婚活小説(大阪・京都・神戸;関西)『マリッジ・コンサルタント優子の婚カツ(コンカツ)物語』 -57ページ目

〔5〕 正直な男(第1回『花火』)

第1回『花火』


この小説は、大阪・京都・神戸;関西の婚活に創業18年、約5,000組の成婚実績のある結婚紹介所エムロード のサイト上で、連載しているブログ小説『マリッジ・コンサルタント優子の結婚(婚活)物語(大阪・京都・神戸;関西)』 のアメブロ版として、連載しています。 人気ブログ小説ランキングに参加しています。 小説の内容にご満足いただけましたら、応援クリックが投票となりますので、是非、クリックよろしくお願いいたします。


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「こんにちは。大木です」

「大木さん。ほんとに大きいですね」


思わずそんな洒落が優子の口をついた。


「よく言われます」


大木はにこっと笑った。

スポーツマンタイプ。

さわやかにブルーのレジメンタルタイを合わせ、スーツ姿もよく似合う。

オフィスが見渡せる位置に立つと、女性社員が一斉に彼を見たほどだった。


優子は大木を仕切りのある面接ブースへと案内した。


「あのね。会ってもらいたい女性がいるんですけどね。

その前にちゃんと聞きたかったんです... 」
「はい」


大木は覚悟していたように頷いた。


「前の結婚のことですね」


今度は優子が「はい」と頷いた。


「K大の学生の頃に、4回生のときかな。

京都のラウンジで7つ上の女性と知り合いましてね。

変な話ですけど... 初めてちゃんと付き合ったんです」


学生時代の大木はさぞ純粋だったのだろう。

一途になったのね、と優子は思ったが、口には出さない。


「それでその人と?」
「はい。卒業してすぐに結婚しました。

相手はバツイチで、二人子どもがいたんです。男の子でした」
「それをわかってて結婚したの」

「もちろん、親は大反対しました。

うちは寺なんです。

僕、長男なんで。

そりゃもう、えらい反対されました」
「意固地になってしまったのね」
「その時は、好きだったんだと思います」


大木は優子の目を見て言った。


優子はちょっとたじろいだ。

この男の嘘いつわりのなさが胸に迫った。


「それから、何年かして、僕らの子どもが、愛美が生まれました」
「電話とってくれはった子ね。かわいいわね。何歳?」
「ええと。9歳になったかな」


大柄な体が照れくさそうに前かがみになった。


「そう。それで、なんで離婚したの」
「彼女、子どものことになると、ものすごい教育ママでね。

『私ができなかったことをしてやりたい』って、

いい私立に入れようともう躍起になりだして。

それでぼく、言ったんですよ。

5合瓶に一升は詰め込まれへん、って。

それから、僕に対してもいろいろ言い出しましてね。

最後にはそれを言ったらおしまいだろう、ということまで言い出しまして」


優子はそれ以上は聞かなかった。大方の想像はついた。


「そうだったの...。 

それで、愛美ちゃんだけはあなたが引き取って?」
「違うんです。最初は子どもらみんな、ぼくが引き取ったんです」
「みんな!?」


大木は歯を食いしばるような顔をした。


「子どもらに『どっちに』ついていきたい?

って聞いたら『お父さん』って言うんですよ」

「それで男の子二人と、お嬢ちゃんと、三人とも」
「はい。その時は、自分を選んでくれてものすごくうれしかったんです。

毎朝、ぼくがお弁当をつくって、早く帰ってきてご飯つくって。

必死でした。

でもある日、ぼくが会社に行ってる間に、

元嫁が上の子二人を連れてってしまったんです」


その時のことを思い出したように、大木はぐっと目を閉じた。


一番下の娘だけがぽつんと、部屋の片隅にいて、泣いていた夜のことを。


大木は言った。


「その時ぼくは、自分のことを冷たい人間なんやないかって思いましたよ。

寂しいのが半分。ほっとしたのが半分でしたから」


その言葉を、優子は心にしっかりと受け止めた。


「あなたって正直な方ね・・・。」


世の中、きれいごとだけではどうにもならないことがある。

身をもってそれを知り、

それでも正直に生きていこうとする大木という男に、

優子はどうしても幸せになってほしいと思った。



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