avengers in sci-fi「Before The Stardust Fades」 | A Flood of Music

avengers in sci-fi「Before The Stardust Fades」

 

乱数メーカーの結果:72

 

 字数制限で記事タイトルを簡略化しましたが上記に基づく「今日の一曲!」は、avengers in sci-fiのセクション(71~90)から「Before The Stardust Fades」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

収録先:『dynamo』(2010)

 

 

 本作に関しては既にリリース時の感想記事が存在します。当ブログ上でレビュー済の楽曲が対象になった場合は選曲をやり直すのが原則なれど、2016年以前の更新分は手も無く仕上げたものが殆どのため再レビューする次第です。

 

 当時「最高傑作」と評しただけはあって今でもお気に入りの一枚で、目下の感性が反映されている自作のプレイリストに照らしても、上位20曲までに「Before The Stardust Fades」「Intergalactic Love Song」「Space Station Styx」「There He Goes」が、上位40曲までに「Delight Slight Lightspeed (dynamo verison)」「Wonderpower」が、上位60曲までに「Caravan」「Cydonia Twin」「Future Never Knows」「Lovers On Mars」が入っています。残る3曲は何れもアルバムの世界観を彩る小品的なトラックなので、実質全曲が贔屓です。

 

 

歌詞(作詞:木幡太郎)

 

 "15で去ったネーヤに プレイバックする宵のファイア! VIVA!"と別離を回想する立ち上がりから、"ああ スターダスト消えぬまに/ネーヤは ネーヤは 去ってリグレット"と後悔の滲む結ばれ方をしている通り、中核に据えられているのは"ネーヤ"とのメモリーズで間違いないものの、その存在ないし正体は謎めいています。音の響きからどうしても「姉や」を連想してしまうのと"15"を年齢と捉えたこともあって、まず脳内に浮かんだのは女の子が先に大人になったがゆえにジュブナイルな関係が終わりを告げるビジョンです。

 

 しかしそも"ネーヤ"が女性の名前延いては人名なのかは微妙なところで、"宇宙語で書いた 砂にリフレインが叫んだメッセージ"と続くことから寧ろ異星人或いは人外であるほうがしっくりきます。もっと言えば意志あるものを指しているのかすら疑えて、惑星や宇宙船などの無機物だったりイマジナリーフレンドやタルパなど精神由来の創造物だったりに、語り手が人格を与えた結果の名称とも解釈可能です。また、アニヲタ的視点だとネーヤと言えば『無限のリヴァイアス』のキャラクターが有名で、正確には全く異なるものですがAIとか後発他作品の概念で言うところのメンタルモデル(ドルフロじゃなくてアルペジオのほうです)とかの、制御システム擬人化系もアリだなと傍流を提示してみます。

 

 とにかくそんな"ネーヤ"は思い出の存在で、"今あてなく浮かぶ 凪に/影無く 追う浜辺に"の文字通りの当て所なさには哀しくなり、花火に擬えて僅かな時間でだけ叶う再会の逢瀬の儚さ("プレイバック"の短さ)が、"ファイアーフラワー散ったら また離れ離れ"に表れているのも切ないです。敢えて意訳して「花火」を持ち出したのでこの比喩を引き継ぎますと、"ああ スターダスト消えぬまに"は消え口の描写ということになり、普通はパッと一斉に消えるのが良しとされるけれども、今回ばかりは不揃いで少しでも長く夜空に咲いていてくれと願ってしまいます。

 

 このように独り見上げた花火を通じて子供の時分に抱いていた淡い恋心に気付くといった地球人らしい目線での甘酸っぱい理解が出来る一方で、もっと壮大に宇宙規模での擦れ違いがあったと想像するのも一興です。とりわけ別れの場面が海だったと推察される点はSF映画のクライマックスっぽくて、残された側のその後は確かに気になります。先に諸々の"ネーヤ"候補を例示したのも多様な解釈の一助となれば幸いという理由でして、ひとつ補足をすれば精神由来系で読み解きたい方には内宇宙の概念がおすすめです。加えて、アヴェンズの他のナンバーでは「Sonic Fireworks」(2011)がまさしく「花火」を冠しており、本曲同様に様々な受け止め方を許してくれます。

 

 

メロディ(作曲:木幡太郎)

 

 後のアレンジの項でふれますが本曲の枢機は盆踊りの太鼓宛らのトライバルなドラムプレイにあるため、その間隙を縫うように配された主旋律から感じ取れるのも実に和な響きです。厳密には間隙を縫っているのはドラムのほうだと表現すべきと思うけれど、要するに聴かせ所であるドラムがきちんと目立てるように敢えて隙の多いメロディが宛がわれていると分析しています。

 

 横文字の多いAメロは元がシラブル言語なだけに緩急が激しく、旋律それ自体もリズムセクションの一部のように振る舞っているおかげで自然とドラムにも意識がいきますし、逆に日本語しか登場しないBメロはモーラ言語ならではの持続時間の長さによって前述した隙が顕です。サビメロはA/Bの折衷的な感じで、一音一音がしっかりと空間に広がっていく(歌詞的にも空を映しているので納得の)メロディアスな前半から、俄に終わりを迎えてスピーディーに展開する後半でオケに収束していくギャップがお囃子然とした減り張りを生んでいます。

 

 

アレンジ(編曲:avengers in sci-fi)

 

 先掲した『dynamo』の感想記事で初めて本曲に「スペース盆踊り」という形容を用いてからは、GO OUT! Vol.3のライブレポでも「Beats For Jealous Pluto」(2008)に続くセトリを「スペース盆踊り2連続」と、Delight Slight Flight Tourのライブレポでも同様に「BTSF → BFJP のスペース盆踊りの連続は良い」と書いておりやや濫用気味です。しかし本曲はまさにこのワードで端的に紹介するのがベストとしたいサウンドを有しており、電子音も駆使する邦楽バンドがテクノやエレクトロに寄らずに日本人らしいビート構築にこだわったからこそ、カルチャーの連続性に於いて正統派の和製ダンスロックチューンになっていると絶賛します。

 

 サイレンを思わせるけたたましい幕開けのイントロでは、ドラムスとパーカスが織り成す独特のグルーヴが心地好いです。ここまではトライバルと言ってもワールドミュージック的ですが、キュートなピコピコ音が鳴り出してからは和太鼓らしいパターンが印象的でお祭り心に火が付きます。歌詞に無い英語詞("I wanna looking for"?)がグリッターな処理で煌びやかに歌われると共に再び腹に響く轟音がカムバックしてきて、いよいよ時代も場所も明確でなくなり無国籍なまたは宇宙的な音景に統合されるところが蓋しアヴェンズらしさです。

 

 A/Bメロのドラムスはまさに祭囃子で、メロディの項に書いた緩急や隙と巧く折り合うことで総体的にリズムが強調されています。[1:13]~の間奏はサイレンとギターによる煽りが効果的で、派手な部分も聴いてくれなきゃフェス感が薄れるぜとでも言いたげで好みです。サビは上記した種々のファクターが総動員された賑やかさを誇り、日常を忘れて踊り明かすほかなくなります。2番後間奏のミュートを活かした言わばメンバー紹介的なパートも、祭りを支える裏方衆の見せ場を作ることで謝意を示しているかのようで清々しいです。それに続くラスサビ前の落ちAメロセクションは、最後の大花火を前に気合を入れる静の表現が上手く、ドラムスを円陣の掛け声の如くに発揚に使用していて滾ります。

 

 

 
 

備考:特になし

 

 今回は取り立てて補足したいことはありません。