒字圏か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3550】スタジオアタオ(東証マザーズ) OP

現在値 473円/100株 PER--.- PBR2.47 2月優待配当 8月優待

店舗、ネットで自社ブランドの婦人用バッグ、財布を販売。ネット比率、リピーター比率高い。
配当基準日は2月末・8月末の年2回ですが、配当予想は未定となっています。

 

スタジオアタオは単元株を保有する2月末の単元株主に対して、2,000円割引券(自社ECにおいて10,000円以上購入の場合に利用可)を1枚進呈していますので、配当優待利回りは約4.22%となります。


業績を確認していきます。
■2017年2月期 売上高 28.6億円、営業利益 4.6億円 EPS 25.0円 

■2018年2月期 売上高 34.4億円、営業利益 5.5億円 EPS 28.7円 

■2019年2月期 売上高 42.1億円、営業利益 7.4億円 EPS 42.5円  

■2020年2月期 売上高 41.4億円、営業利益 7.8億円 EPS 42.5円(4/13) 

■2021年2月期 売上高 (未定)億円、営業利益 (未定)億円 EPS (未定)円 ce 

□2020年8月中 売上高 18.0億円、営業利益 3.1億円 EPS 16.6円 四e

 

2020年2月期の売上高は前期比1.7%減の41.4億円、営業利益は同6.0%増の7.8億円となり、上場来4期連続となる営業増益を果たしたものの、期初予算には届きませんでした。ネット広告単価上昇にともない販促費の効率化を進めたことや、消費増税の影響、神戸・旧居留地の大丸から本社のある神戸国際会館1Fの大型直営店「アタオランド」へ増床・移転させたことによるダウンタイム発生等がトップラインの主な下振れ理由となります。一方、利益面についてはネット販促費の効率化で採算性が一段と向上しており、営業利益率は前期比1.4%増の19.0%まで好伸しました。


進行期である2021年2月期の予算については、新型肺炎の影響により合理的な算定が出来ないことから、未定としています。当社は4月8日から5月下旬まで7店を休業しており、6月1日時点では全店舗での営業再開にこぎつけています。元より当社はEC化率が過半を超えており、リピーターも多いことから、消費マインドの低下が特段無いものと仮定すれば、通常の半分程度の売上高が確保出来るものとみられます。なお当社でいう売上高は、百貨店販売のみならず、ECについても消化卸方式となっており、一部の直営店以外は大丸やEC販売窓口のデジサーチアンドアドバタイジング(D&A)に対して売上が立つ形となります。そのような売上構造から、直営店やポップアップ店における空家賃の負担懸念があるものの、最終的には黒字圏での着地が可能とみております。

 

当社は中長期的な経営計画を公表していないものの、2018年時点の社長コメントによれば売上高100億円を目処にしている模様です。当社の特徴として、ファブレスでバッグの生産を約20の工場に外注しているほか、在庫を極力減らす“少量多品種”方式を採っており、まず少量生産によりEC販路でサウンディングしてから、量産化に舵を切るという手堅い方法を採っています。これは5割を超える高いEC化率を活かした“ならでは”のビジネスモデルと言えます。

 

ただこれには裏もあり、当社の約2割持分を持つ大株主であり、当社ECの全てを統括するD&A社が“究極の利害関係人”として支配しているため、いくらオムニチャネル化が成功したとしても、EC化推進により最終購入をECで行うとすれば(O2Oの逆)、実店舗の運営負担を当社が被り、D&A社が潤う構造となります。また製品企画はともかく、Webプロモーション等の権限も同社が握っており、EC化率が進むほど営業依存度が高くなることが懸念されますが、一応はセイムボートの大株主でもあることから、今の成長が続く限りにおいては利益相反性がある程度排除されているものとして、論点から外してもいいのかもしれません。なお、ECについては新ブランドである「IREMER」を中心とした越境ECを開始するなどしており、売上高100億円の達成には数年要するとみられるものの、取り敢えずの成長ストーリー自体は示されている印象を受けます。

 

財務状況については、期末時点でネット現金18億円を抱えており、自己資本比率8割強と極めて良好な水準を維持していますが、3月末にメイン行であるSMBC等から10億円を調達しています。使途は資金繰り及び“設備投資”としているため、念のために借入を起こした印象が強く、かような健全な財務状況を考慮すれば、今期の配当予想は未定ながらも実績同額の5円を出す可能性の方が高いと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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