【2972】サンケイリアルエステート投資法人/賃料ギャップ大きく、分配金の成長に期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2972】サンケイリアルエステート投資法人(東証REIT) NT

現在値 125,900円/1株 PER24.9 P/NAV1.14  2月分配 8月分配

サンケイビルをスポンサーとする総合型。オフィスビル8割、その他サブアセットが2割。

予想分配金は2月末・8月末の年2回合計5,047円配で、分配金利回りは約4.01%となります。

業績を確認していきます。当法人は2019年3月のIPOとなります。
■2019年8月期_第1期 営業収益 11.5億円、経常利益 3.36億円 DPU 1,399円 変則

■2020年2月期_第2期 営業収益 19.5億円、経常利益 9.6億円 DPU 2,689円 ce

■2020年8月期_第3期 営業収益 20.0億円、経常利益 8.4億円 DPU 2,358円 ce

■2021年2月期_第4期 営業収益 20.2億円、経常利益 8.4億円 DPU 2,374円 ce

 

2019年8月期_第1期の営業収益は上場時予算比0.3%増の11.5億円、経常利益は同24.9%増の3.36億円と上振れて着地し、分配金についても当初予想の1,121円から1,399円まで278円増額されました。トップラインは概ね想定通り推移したものの、東京サンケイビルの飲食テナントが好調に推移したことによる歩合賃料計上で上振れたほか、原価についても修繕費の翌期繰延・削減・予備費未消化に加え、その他外部委託費の削減も奏功し、予算比で0.6億円程利益が良化しました。


進行期である2020年2月期_第2期については、営業収益が第1期比69.6%増の19.5億円、経常利益は同185.7%増の9.6億円を予想しており、分配金は1,399円→2,689円へと1,299円増加する見通しです。これは第2期目に入ることにより運用期間が巡航することが主な要因ですが、第1期中に早くもPO(※後述)を実施していることもあり、トップラインから大きくブーストする格好となります。また、原価についても第1期のIPO及びPOのオファリングコストが剥落するため、利益面でも大幅増となります。

 

当法人は昨年3月にIPOで約238億円(@100,000円)を調達し、上場時ポートフォリオは約433億円で運用を開始しています。大手町の東京サンケイビルがREITの顔となる代表物件であるものの、組入持分は2%に限られることから、事実上の旗艦物件は梅田のブリーゼタワーの持分30%と京橋のインターゲートホテルとなります。IPO時のポート全体の鑑定利回りは4.1%となっており、一部ホテルが入っているものの、昨今のオフィスビルの取得利回り感としては比較的リーズナブルな水準であるものと思われます。また、昨年8月にはオフィス系J-REITとしては史上最速で初回POを実施しており、約128億円(@118,734円)を追加で調達しています。その際には楽天旧本社ビルとしても知られる品川シーサイドTSタワーの25%持分や、ブリーゼタワーの15%持分追加取得を実施しております。ブリーゼの取得CAPレートが僅か半年で4.7%→4.4%に下がっている点が割引要素であるものの、広島の築浅ホテルを4.9%で混ぜ込んだことにより、ポート全体のNOIを4.2%に10bps.切り上げることに成功しているため、IPO・POともにまずまずのディールであると考えています。

 

当投資法人の中期的な目標としては、IPOから1年程でAUM1,000億円の大台乗せを目標としているほか、そこから更に1.5~3.0年程でAUM2,000~3,000億円とFTSE EPRA/NAREITをはじめとするグローバル指数への組み入れを目指しています。会社側公表資料によれば、「AUM1,000億円は射程圏・早期拡大」と明示されていることから、早ければ今年上半期に2回目のPOを実施してくる可能性が高そうです。足許の株価水準はIPO、PO時の水準を大きく上回っているほか、スポンサーパイプラインも積み上がっているため(開発中のHareza池袋、大手町FC北棟、本町サンケイビルも入る)、放送事業が縮小する中で不動産事業で利益を稼ぎたいフジサンケイグループ側の事情なども鑑みれば、物件供給意欲はかなり強いものであると考えられます。

 

なおLTVが45.8%であり、オフィスビルREITとしては特に低い水準ではなく、平均調達金利も0.32%と既にかなり低いことから財務面のアップサイドは限定的ではあるものの、一番のウリは▲14.4%という高い賃料ギャップにあり、特にオフィス需給の逼迫する梅田のブリーゼタワーにおいて賃料の増額改定期待がかかります。翌々期である第4期にオフィステナントの契約更改時期が集中するため、早ければ今期中にもテナントとの交渉進捗状況が確認出来るものと思われます。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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