ケイマンの導管性要件はクリアとなる公算・インヴィンシブル投資法人(8963)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) ---

現在値 53,900円/1株 PER16.6 PBR1.37 6月分配優待 12月分配優待

フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが8割、住宅が2割。
予想分配金は年2回・合計3,258円配のため、分配金利回りは約6.04%となります。

 

インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の投資主に

対して、当法人保有ホテルと一部のパイプライン物件のホテル宿泊について、ベスト・

アベイラブル・レートから10%割引で予約が出来るサイトのコードを進呈しています。

(※10単元以上を保有する投資主が対象、複数回の使用が可能)

業績を確認していきます。
■2017年06月期 営業収益 92.6億円、経常利益 47.0億円 DPU 1,264円 

■2017年12月期 営業収益 126.4億円、経常利益 73.0億円 DPU 1,564円

■2018年06月期 営業収益 131.0億円、経常利益 77.2億円 DPU 1,430円

■2018年12月期 営業収益 144.5億円、経常利益 83.8億円 DPU 1,683円 

■2019年06月期 営業収益 149.2億円、経常利益 88.9億円 DPU 1,582円 ce

2018年12月期の営業収益は、144.5億円(予算:142.7億円)、経常利益は83.8億円(予算:

79.6億円)と大幅な増収増益での着地となりましたが、分配金については予想の1,683円

のままで据え置かれ、期初に見込んでいた利益超過分配/OPDの167円のうち116円分

を圧縮した形で分配し、予算よりも内部留保を厚く取った格好となりました。前年同期比

で3%の増加を見込んでいたホテルのRevPAR前提も、ポート構成比の1割を占める大阪・

京都と、8%程度を占める北海道が天災の影響を受けたにも拘わらず、+2.6%で仕上がり、

内容としてはかなり健闘しました。また、賃貸住宅についても入替時・更新時の賃料増額

交渉が好調に推移し、入替・更新を合わせた53%のテナントに対して、平均で3.0%の賃料

増額を実現し、ボラティリティの激しいホテル収入を手厚く下支えしました。

 

進行期である2019年12月期の予算は、営業収益が前の期比3.3%増の149.2億円、経常

利益は同6.0%増の88.9億円と増収増益を見込んでいます。ホテル歩合の多い当法人は

夏場を含む12月期に数字が偏重することが多いものの、昨年のPO(※後述)による取得

物件の巡航化の影響が大きく、季節偏重性を跳ね除けて増収増益となる見込みです。

一方で、分配金は1,683→1,582円(▲101円、OPD14円含)と減少する見通しですが、

これはPOによる希薄化によりEPUが8%ほど減少したことが主な原因です。予算の前提

となる今期6ヵ月のホテルRevPARについては前年同期比+2.8%で見込んでいるものの、

GW10連休やラグビーW杯などによるアップサイド要素は織り込まれていない模様です。

 

当法人は昨年7月のPOにて約450億円(@45,776円)をグローバルオファリングで調達し、

グランドケイマン島のセブンマイルビーチにあるウェスティン及び、同一オペレーターが

運営するコンドミニアムのTK出資分を合わせて373億円で取得したほか、マイステイズ

シリーズで赤坂(269億円)、札幌中島公園(167億円)等6棟を取得しています。グランド

ケイマンの2物件の鑑定NOIは計8.0%を超える水準での取得となったものの、ケイマン

島自体の観光客数増加もあり、2018年通年では10%を超える利回りを確保しました。

 

そのため、2019年もケイマン2棟から高い利回りが享受出来る見通しでしたが、本邦の

税制改正により、これらを保有するSPCの株式を100%保有する当法人はREITの課税

特例(いわゆる導管性要件)を満たさなくなるリスクが昨年末に発生し、当法人の株価

の重しとなっていました。ただ直近のアナウンスによれば、SPC経由ではなく直接保有

に切り替える動きをとっており、既に関連当局からの内諾も取り付けて状態であること

から、この“ケイマンリスク”については、既に極小化しているものと考えられます。

 

また、当法人は初めてとなる新中計を公表しており、6月期・12月期を合算した年間の

DPUを2018年の3,113円から、2022年には3,700円までに引き上げる計画をしています。

NAV割れ水準でケイマン2棟を買った昨年7月の大型POの評価が悪かったこともあり、

本中計では外部取得を織り込んでおらず、内部成長でこれだけの成長を達成させると

いう大変野心的なものになっています。成長ドライバーとしては、ホテルの供給一服に

よる需給良化、東京五輪のアップサイド、民泊縮小といった外部環境要因にくわえて、

ケイマンの空港の拡張効果と、ウェスティンの増築(巡航NOI15.2%)が計画されており、

あながち無理な目標という感じでもなさそうな印象です。

 

また、法人側としてはPOによる成長も完全に諦めたわけではなく、昨年12月の40億円

の自社株買い(1.4%)からも読み取れるように、まずはNAVとDPUを引き上げておきたい

意向があるとみられます。しかも会社側の目論見通り、足元の株価でP/NAVを弾くと

1.04倍程に回復しているため、普通に大手を振ってPOが出来る状態となっています。

スポンサーのフォートレスとしても、パイプラインを2,000億円超積んでいるような状況

のため、(親のソフトバンクのためにも)早く拠出したい意向があるとみられ、法人側は

慎重姿勢を崩していないものの、早くも次のPOが強く意識されるような状況です。

 

*参考記事① 2018-11-19 46,150円 ---

NAV割れで大型POを強行、パイプラインは豊富だが・・・インヴィンシブル投資法人(8963)。

 

*参考記事② 2018-04-09 50,500円 ---

舞浜シェラトンを“ダブル・レバレッジ”で取得、インヴィンシブル投資法人(8963)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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