【2972】サンケイリアルエステート投資法人/パイプライン物件山積みで、あとは株価回復待ち。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2972】サンケイリアルエステート投資法人(東証REIT) OP


現在値 99,100円/1株 PER20.91  P/NAV0.85  2月分配 8月分配

サンケイビルをスポンサーとする総合型。オフィスビル8割、その他サブアセットが2割。

予想分配金は2月末・8月末の年2回合計5,047円配で、分配金利回りは約4.78%となります。

業績を確認していきます。当法人は2019年3月のIPOとなります。
■2019年8月期_第1期 営業収益 11.5億円、経常利益 3.36億円 DPU 1,399円 変則

■2020年2月期_第2期 営業収益 19.3億円、経常利益 10.6億円 DPU 2,995円

■2020年8月期_第3期 営業収益 20.0億円、経常利益 8.3億円 DPU 2,358円 ce

■2021年2月期_第4期 営業収益 20.4億円、経常利益 8.6億円 DPU 2,415円 ce

 

2020年2月期_第2期の営業収益は前期比67.1%増の19.3億円、経常利益は同217.9%増の10.6億円と上振れて着地し、分配金についても当初予想の2,689円から2,995円まで306円増額されました。トップライン段階から大きくブーストしているのは第2期目入りにより運用期間が巡航するほか、第1期中に早くもPO(※後述)を実施していることが主な要因となります。また、計画比の上振れにより分配金が大幅に増加していますが、これはPO取得物件の公租公課が想定以下だったことや、修繕工事非実施、その他営業外費用の未消化等の見込み過ぎコストの掃き出しに由ります。


進行期である2020年8月期_第3期については、営業収益が第2期比3.4%増の19.9億円、経常利益は同22.4%減の8.3億円を予想しており、分配金は2,995円→2,324円へと671円も減少する見通しです。保有全物件が巡航化してフル寄与するものの、第1期目に当たるIPO時の取得物件と、第2期目に当たる初回PO時の固定資産税の費用化がダブルでマイナス寄与するため、これが非常に大きな重しとなり、分配金は大幅減となります。また、当法人は新型肺炎の影響を年末まで続く前提としており、商業テナントや貸し会議室・水光熱費収入の減少を一定程度織り込んでいる模様ですが、肝心のオフィス床については大口のFR期間の終了や足許でも増額交渉が順調に推移していることから、特段のダウンサイドは考慮してないと思われます。それでも当法人は従来より保守的な予算を立てる傾向にあることから、公表水準の分配金であれば十分達成可能と考えています。

 

当法人は2018年3月にIPOで約238億円(@100,000円)を調達し、上場時AUM約433億円で運用を開始しています。大手町の東京サンケイビルが代表物件であるものの、持分は2%に限られることから、事実上の旗艦物件は梅田のブリーゼタワーの持分30%と京橋のインターゲートホテルとなります。また、2019年8月にはオフィス系としては史上最速で初回POを実施しており、約128億円(@118,734円)を追加で調達しています。その際には楽天旧本社ビルとしても知られる品川シーサイドTSタワーの25%持分や、ブリーゼの15%持分の追加取得を実施しております。ブリーゼの取得CAPレートが僅か半年で4.7%→4.4%に下がっている点が割引要素であるものの、広島の築浅ホテルを4.9%で混ぜ込んだことにより、ポート全体のNOIを4.2%に10bps.切り上げることに成功しています。

 

当法人の中期的な目標としては、IPOから1年程でAUM1,000億円の大台乗せを目標としているほか、そこから更に1.5~3.0年程でAUM2,000~3,000億円とFTSE EPRA/NAREITをはじめとするグローバル指数への組み入れを目指していました。現状のAUMは673億円であるため、力押しで調達額150億円超のPOを実行すれば1,000億円が射程に入ってくる状況でした。然しながら、新型肺炎影響によるリモートワーク加速の流れを嫌気して、J-REITのオフィス銘柄のバリュエーションが著しく切り下がっている状況であり、当法人の株価もIPO時の公開価格すら下回ってNAV割れ水準に甘んじている状況のため、株価が回復しない限り身動きが取れない状況となっています。

 

それでもスポンサーのサンケイビル側のパイプラインはダブつき状態で積み上がっているため(開発中のHareza池袋、大手町FC北棟、本町サンケイビルも入る)、放送事業が縮小するフジサンケイグループ側の事情なども鑑みれば、物件拠出(当法人側は取得)意欲はかなり強いものであると考えられます。なおLTVは既に44.6%水準に達しており、オフィスビルREITとしては特に低くもなく、調達金利も0.34%(ただし平残は2.8年)と既に低いことから財務面のアップサイドは限定的です。そのため、残るネタで一番のウリは▲15.9%という高い賃料ギャップを活かした内部成長となり、品川シーサイドTSやS-GATE秋葉原等の注力物件で増賃を実現し、分配金成長出来るか否か・・・といったところになろうかと思われます。

 

*参考記事① 2020-01-14  125,900円 NT

【2972】サンケイリアルエステート投資法人/賃料ギャップ大きく、分配金の成長に期待。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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