【9266】一家ダイニングプロジェクト/純資産は4億円台に減少、経営側の覚悟を再確認したい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9266】一家ダイニングプロジェクト(東証一部) NT

現在値 542円/100株 P/E--.-  P/B7.87  3月無配株主優待 9月株主優待

首都圏で和食居酒屋『こだわりもん一家』『屋台屋博多劇場』等を展開。
配当基準日は3月ですが、配当実績はなく、今期も無配予想となっています。

一家ダイニングプロジェクトは株主優待を導入しており、3月末・9月末に単元株を保有する株主に対し、各2,500円の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約9.22%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 54.1億円、経常利益 1.5億円 EPS 29.7円 

■2018年3月期 売上高 61.4億円、経常利益 2.4億円 EPS 55.4円

■2019年3月期 売上高 70.7億円、経常利益 2.8億円 EPS 39.6円 

■2020年3月期 売上高 79.9億円、経常利益 1.2億円 EPS▲19.8円 

■2021年3月期 売上高(未定)億円、経常利益(未定)億円 EPS(未定)円

□2020年9月2Q  売上高 14.3億円、経常利益▲6.3億円 EPS▲107.1円(11/12

2020年9月中間期の売上高は前年同期比62.8%減の14.3億円、経常利益は同赤転の▲6.3億円となり、期初予想との比較はないものの大幅な減収減益となりました。飲食事業については、4月4日から全店休業に踏み切り、5月15日より順次時短で営業を再開したものの、その後の客足の戻りは鈍く、上期の既存店売上高は37.4%に留まりました。
婚礼事業についても同様に4月・5月は殆どの期間で休業したほか、その後も挙式及び披露宴の両方で延期やキャンセルが相次ぎ、セグメント売上がほぼ立ちませんでした。なお、飲食事業における出退店については、『博多劇場』を中心に4店を出店した一方、『こだわりもん一家』など8店退店し、上期末時点の店舗数は64店と純減となっています。

 

2021年3月期の通期見通しについては、合理的な算出が出来ないことから、現時点でも開示を見送っています。飲食事業については、10-12月の3Q期間の月次が公表されており、既存店前年比は60%水準に留まっているほか、売上寄与の高い最繁忙期の12月に50%を割り込んでいるため、見た目以上に痛んでいるものとみられます。かような厳しい営業状況から、緊急事態宣言下ながらも去る1月に12日に営業再開(東京都・千葉県の一部店舗)を公表しており、4Q期間からの巻き返しと競合休業による残存者利益の確保を図っています。なお出退店については、下期だけで『ラムちゃん』6店が出店名有りとなっているほか、『Remo Cafe』2店の出店を済ませていますが、新店だけで埋められるような状況ではないため、(助成金があったとしても)通期で大赤字となる見通しです。

 

当社は2017年12月にマザーズ市場に上場しており、昨年3月に東証一部へ直接の指定変更を果たしています。マザーズ上場時の成長可能性資料によれば、「鳥貴族」や「串カツ田中」を多少上回る客単価2,500円程度の廉価業態である『博多劇場』を店舗展開の柱に据え、上場後の3年間で年11店ピッチでの出店する計画としており、2020年3月期までは概ねインラインで進捗していました。然しながら、新型肺炎禍のこの上期からは一転して展開店舗数は減少へと転じており、新規出店を中心とした外部成長施策は抜本的な見直しを迫られています。

 

そのため当面は不採算の『こだわりもん一家』をスクラップし、『博多劇場』への業態転換による採算性の改善や、ハイボールを1時間500円で提供するジンギスカン『ラムちゃん』の出店による成長が軸になると考えられます。特に『ラムちゃん』は居酒屋ではなく焼肉屋としての見せ方が出来る業態であり、新型肺炎禍で換気が良いことをウリに出来るため、「串カツ田中」のようなファミリー層の誘致が特徴となっています。そのため、当社従来型既存店のように必ずしも都心繁華立地である必要がなく、直近の出店(予定)は八王子、船橋、町田、木更津、浅草橋など軒並み山手線外となっています。特に東京圏では廉価なジンギスカン特化型業態が皆無のため出店余地が認められます。

 

そのほか「Remo Cafe」といった満喫の派生業態を開発していますが、此方は圧倒的に先行するAOKIの「快活CLUB」といった競合と大差ないほか、新型肺炎前からフレキシブルオフィス市場もレッドオーシャン化しているので、相対的に経営体力や運営ノウハウに乏しい当社がどこまで伸ばせるかについては疑念が残るところであります。なお財務状況については、更に有利子負債を積み上げて、自己資本比率は9.3%に落ち込んでいるほか、純資産は僅か4億円しかない状況です。他方、社長の武永氏は昨年の一部指定変更時の売出しで約6億円を現金化しているため、改めて当社株の割当増資を引き受けるなど、経営側の覚悟を再確認したい状況ではあります。

 

*参考記事① 2020-07-24 567円 NT

【9266】一家ダイニングプロジェクト/「博多劇場」に絞った成長ストーリーの再提示が望まれる。

 

*参考記事② 2020-03-07  754円  OP

【9266】一家ダイニングプロジェクト/一部指定替え成就も、廉価路線志向はやや疑問符。

 

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