【9266】一家ダイニングプロジェクト/「博多劇場」に絞った成長ストーリーの再提示が望まれる。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9266】一家ダイニングプロジェクト(東証マザーズ) NT

現在値 567円/100株 PER--.- PBR3.26 3月無配株主優待 9月株主優待

首都圏で和食居酒屋『こだわりもん一家』『屋台屋博多劇場』等を展開。
配当基準日は3月ですが、配当実績はなく、今期も無配予想となっています。

一家ダイニングプロジェクトは株主優待を導入しており、3月末・9月末に単元株を保有する株主に対し、各2,500円の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約8.81%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 54.1億円、経常利益 1.5億円 EPS 29.7円 

■2018年3月期 売上高 61.4億円、経常利益 2.4億円 EPS 55.4円

■2019年3月期 売上高 70.7億円、経常利益 2.8億円 EPS 39.6円 

■2020年3月期 売上高 79.9億円、経常利益 1.2億円 EPS▲19.8円 

■2021年3月期 売上高(未定)億円、経常利益(未定)億円 EPS(未定)円

□2020年9月2Q  売上高 33.0億円、経常利益▲0.5億円 EPS▲9.8円

2020年3月期の売上高は前期比12.9%増の79.9億円、経常利益は同55.0%減の1.2億円となり、期中の減額修正予算を下回って着地しました。主力の飲食事業については、『博多劇場』の値下げにより客単価が減少したほか、2月中旬から期末の3月にかけて新型肺炎の影響を受けたことで、概ね前年並みで推移していた3Qまでの貯金を食い潰し、既存店売上高は予算前提の101%に対して96.4%となりました。出店については、計画の12店に対して、前倒し気味で14店を出店し、立退閉店(1店)をネットした総店舗数は69店へ増加しています。なお、全社利益の押し下げ役となったのが婚礼事業であり、こちらはモロに新型肺炎の影響を受ける格好で2月・3月の婚礼・宴会が殆ど飛んだ結果、セグメント赤字に転落しています。

 

なお2020年3月期の通期予算については、新型肺炎の影響で合理的な算出が出来ないため、期初時点で開示を見送っています。飲食事業については、4月4日から全店休業に踏み切り、5月15日から一部店舗から時短で営業を再開したような状況です。既に開示されている1Q(4-6月)月次の既存店売上高によれば、3ヶ月累計で23.4%と壊滅的な数字で着地しています。また、婚礼事業も同様に4月・5月は殆どの期間で休業しており、1Qはほぼ売上が立たない見通しです。一方、全面的な休業を選択したことで、行政の各種補助金を受けられる公算が高いほか、家主との賃料交渉の成就により若干の浮上余地があるものの、通期では赤字に転落するとみられます。出店については「博多劇場」を中心に7店が名有りとなっていますが、不振のパスタ屋や「こだわりもん」の業態変更がメインとなります。

 

当社は2017年12月にマザーズ市場に上場しており、成長可能性資料によれば、当社がベンチマークとする「鳥貴族」や「串カツ田中」を多少上回る客単価2,500円程度の廉価業態である『博多劇場』を店舗展開の柱に据えており、上場後3年間で年11店舗ピッチでの出店を計画していました。そのため、2年前半の上場時点で推計された2020年3月期の出来上がり業績は売上高85億円・経常利益3.5億円水準でしたが、新型肺炎による影響なかりせば売上高80億円・経常利益3.0億円ほどで着地していたとみられるため、まずまずの成長トラックを残したものと考えています。

 

当社の主要営業エリアは千葉西部であることから、一都三県でのドミナント展開により『博多劇場』の認知度醸成を図り、東京の城東方面から“西進”を進めています。比較的高単価な『(こだわりもん)一家』の出店は見送り、順次『博多劇場』に業態転換しているほか、新業態の『青とうがらし』を3店出店したものの、早くも全店撤退を決定しており、『博多劇場』へのフォーカスがみられます。育成中のジンギスカン『ラムちゃん』については、ハイボール500円/1時間で提供するなど廉価業態であり、流山・柏・千葉(と御徒町)といった郊外でも適応可能な業態であるとみられるものの、いかんせんまだ4店舗しかないので現時点では評価出来ないところです。

 

惜しむらくは本年3月の東証一部に指定変更の際に武永社長の持株の売り出しこそあれど、(低株価もあって)公募増資できなかったことです。その際に資本増強出来れば、新型肺炎で立ち行かなくなった他社居抜店舗などを押さえて一気に出店することも出来ましたが、結局この4月に運転資金として19億円のデット調達を余儀なくされており、成長減速が懸念されます。当社は企業規模が小さく経営資源が非常に限られているため、今後は『ザ・プレイスオブトウキョウ』の婚礼事業や、銀座の寿司店といった周辺事業は一旦整理・撤退して、同業の「鳥貴族」のように『博多劇場』に絞った成長ストーリーの再提示が望まれます。

 

*参考記事① 2020-03-07  754円  OP

【9266】一家ダイニングプロジェクト/一部指定替え成就も、廉価路線志向はやや疑問符。

 

*参考記事② 2019-01-12 628円*分割修正済 OP

まずは3Qで“注文通り”の巻き返しを確認したい、一家ダイニングプロジェクト(9266)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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