今日の一曲!Orbital「The Girl with the Sun in Her Head」
今回の「今日の一曲!」は、Orbitalの「The Girl with the Sun in Her Head」(1996)です。4thアルバム『In Sides』収録曲。
前回の記事の特殊な内容に鑑み、太陽光発電を用いて制作された作品のひとつとして例示したところ、きちんと紹介したい欲が高まってしまったので、レビューをすることにしました。なお、以降では本曲のタイトルを「TGwtSiHH」と簡略表示します。
この制作秘話はソースを音楽誌『VOX』とする英語版のWikipediaで知り、曰く「グリーンピースのモバイル太陽光発電機・Cyrusで賄った電気でレコーディングされた」そうです。一次ソースにはあたっていない上に20年以上前の話であるため、あまり多くの情報が拾えなかったのですが、サイラスはどうやらトラック(車)のようなので、モバイルというよりモービルと訳すべき代物かもしれません。ともかく、曲名に相応しいエピソードを有したトラック(曲)であることは間違いないですね。
さて、同じく『In Sides』の収録曲では、今年の3月に「Out There Somewhere?」を取り立てた記事をアップしています。同曲は2パート合わせて24分超えの長旅の中で、セクション毎に彩を変えるサウンドで物語性が強く演出されたナンバーでした。「TGwtSiHH」も曲長は約10分半とそこそこの長尺ではあるものの、目まぐるしく展開していく楽想を持つわけではなく、音作りの方向性も終始一貫している印象であるため、細かく分解してニッチなツボを通時的に列挙していくスタイルよりは、全体評的な言及をしたほうがベターと判断し、以下書き進めていきます。
先に音作りの面から語りますと、全編に亘って「TGwtSiHH」の世界観;即ち「頭に太陽を戴く少女」のサウンドスケープが反映されたような、あたたかさと可愛らしさを内包するテンダーな質感が特徴です。攻撃的な音は一切登場せず、メインメロディを担い得るウワモノは、全てグリッターな趣を宿したものですし、リズム隊もベロシティが優しいと表現したいソフトなタッチで、とりわけキックは心臓の鼓動の如きナチュラルさを備えています。良い意味で音量・音圧が弱いという時代的なものも勿論あるのでしょうが、この手の包容力の高いトラックメイキングこそ、個人的にはオービタルの真骨頂であるとの認識です。まさに名帯コメントとして有名な「楽しいな。あったかいな。オービタルっていいな。」の心持ちになります。
続いて展開・楽想面を語りますと、本曲を便宜上前半と後半に二分して考えた場合に、後者のスタート位置にあたる6:09~が最大のお気に入りです。オルガンっぽい鍵盤がメインに躍り出るパートで、主旋律を担っていると捉えてもコードを鳴らしていると見做してもいい、ダンスミュージックらしい陶酔性のあるアプロ―チを絶賛します。これは音作りの面とも絡む感想ですが、オルガンに対して抱くようなややチープな音色(誉め言葉)に代表されるように、シャープなサウンドが出てこない点も本曲の魅力でしょう。延いてはこれが「太陽光発電による最低限の電力使用」に由来しているようにも解せるので、少ないリソースの中でやりくりしたハンドメイド感こそが、「TGwtSiHH」が放つ美点の正体ではと結びます。
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前回の記事の特殊な内容に鑑み、太陽光発電を用いて制作された作品のひとつとして例示したところ、きちんと紹介したい欲が高まってしまったので、レビューをすることにしました。なお、以降では本曲のタイトルを「TGwtSiHH」と簡略表示します。
この制作秘話はソースを音楽誌『VOX』とする英語版のWikipediaで知り、曰く「グリーンピースのモバイル太陽光発電機・Cyrusで賄った電気でレコーディングされた」そうです。一次ソースにはあたっていない上に20年以上前の話であるため、あまり多くの情報が拾えなかったのですが、サイラスはどうやらトラック(車)のようなので、モバイルというよりモービルと訳すべき代物かもしれません。ともかく、曲名に相応しいエピソードを有したトラック(曲)であることは間違いないですね。
さて、同じく『In Sides』の収録曲では、今年の3月に「Out There Somewhere?」を取り立てた記事をアップしています。同曲は2パート合わせて24分超えの長旅の中で、セクション毎に彩を変えるサウンドで物語性が強く演出されたナンバーでした。「TGwtSiHH」も曲長は約10分半とそこそこの長尺ではあるものの、目まぐるしく展開していく楽想を持つわけではなく、音作りの方向性も終始一貫している印象であるため、細かく分解してニッチなツボを通時的に列挙していくスタイルよりは、全体評的な言及をしたほうがベターと判断し、以下書き進めていきます。
先に音作りの面から語りますと、全編に亘って「TGwtSiHH」の世界観;即ち「頭に太陽を戴く少女」のサウンドスケープが反映されたような、あたたかさと可愛らしさを内包するテンダーな質感が特徴です。攻撃的な音は一切登場せず、メインメロディを担い得るウワモノは、全てグリッターな趣を宿したものですし、リズム隊もベロシティが優しいと表現したいソフトなタッチで、とりわけキックは心臓の鼓動の如きナチュラルさを備えています。良い意味で音量・音圧が弱いという時代的なものも勿論あるのでしょうが、この手の包容力の高いトラックメイキングこそ、個人的にはオービタルの真骨頂であるとの認識です。まさに名帯コメントとして有名な「楽しいな。あったかいな。オービタルっていいな。」の心持ちになります。
続いて展開・楽想面を語りますと、本曲を便宜上前半と後半に二分して考えた場合に、後者のスタート位置にあたる6:09~が最大のお気に入りです。オルガンっぽい鍵盤がメインに躍り出るパートで、主旋律を担っていると捉えてもコードを鳴らしていると見做してもいい、ダンスミュージックらしい陶酔性のあるアプロ―チを絶賛します。これは音作りの面とも絡む感想ですが、オルガンに対して抱くようなややチープな音色(誉め言葉)に代表されるように、シャープなサウンドが出てこない点も本曲の魅力でしょう。延いてはこれが「太陽光発電による最低限の電力使用」に由来しているようにも解せるので、少ないリソースの中でやりくりしたハンドメイド感こそが、「TGwtSiHH」が放つ美点の正体ではと結びます。
