今日の一曲!OGRE YOU ASSHOLE「素敵な予感」 | A Flood of Music

今日の一曲!OGRE YOU ASSHOLE「素敵な予感」

 「今日の一曲!」は、OGRE YOU ASSHOLEの「素敵な予感」(2012)です。5thアルバム『100年後』の収録曲。

100年後100年後
1,780円
Amazon


 当ブログに於ける直近のオウガの記事は、「今日の一曲!」が【テーマ:雨】だった時に「フラッグ」(2007)を取り上げたものがあり、それ以来約4ヶ月ぶりとなります。通常のディスクレビューとしては、7th『ハンドルを放す前に』(2016)の記事があり、その中で路線変更後のオウガサウンドについてはざっと語りましたが(当時の新鮮な感想は4thの感想記事を参照)、ブログの休止期間にあたる5thと6thにはまだフォーカスしていなかったので、ここらでふれておこうと思いました。

 7thの記事の中で『曲単位でみても「素敵な予感」や「ムダがないって素晴らしい」など、異様に中毒性があって繰り返し聴きたくなる曲というのは4thからのオウガのほうが巧いと感じる。』と書いているように、代表として紹介するナンバーはこの2曲で迷ったのですが、今回は「素敵な予感」にします。




 このMVに使われているのは「素敵な予感 different mix」で、原曲にはないノイジーなサウンドが目立っていますが、係る中毒性には変わりないので埋め込みました。しかし、以降の文章はあくまでも原曲に対するものであることに留意してください。


 本曲の魅力は何と言ってもミニマルな点でしょう。冒頭から続く唸り声のようなベースと妖しげなキーボードが奏でるシンプルなリピートだけでも個人的にはトリップ出来ます。これを軸として徐々に多様な音が積み重ねられていき、次第にトライバル或いはサイケデリックな趣が色濃くなるので、ミニマルとは言え決して単調ではありません。歌詞に"おどりだす まず忘れて"とあるように、オウガなりのダンスチューンだと思っているので、グラデュアルな変化は様式美と言えるでしょう。

 ボーカルトラックは除いて考えると【0:00~、1:34~、3:31~、4:18~、5:04~】に変化の節目が来ていると分析出来ますが、いずれのトランジションにもカタルシスに似た快感があってツボです。特に3分台と5分台に登場する主張の強い音が好み。


 歌詞も意味深で面白いです。「素敵な予感」というタイトル、そして"彼女が入り口に立つ/おどる前なんて言おうか?"とある一節だけを見れば、クラブやダンスホールで思わぬ出逢いを果たすような場面が想像出来ますが、表題の歌詞は"あの素敵な時間が/あっという間に床に落ちてる予感"と、何か不穏当なものを感じさせる内容になっています。ポジティブに解釈すれば「楽しい時間はあっという間」的なことを言わんとしている気もしますが、個人的には「予感だけで何も起こらないのでは」という遅疑逡巡を滲ませたものだと受け取りました。

 また、"バカみたいな人もなんだって/知っている"も好きなフレーズです。言葉の上では矛盾していますがわかるなぁと思うところがあって、常に他人が自分より馬鹿だと認識しているような人に限って、その馬鹿ですらわかっている簡単な道理を全く理解していないという笑い話は往々にしてあるので、この歌詞からはそういう状況に対する教訓めいたものを感じます。好例は色恋沙汰でしょうかね。これを思うと"バカみたいなウソをなんだって言っている"は、精一杯のアプローチのように見えてくるので可愛らしくもあります。


 ラストのレイジーな「パッパラッパーラ…パッパラッパーラ…」の連呼は初めて聴いた時には笑ってしまいましたが、「もうどうにでもな~れ☆」的なヤケクソ感があって好みです。「素敵な予感」のために"ぼく"は動いたのだろうと、前向きに解釈しています。