【2157】コシダカホールディングス/カーブスのスピンオフの評価は難しい。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_8350.jpg

【2157】コシダカホールディングス(東証1部) NT

現在値 1,590円/100株 PER17.5 PBR4.06 8月配当優待 2月配当

『カラオケ本舗まねきねこ』を直営展開。FC方式の女性フィットネス『カーブス』が利益柱。
配当金は2月末・8月末の合計で16円のため、配当利回りは約1.01%となります。

コシダカホールディングスは株主優待制度を導入しており、単元保有の8月末株主に対し、2,000円分の自社優待券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.26%となります。なお3年以上保有を継続した場合に限り、2,000円分が追加となりますので、その場合の配当優待利回りは約3.52%となります。

業績を確認していきます。 
■2016年8月期 売上高 517億円、経常利益 46.9億円 EPS 26.2円    
■2017年8月期 売上高 552億円、経常利益 63.5億円 EPS 43.6円

■2018年8月期 売上高 617億円、経常利益 82.0億円 EPS 54.4円    

■2019年8月期 売上高 658億円、経常利益 95.6億円 EPS 76.5円  

■2020年8月期 売上高 720億円、経常利益 110.5億円 EPS 90.6円 ce(SO無) 

★2020年8月期 売上高 572億円、経常利益 81.2億円 EPS 67.4円 ce(SO有)   

□2019年11月1Q 売上高 155億円、経常利益 11.7億円 EPS 8.6円(1/10) 
□2020年2月2Q  売上高 352億円、経常利益 52.2億円 EPS 42.9円 ce    

2019年8月期の売上高は前期比6.6%増の658億円、経常利益は同16.5%増の95.6億円となり、ほぼ予算水準を確保して順調な着地となりました。主力のカラオケ事業については、駅前やシダックス跡地等を中心に33店の新店を開業(純増5店、期末店舗数525店)したことによる上乗せ効果にくわえ、自社アプリのヒットにより既存店売上は12ヵ月連続の前年超となり、通年では105.2%と高い水準を確保し、全社業績を大きく牽引しました。一方のカーブス事業については、店舗純増が79店(期末店舗数1,991店)と上乗せがあったものの、総会員数が前期比5千人減少し、マーケットの飽和が原因で頭打ちから減少へと転じています。それでも前期から好採算のプロテインの販売に注力しているほか、退会率が良化していることもあり、一応セグメント増益を確保しています。

 

進行期である2020年8月期の予算については、カーブス事業のスピンアウト(※後述)を実施しない実力ベース前提で、売上高が9.4%増の720億円、経常利益は15.5%増の110.5億円と2桁増益の継続を見込んでいます。カラオケ事業については、30店の出店を計画しており、シダックス跡地の居抜きや都心繁華街における建築型大型店での出店を予定しているほか、「スクラップ&大型ビルド」の方針により、相当数の退店も実施するものとみられますが、店舗大型化の進展により採算性が一段と良化する見通しです。カーブス事業については実績期並みの71店の出店を予定しているほか、個店の会員数オーバーやカニバリなどを是正する目的で店舗網の再配置や既存店からのアメーバ型出店により最適化を図ります。また、健康促進観点による地域自治体との提携や、男性向けカーブスのトライアルを深耕させる計画です。

 

当社は2018年5月に約237万株(@598円)のPO&自社株売りにより約54億円を調達、カラオケ事業において資金が嵩む建築型の大型物件に投じることとしていましたが、2019年3月に世界でカーブスを展開する米“カーブスインターナショナル”の本部を買収し、185億円を突っ込みました。カーブス本部は経営不振で赤字状態あり、“のれん代”ばかりの買収ではあったものの、本件買収によりロイヤリティ支払が消失したほか、当社の裁量で世界展開が出来るようになりました。そして昨年10月に満を持してカーブス事業のスピンオフを公表しており、当社既存株主へのカーブス事業株式の現物配当により、当社はカラオケ事業への集中を進めることとしています(※2019年11月27日の定時株主総会で本件は承認・可決済)。

 

本件スピンオフの目的は、国内カーブス事業の成長が既に頭打ちになっていることから、米本部買収をテコに欧米を中心とした海外展開を一層進めるための本事業での単独資金調達が表向きの目的とされています。ただ、既述のとおり持株会社としては2018年にPOを実施したばかりという事情や、カラオケ事業が好伸しているので現時点では成長が止まりつつあるカーブス事業に経営陣等のリソースを分散させたくないといった裏事情や、あるいはエクイティ・ストーリーを描きやすいカラオケ事業単独で再度POを目論んでいる可能性すらありそうです。実際のところ、カラオケ事業単独では、5年中計において現在の売上高357→650億円まで上伸させる計画であり、カラオケルームを個別エンタメ空間へと再定義し、アジアへの展開を積極化させる画を描き切っているのに対し、カーブス事業は既存店テコ入れや地域連携など地味な施策が多く、単独上場後の配当性向は50%目標と還元重視に舵を切っていることから、現時点の素直な評価としては“カーブス事業のリストラ”に近い印象です。

 

なお配当については、スピンオフなしの場合で年16円(4円増配)、同ありの場合で年12円(据置)を予定しています。従来の当社の配当性向は20%基準でしたが、スピンオフありの場合カーブス事業の部分は配当性向50%が適用される(であろう)ことから、成就した場合の2社合計配当は年「16円+α円」、になると理論上考えられるのですが、今期は肝心のカラオケ事業が1Qから躓いているため、いずれにせよ配当の伸びが緩くなる可能性がありそうです。

 

*参考記事① 2018-12-29  1,333円 OP

カーブス本部“逆買収”で、去年の公募増資の意義は高い・コシダカホールディングス(2157)。

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村