今日の一曲!モノブライト「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」
「今日の一曲!」は、モノブライトの「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」(2016)です。7thアルバム『Bright Ground Music』収録曲。
当ブログが第三期に入ってから、モノブライトの記事を立てるのは今回が初となります。過去記事一覧ではアーティスト名がMONOBRIGHTおよびmonobrightの表記になっていることからもわかると思いますが、バンドのキャリアを大きく分けた時に、その三番目にあたるのがカタカナ表記時代です。オリジナルメンバーであった瀧谷さんが脱退し、三人体制となったことを表しているわけですが、残念なことにこの体制を最後にバンドは活動休止となってしまいました。
昔の拙い文章ながら一応4thまではレビューしてあるので、ざっと7thまでのブランクを埋めますと、まず5th『新造ライヴレーションズ』(2012)は今でも愛聴盤です。ライブ録音によるオリジナルアルバムという珍しい試み(他の例としては、厳密にはシングル集である椎名林檎の「絶頂集」(2000)や、海外バンドですがLotusの作品等が挙げられます)が功を奏した一枚で、とりわけ「ウォークウォークウォーク」「感情GUN, 薄情DIE」「旅立ちと少年3」「ジャイアントステップ」がお気に入りとなっています。
ヒダカさんが抜け四人体制に戻ってからの6th『MONOBRIGHT three』(2013)は、他のアルバムと比べると正直あまり良さが伝わってこなかったのですが、初期のナンバーを思わせる「OYOVIDENAI」は大好きです。また、6thへの収録は見送られたシングル曲「ムーンウォーク」(2012)も良曲だと思います。そして時期としては7thよりも後になりますが、セルフカバーアルバムの『VerSus』(2016)も素晴らしく、特に「未完成ライオット (VerSus Ver.)」は一段と格好良く生まれ変わっていて痺れました。
そして今回紹介する楽曲が収録されている7thは、純粋な新曲が収録されているディスク(=オリジナルアルバム)としては現状で最新のものです。このリリースから活動休止に入るまでは1年以上の期間があり、どのタイミングで具体的に休止へと考えがシフトしていったのかはわかりませんが、バンドに対する諸々の感情が反映された一枚であることに疑いはないと理解しています。
休止発表時の桃野さんのコメントが甚く印象に残っているので引用しますと、「結局のところ3人とも限界でした。この先、モノブライトで何かやろうというアイデアやユーモアが全く浮かばなくなりました。」と絶望感に満ちた表現がなされていて、これを見て僕は当時不思議と納得してしまいました。なぜなら、7thを聴いて抱いた感想は「なんだかつらそうだな…」というものだったからです。結論から言って7thは良盤だと評していますが、全体を通して焦燥や不安が燻っているのは否めないなと。その後の『VerSus』で少しは安心したのですが、休止発表を聞いて「ああ、やっぱり」と思ってしまったのも事実です。
そんな中でも殊更に絶望が色濃いと感じたのが、本記事で選曲対象とした「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」になります。曲名だけを見ると希望に満ちた曲であるかのように錯覚しますが、歌詞内容は全くの逆なので、これは皮肉めいたネーミングだと捉えました。「自分がどうであろうと、変わらずに朝はやって来るんだ」的な受け止め方です。MVの内容も、ただ明るいだけの解釈を拒む後押しとなりました。
冒頭のというか表題を含む歌詞からして、"Wake up is beautiful morningなど無くなって/Wake up is beautiful morningを探している"ですからね。現実はそうじゃないということを理解させるには、ストレートでわかりやすいほどです。その他のフレーズもヒリヒリしたものばかりで、"僕は今日も太陽を抱いて眠る、寝る"や、"Hurry up 偉大なる命を焦らせていく"などは、まともなルートから外れてしまっていることを、自然や生命との乖離で表現しているところが上手いと思います。
サビの歌詞もシンプルながら厳しくて、"誰も知らない明日が 誰もが知る今日になって/僕はいつも遅いから 君は朝日と消えていく"から滲む無力感には、本曲の主人公のその後を心配してしまうくらいの説得力があると言えるでしょう。特に"僕はいつも遅いから"という容赦の無い一節が残酷ながら好きで、全く別のジャンルから例示しますが、Underworld「Between Stars」(2010)のラストの切なさが一層加速する部分に、"Don't wait for me, I'm always late (Step back, step back)"と同様の歌詞が来ることを思い出し、自身の無能さから来る非情な現実に打ち拉がれる様が、表現として鮮やかで気に入っているのだと分析します。
メロディラインと歌い方も遣る瀬無さに拍車を掛けていて、A/Bメロの何とか平静を装おうとしている感じが、サビで堰を切ったように爆発し、俄かに迫真さを得る点が技巧的です。1番サビ裏から挿入されるシンセも、そのややチープなサウンドがとてもセンチメンタルで素敵だと評せます。
モノブライトはシンセや打ち込みの使いどころが上手だと常々思っていて、それは僕がこのバンドを好む理由のひとつでもありますが、本曲も1番後の間奏からはシンセが軸となって展開していくアレンジなのが良いですよね。ここまで散々暗い感想を書いてしまいましたが、このシンセがあることでダンサブルな質感が付与され、このどうしようもない現実を踊り明かすことで打破していこうという気概が感じられるので、絶望し通しの歌ではないと解釈しています。クロージングの「ジャーン」も明るいコード感ですしね(この手の「最後の音で印象を変えるテクニック」には、過去にこの記事でも言及を行いました)。
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当ブログが第三期に入ってから、モノブライトの記事を立てるのは今回が初となります。過去記事一覧ではアーティスト名がMONOBRIGHTおよびmonobrightの表記になっていることからもわかると思いますが、バンドのキャリアを大きく分けた時に、その三番目にあたるのがカタカナ表記時代です。オリジナルメンバーであった瀧谷さんが脱退し、三人体制となったことを表しているわけですが、残念なことにこの体制を最後にバンドは活動休止となってしまいました。
昔の拙い文章ながら一応4thまではレビューしてあるので、ざっと7thまでのブランクを埋めますと、まず5th『新造ライヴレーションズ』(2012)は今でも愛聴盤です。ライブ録音によるオリジナルアルバムという珍しい試み(他の例としては、厳密にはシングル集である椎名林檎の「絶頂集」(2000)や、海外バンドですがLotusの作品等が挙げられます)が功を奏した一枚で、とりわけ「ウォークウォークウォーク」「感情GUN, 薄情DIE」「旅立ちと少年3」「ジャイアントステップ」がお気に入りとなっています。
ヒダカさんが抜け四人体制に戻ってからの6th『MONOBRIGHT three』(2013)は、他のアルバムと比べると正直あまり良さが伝わってこなかったのですが、初期のナンバーを思わせる「OYOVIDENAI」は大好きです。また、6thへの収録は見送られたシングル曲「ムーンウォーク」(2012)も良曲だと思います。そして時期としては7thよりも後になりますが、セルフカバーアルバムの『VerSus』(2016)も素晴らしく、特に「未完成ライオット (VerSus Ver.)」は一段と格好良く生まれ変わっていて痺れました。
そして今回紹介する楽曲が収録されている7thは、純粋な新曲が収録されているディスク(=オリジナルアルバム)としては現状で最新のものです。このリリースから活動休止に入るまでは1年以上の期間があり、どのタイミングで具体的に休止へと考えがシフトしていったのかはわかりませんが、バンドに対する諸々の感情が反映された一枚であることに疑いはないと理解しています。
休止発表時の桃野さんのコメントが甚く印象に残っているので引用しますと、「結局のところ3人とも限界でした。この先、モノブライトで何かやろうというアイデアやユーモアが全く浮かばなくなりました。」と絶望感に満ちた表現がなされていて、これを見て僕は当時不思議と納得してしまいました。なぜなら、7thを聴いて抱いた感想は「なんだかつらそうだな…」というものだったからです。結論から言って7thは良盤だと評していますが、全体を通して焦燥や不安が燻っているのは否めないなと。その後の『VerSus』で少しは安心したのですが、休止発表を聞いて「ああ、やっぱり」と思ってしまったのも事実です。
そんな中でも殊更に絶望が色濃いと感じたのが、本記事で選曲対象とした「ビューティフルモーニング (Wake Up!)」になります。曲名だけを見ると希望に満ちた曲であるかのように錯覚しますが、歌詞内容は全くの逆なので、これは皮肉めいたネーミングだと捉えました。「自分がどうであろうと、変わらずに朝はやって来るんだ」的な受け止め方です。MVの内容も、ただ明るいだけの解釈を拒む後押しとなりました。
冒頭のというか表題を含む歌詞からして、"Wake up is beautiful morningなど無くなって/Wake up is beautiful morningを探している"ですからね。現実はそうじゃないということを理解させるには、ストレートでわかりやすいほどです。その他のフレーズもヒリヒリしたものばかりで、"僕は今日も太陽を抱いて眠る、寝る"や、"Hurry up 偉大なる命を焦らせていく"などは、まともなルートから外れてしまっていることを、自然や生命との乖離で表現しているところが上手いと思います。
サビの歌詞もシンプルながら厳しくて、"誰も知らない明日が 誰もが知る今日になって/僕はいつも遅いから 君は朝日と消えていく"から滲む無力感には、本曲の主人公のその後を心配してしまうくらいの説得力があると言えるでしょう。特に"僕はいつも遅いから"という容赦の無い一節が残酷ながら好きで、全く別のジャンルから例示しますが、Underworld「Between Stars」(2010)のラストの切なさが一層加速する部分に、"Don't wait for me, I'm always late (Step back, step back)"と同様の歌詞が来ることを思い出し、自身の無能さから来る非情な現実に打ち拉がれる様が、表現として鮮やかで気に入っているのだと分析します。
メロディラインと歌い方も遣る瀬無さに拍車を掛けていて、A/Bメロの何とか平静を装おうとしている感じが、サビで堰を切ったように爆発し、俄かに迫真さを得る点が技巧的です。1番サビ裏から挿入されるシンセも、そのややチープなサウンドがとてもセンチメンタルで素敵だと評せます。
モノブライトはシンセや打ち込みの使いどころが上手だと常々思っていて、それは僕がこのバンドを好む理由のひとつでもありますが、本曲も1番後の間奏からはシンセが軸となって展開していくアレンジなのが良いですよね。ここまで散々暗い感想を書いてしまいましたが、このシンセがあることでダンサブルな質感が付与され、このどうしようもない現実を踊り明かすことで打破していこうという気概が感じられるので、絶望し通しの歌ではないと解釈しています。クロージングの「ジャーン」も明るいコード感ですしね(この手の「最後の音で印象を変えるテクニック」には、過去にこの記事でも言及を行いました)。
