AM規制苦しいが、非デバッグの成長著しい・デジタルハーツホールディングス(3676)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3676】デジタルハーツホールディングス(東証1部)  NT

現在値 1,094円/100株 PER19.1 PBR4.99  3月9月配当 株主優待なし(廃止)

専用機、モバイル向けゲームソフトの不具合検出(デバッグ)主力。非ゲーム分野に注力。

 

配当は3月末・9月末の合計14円配当のため、配当利回りは1.28%となります。
デジタルハーツホールディングスは今般、株主優待制度を廃止しており、2019年3月期の

単元株主に対してお米券を3枚進呈したのが制度としては最終回となっています。


業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 150億円、営業利益 19.3億円 EPS 15.7円
■2017年3月期 売上高 154億円、営業利益 19.0億円 EPS 35.6円 
■2018年3月期 売上高 173億円、営業利益 17.3億円 EPS 55.1円

■2019年3月期 売上高 192億円、営業利益 16.0億円 EPS 72.1円(5/10)

■2020年3月期 売上高 230億円、営業利益 18.0億円 EPS 57.1円 ce
□2019年9月中 売上高 108億円、営業利益 7.8億円 EPS 24.7円 四e


2019年3月期の売上高は前期比11.0%増の192億円、営業利益は同7.5%減の16.0億円で

落着し、2桁幅の増収こそ確保したものの、売上高・利益ともに期初予算割れとなりました。

主力のエンタメ(デバッグ)事業において、好採算のパチンコ・パチスロなどのAM分野が規

制強化の影響受けて軟調に推移したことが不調の主な要因となります。一方、運営段階

に入ったタイトルが増加したほかソシャゲのMS分野や、家庭用のコンソール分野における

デバッグについては底堅く推移しました。また事業用のエンタープライズ事業については

システムテスト領域における積極的営業により、新規顧客の獲得が順調に推移したほか、

ITサービス・セキュリティ領域も続伸し、同セグの売上は前期比1.7倍へ好伸しています。

全社的な利益はAM分野の軟調と人材への先行投資で反落となったものの、最終利益に

ついてはHEROZ(4382)の株式売却で特別利益7億円を計上し、高水準を確保しています。


進行期の2020年3月期の予算は、売上高が19.5%増の230億円、営業利益は12.1%増の18

億円とトップラインは2割弱の大幅な増収を計画しています。エンタメ事業については、AM

分野が規制強化による影響を受け軟調な推移が見込まれるものの、好調なソシャゲのMS

分野のデバッグが牽引する見通しであるほか、ゲームメーカーからの顧客サポート受託の

強化や海外顧客増加(67社→80社超)による増収を見込んでいます。また、第2の柱である

エンタープライズ事業については、上流の開発工程からシステムテストまで一貫した受

体制の構築・強化を図り、今期も実に7割近いセグメント大増収を見込んでいますが、エン

ジニアの採用・教化など先行投資が嵩むため、利益自体は伸び悩む見通しです。


当社は2017年に創業者の宮澤氏(現会長、筆頭株主29.4%)からローソン前会長の玉塚氏

に社長交代しており、新体制の下で策定された中計において、2023年3月期(要は5年間)

で売上高500億円、EBITDA100億円を目指すこととしています。内訳は、売上高ベースで

エンタメ事業が250億円、エンタープライズ事業が250億円、海外が50億円となっており、

パチンコ・パチスロのAMデバッグ分野からの依存脱却を図るとともに、エンタープライズ

事業へ舵を切る方針です。基本的な戦略としては、エンタメ事業で大量に抱え込んでいる

ゲームのテスター(約8,000名)の中から、リテラシーの高い層を“サイバーブートキャンプ”

と称する研修プログラムを受講させ、エンタープライズ事業のセキュリティエンジニアへと

と転進させるとともに、最終的には高度人材である“ホワイトハッカー”へと育成します。

 

なお当社は2018年5月にはドイツ証券を割当先とした最大110億円規模のワラントを発行

しており、このうち75億円を関連事業のMAや資本参加などの飛び道具に使う方針です。

実際、昨年は同業のバルテスへの資本参加や、エイネットの子会社化を実施したほか、

足元でも米国のシステムテスト自動化領域で大手のロジギア(年商12億円、利益僅少)

を株式譲受と増資の引き受けにより約9億円を投じ、8月より当社持分51%の連結子会社

に収めています。ただこのワラント自体は、行使価額の修正がなく、足許の株価水準が

一番低い行使価格の下限(@2,100円)にすら遠く及ばない状況であることも考慮すると、

本ワラントは当面行使が進まないとみられ、希薄化こそ発生しないものの、資金需要は

満たせない公算が高い状況となっています。そのため、この調子でMAによる業容拡大

を続けられるかは微妙な情勢であり、中計計画値のハードルは高いものとみられます。

 

従って現在の財務状況としては、ネット無借金の良好な状況が続いているものの、体力

温存していく戦略を採る高く、配当に関しては【8.5→9.5→11.5→11.5→13→14円(予】

、と現状の緩やかな牛歩増配基調が保つのがせいぜいかと思われます。また、今般

株主優待制度を廃止しましたが、おそらくそれもその一環であり、玉塚社長の出身母体

であるファストリやローソンといった小売企業ですら株主優待制度を実施していなかった

ことも鑑みると、ある意味で当然の優待廃止かもしれません。

 

*参考記事① 2019-02-20  1,347円 NT

非ゲーム上伸も、パチンコパチスロ規制が色濃く続落か・デジタルハーツHD(3676)。

 

*参考記事② 2018-07-18 1,527円 NT

元ローソンの玉塚体制も2年目に突入・デジタルハーツホールディングス(3676)。

 

 

会社四季報 2019年3集夏号

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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