舞浜シェラトンを“ダブル・レバレッジ”で取得、インヴィンシブル投資法人(8963)。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_1331.jpg

【8963】インヴィンシブル投資法人(東証REIT) ---

現在値 50,500円/1株 PER17.14 PBR1.33 6月分配優待 12月分配優待

フォートレスを主スポンサーとする総合型リート。ホテルが6割、住宅が3割。
予想分配金は年2回の合計2,945円配で、分配金利回りは約5.83%となります。

 

インヴィンシブル投資法人は投資主優待制度を導入しており、6末・12末の投資主
に対して、当法人保有ホテルの宿泊ベスト・アベイラブル・レートから10%引で宿泊

が出来るサイトのコード付与があります(※10単元以上を保有する投資主が対象)

業績を確認していきます。

■2016年12月期 営業収益 95.1億円、経常利益 54.3億円 DPU 1,477円 
■2017年06月期 営業収益 92.6億円、経常利益 47.0億円 DPU 1,264円 

■2017年12月期 営業収益 126.4億円、経常利益 73.0億円 DPU 1,564円(2/20)

■2018年06月期 営業収益 127.8億円、経常利益 73.7億円 DPU 1,383円 ce

■2018年12月期 営業収益 128.8億円、経常利益 74.1億円 DPU 1,562円 ce

2017年12月期の営業収益は126億円(予算:107億円)、経常利益は73.0億円(予算:

58.8億円)と大幅な増収増益での着地となり、分配金に関しても当初予想の1,545円

から1,564円に19円上振れしました(※利益超過分配36円を含む)。これは期中に400

億円級のPOを実施して新規に物件を取得した要因(後述)が大きく、論点となる既存

物件については、ホテルRevPARが計画の9,291円から9,131円に伸び悩んだほか、

住宅NOIの増加も計画をやや下回りました。

 

進行期である2018年6月期の予算は、営業収益が前の期比1.1%増の127億円、経常

利益は同0.9%増の73.7億円と増収増益を見込んでいる反面、分配金の見通しは1,564

→1,383円(▲181円)と減少する見込みです。これはホテル歩合の多い当法人は夏場

を含む奇数期に数字が偏重することが要因であり、前年偶数期である2017年6月期

のDPUと比較すると、1,264→1,383円(+119円)と大幅に増加する見込みであり、利益

超過分配をネットしても相当なDPU成長となります。これは御茶ノ水、池袋、神楽坂、

中野、西五反田の住宅・オフィス5物件の売却による譲渡益12億円弱のうちプール金

を除いた約4.5億円を分配に回す要因が大きく、ホテルのRevPARの成長をアテにした

予算を組んでいるというわけではなさそうです(実際の予算前提はRevPAR0.6%成長)。

また、前々回のPO取得物件である南千住のMLPMのリプレイスもフルで寄与します。

 

直近での当法人最大のトピックは、10月POで約400億円(@44,118円)を調達し、舞浜

のシェラトン・グランデを抱くTMKの優先出資証券を178億円(49%)分取得しています。

これはシンガポール政府投資公社(51%)との共同投資となっていますが、所有権では

なく優先出資証券であり、想定利回り8.8%と相当な高利回りが期待されますが、この

TMKの方でも当然に借入を起こしている“ダブル・レバレッジ”状態ですので、留意が

必要です。また、スポンサーのフォートレスが2014年にアメイズから40億円で買った

別府・亀の井ホテルを今度は88億円で当法人に組入れさせたりと、色々突っ込み処

が満載のPOでしたが、ひとまず分配金の嵩を稼ぎに行っているものとみられます。

 

このPO以外のトピックとしては、スポンサーであるフォートレスGがソフトバンクに買収

されたことにともない、当法人運用会社に対してもソフトバンクから2割の直接出資が

入っています。勿論、ソフトバンクはディベロッパーではなく、物件を開発・供給すると

いった機能はないため、ホテルのフロントにペッパー君を置いて案内させたりといった

取って付けたようなシナジーしかなさそうですが、同社が大株主の中国アリババ傘下

の旅行サイト「フリギー」で、当法人保有ホテルの宿泊販売を開始するなどしています。

 

ただ、ソフトバンクがサブスポンサーに入ったことで、今後は海外投資家へのアピール

が容易になるほか、信用力強化による格付改善や調達金利の低下が期待されます。

一応、2017年のPOや相次ぐ物件売却により、LTVが改善基調にあり、足許では44.1

%まで落ちてきているため、デットでの取得余力を残している状況であるほか、NAVも

1.0倍をギリギリ超えていて、前回POの投資口価格もクリアしてきているため、今年も

POによる外部成長が期待出来ます。特にフォートレスと優先交渉物件として覚書を

結しているホテル・住宅が26棟(推計1,500億円程度)あるため、当社としては手を出さ

ない理由はなく、低簿価・築古の非コア物件売却により現金と分配金を作り上げた上で

満を持してPO・・・というのがメインシナリオかと思われます。

 

 

会社四季報 

2018年2集春号 

 

新品価格¥2,060
(2018/3/14時点)


*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 
基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村