NAV割れで大型POを強行、パイプラインは豊富だが・・・インヴィンシブル投資法人(8963)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) ---

現在値 46,150円/1株 PER15.2 PBR1.21 6月分配優待 12月分配優待

フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが6割、住宅が3割。
予想分配金は年2回・合計3,113円配のため、分配金利回りは約6.74%となります。

 

インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の投資主に対して、

当法人保有ホテル(一部パイプライン物件を含む)の宿泊ベスト・アベイラブル・レートから10%

引で宿泊が出来るサイトのコード付与があります(※10単元以上を保有する投資主が対象)

業績を確認していきます。

■2016年12月期 営業収益 95.1億円、経常利益 54.3億円 DPU 1,477円 
■2017年06月期 営業収益 92.6億円、経常利益 47.0億円 DPU 1,264円 

■2017年12月期 営業収益 126.4億円、経常利益 73.0億円 DPU 1,564円

■2018年06月期 営業収益 131.0億円、経常利益 77.2億円 DPU 1,430円(8/22) 

■2018年12月期 営業収益 142.7億円、経常利益 79.6億円 DPU 1,683円 ce

2018年6月期の営業収益は131.0億円(予算:127.8億円)、経常利益は77.2億円(予算:73.7

億円)と大幅な増収増益での着地となり、分配金に関しても予想の1,383円から1,430円へ

47円上振れしました(※利益超過分配/OPDは無し)。ただ、予算前提のホテルRevPARと

しては、前年同期比0.6%成長を見込んでいたものの、実際は▲0.9%で着地しているため、

5ホテルの改装休業を含めた数字ではあるものの、軟調推移となっています。然しながら、

御茶ノ水、池袋、神楽坂、中野、西五反田の住宅・オフィス5物件の売却による譲渡益12

億円弱のうちプール金を除いた約5.0億円を分配に回すことが大きく寄与しているほか、

ポートの2割を占める住宅において、入替時・更新時ともに半数以上で賃料増額に成功

していることなどが収益を押し上げました。

 

進行期である2018年12月期の予算は、営業収益が前の期比9.5%増の142.7億円、経常

利益は同4.9%増の79.6億円と増収増益を見込んでいますが、これは8月のPO(※後述)に

よる影響のほか、ホテル歩合の多い当法人は夏場を含む奇数期に数字が偏重すること

が主な要因です。分配金見通しは1,430→1,683円(+253円)と、更に幅が大きくなりますが

OPDが167円含まれています。民泊新法施行にともなう競合緩和を受け、繁忙期の夏場

を含めた今期の6ヵ月のホテルRevPAR前提を前年同期比+3%超で見込んでいますが、

ポート構成比の1割を占める大阪・京都と、8%程度を占める北海道が天災の影響を受け

ており、既に開示されている9月の月次開示でもその影響が確認できることから、好調な

住宅の賃料増額でオフセットすることが期待されますが、ハードルは高いと思われます。

 

直近での当法人最大のトピックは、7月のPOにて約450億円(@45,776円)をグローバル

オファリングで調達し、グランドケイマン島のセブンマイルビーチにあるウェスティン及び

同一オペレーターが運営するコンドミニアムのTK出資持分を合わせて373億円で取得

しているほか、マイステイズシリーズで赤坂(269億円)、札幌中島公園(167億円)など計

6棟を取得しています。グランドケイマンの2物件の鑑定NOIは計8.0%を超える水準では

あるものの、本件POによるダイリューションが非常に大きいため、今期はまだ前の期の

譲渡益留保金7.5億円の活用と、OPDで大幅増配を見込んでいるものの、翌2019年6月

期は季節要因によるマイナス要素も相俟って、大幅な減配となることが予想されます。

 

やはり残念だったのが、NAV割れの状態でも容赦なく大型のPOを強行してしまった点で

あり、しかも物件がリスクの高いケイマン諸島ということで、スポンサー都合ありきの印象

はぬぐえません。このPO後でもLTVは54%(鑑定ベースでは48%、舞浜シェラトンのダブル

レバレッジ考慮)という高水準に留まっており、取得余力が限られるほか、平均調達金利

0.5%&平残2.5年ということで、やはり財務面からのアップサイドは限定的です。

 

そのため、外部成長は基本PO頼りとはなるものの、スポンサーであるフォートレスと優先

交渉物件として覚書を締結しているホテル・住宅が28棟(推計1,800億円、リーガロイヤル

京都・マイステイズ成田等)とかなり潤沢にあることから、年間500億円はフォートレスから

物件を引き受ける必要があるとみられます。そのため、現実的には低簿価・築古の非コア

物件売却により売却益を創出し、分配金をカサ上げして利回りを作った上で、スポンサー

の受け皿になることが求められる状況であり、(CAPEXの嵩むホテルなのでAFFO的にど

うかな?という点はあるものの)、最悪OPD積増で分配金対応してくる可能性もあります。

 

ちなみに、当法人側もこの7月POは(内容的に)やり過ぎたという認識があるようですので、

この辺のマネジメントからのアナウンスの変化にも注意していきたいところではあります。

 

*参考記事① 2018-04-09 50,500円 ---

舞浜シェラトンを“ダブル・レバレッジ”で取得、インヴィンシブル投資法人(8963)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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