毎年夏頃にアクセス増のMr.Children「こんな風にひどく蒸し暑い日」感想 ミスチル 歌詞 | A Flood of Music

今日の一曲!Mr.Children「こんな風にひどく蒸し暑い日」

 今回の更新分から「今日の一曲!」のテーマを変更します。【春】【雨】と時節柄のものをチョイスしてきたことから察せると思いますが、次のテーマは【夏】です。「夏らしいものなら何でもOK」の高い自由度でいきます。

 そんな【テーマ:夏】の「今日の一曲!」第一弾は、Mr.Childrenの「こんな風にひどく蒸し熱い日」(2004)です。26thシングル『Sign』のc/w曲で、アルバムとしては『B-SIDE』(2007)に収録されています。

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 曲名がまさにタイムリーですが、現時点で既に今年の夏のハイライトたり得るナンバーだと言ってもいいでしょう。連日の猛暑日に喘いだ日本列島、去る7月23日には熊谷で41.1℃の観測史上最高気温がマークされ、極値を0.1℃更新する異常高温。本曲の"その日 記録的猛暑が僕らを襲ってきて"という歌詞は、「平成最後の夏」としてある意味メモリアルな2018年を象徴するような一節へと化けましたね。

 "キャスターは温暖化の深刻さ訴える/「異常ですね」っておばちゃんも広場で話してる/人類の行く末 考えると不安で/水浸しの地球儀が夢の中でプカプカ浮いていた"も予言めいていると言え、これは直接的には温暖化の果ての海面上昇を歌ったものでしょうが、200名以上の死者を出した平成30年7月豪雨(西日本豪雨)や、東から西へ逆走した挙句奄美付近で一回転する異例の進路を取った平成30年台風第12号(ジョンダリ)なども含めると、気象極端化を痛切に意識させられるフレーズとして警鐘の向きを感じさせます。


 本曲のことを知らない人からしたら、この書き出しだと「地球環境を憂う真面目な歌かな?」と思うかもしれませんが、ところがどっこい本曲の魅力はそのような意識の高さとは全く異なるベクトルにあると僕は主張したいです。なぜならその魅力とはずばり「エロさ」だからで、それは歌詞の内容に拠るところが大きいとは言え、ファンキー或いはジャジーと形容出来るサウンドも、そっち方面の趣を色濃くしているファクターだと思います。管楽器が奏でる艶っぽさやエレピ?が醸すチル感にアダルトな雰囲気を感じ取ったならば、それは普遍的な理解ではないでしょうか。

 多少内容が下品になりますが歌詞を掘り下げますと、エロはエロでも本曲で扱われているのは「おっさんが抱えていたエロさ」である点をとても気に入っています。同じくエロティックな楽曲として有名であろう「ファスナー」(2002)をレビューした際にも似たようなことを書きましたが、桜井さんの書く歌詞には以下に示すような男性目線や男性本位を露骨にさせたパターンも存在するため、男としてはやはり共感を覚えられるのと同時に、有名でありながらこういう歌詞も披露してくれる攻めの姿勢を支持したい心持ちです。


 "今じゃ女房も子もある"という歌詞と、「Everybody」でも「エヴリバディ」でもなく"エビバデ"という表記の使用から、本曲の主人公を中年の男性とすることに異論は少ないかと思います。そんなおっさんが"忘れて過ごしてんだ そんな光景は"と過去を振り返って歌う、その内容こそがエロの極みです。

 先の"記録的猛暑"のくだりから続く形で、"映画館に逃げ込んで卑猥な映画見た/部屋に着くともう僕らはガラス窓閉め切って/エアコンのない君の部屋で ただ夢中になってた/流れ出したモノでシーツが濡れてしまって/君はゴミでも捨てるように洗濯機に入れた"と継がれ、"忘れて"~に掛かるこのシークエンス。起承転結が鮮やかと言いましょうか、行為に至るまでの伏線の張り方(「口実」と換言しても可)が端的で、行為中の描写は「密閉と熱」でより煽情的に、それなのに結末は「暴力的且つ淡白な事務的行動」が担うという呆気なさで、トラウマティックな情景を思わせているあたりが実に巧みだと高く評価しています。このオチまで含めてそそるのですが、それは僕がM気質なせいですかね…?


 このシーツのくだりは『B-SIDE』のセルフライナーノーツ(歌詞カード右ページ)の中で、桜井さん自身がエロに絡めて自画自賛しているので、僕はその感性に近かったのだろうと勝手に親近感を覚えたのですが、田原さんにとっては趣味じゃなかったそうで、「変態じゃん?」とバッサリいっているのが面白いです。笑

 趣味じゃないと言えば、ラスサビで投げ遣り気味に登場する"有楽町で今夜ホステスさんと遊ぶよ"という一節は、程度にもよりますが妻子持ちとしてはあまり褒められた行動ではないと思うので、共感出来るとまでは言わないでおきますが、二重の意味で熱に浮かされている感じはよく出ているため、好きな表現ではあります。




 今日ミスチルの楽曲を紹介したのはたまたまというか、先月の酷暑の段階から【テーマ:夏】のトップバッターは「こんな風に~」に任せようと決めていただけなのですが、タイミングのいいことにニューアルバムリリースのアナウンス日と重なったので、俄然楽しみになりました。

 ちなみにミスチルのナンバーには他にも夏を扱ったものが多くあるため、今夏が常識的な暑さであったならば他の楽曲を紹介していたと思います。『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の公開に託けて、「HANABI」(2008)をレビューするのも良かったかもしれませんね。もう少し秋に近付く頃であれば、「少年」(2008)も候補にあがってきていたことでしょう。


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