ダニー・ボイルの新作。
荒野のド真ん中の大きな岩山の割れ目の中で、上から落ちてきた岩に右手を挟まれて動けなくなった青年の実話を描いた作品です。
言ってみれば、『翼よ!あれが巴里の灯だ』、『老人と海』、『太平洋ひとりぼっち』と同様の「ひとりぼっち映画」の一種と言っていいでしょう。基本的に、主人公を演じたジェームズ・フランコの芝居だけで進行し、合間に回想が挟まれるというパターン。回想と幻想(妄想?)が混じっているあたりが、過去の作品にはあまり見られなかった手法。ここら辺がボイルらしいと言っていいのでしょうか。
この「ひとりぼっち映画」、空間も登場人物(ほとんど主人公だけ)も限定されるので、映画として魅せるにはかなり高度な演出力と主演俳優の演技力が必要とされます。『翼よ!』はビリー・ワイルダーとジェームズ・スチュワート、『老人』がジョン・スタージェスとスペンサー・トレイシー、『太平洋』は市川崑と石原裕次郎と、いずれも名監督と名優(裕次郎は一見ビミョーですが、結構頑張ってます)の組み合わせで、この課題に挑戦しています。
この作品は、監督がボイルなので良し。で、主演は『スパイダーマン』シリーズで2代目ゴブリン=ハリー・オズボーンを演じたジェームズ・フランコ。主役のピーター=スパイダーマンでオーディションを受けたらしいが、より演技力を必要とするハリー役に彼を選んだのは、サム・ライミの計算だったのか?
この映画の場合、ほとんど密室状態、しかも主人公が生命の危険にさらされたまま話が進む。雰囲気的に一番近いのは『太平洋ひとりぼっち』だと思ったが、こっちはとにかく切羽詰まりまくり。
実話ベースであるにしても、結末はこれ以外ないでしょう?という感じだったが、予想以上に熱く盛り上がっていたのにはビックリ。やっぱり、上手いんだねえ。